スライムスレイヤー ~イシノチカラ~

亜形

文字の大きさ
115 / 147
第六章 ダンジョン編

第109話 分断

しおりを挟む
”ガコン”

「「うわぁ~! ああああ・・・」」

”ボフッ! ドカッ、ドカッ・・・”

 何人かが床の罠にかかり下の層に落ちた。周りは真っ暗。持っていた魔石ランタンの灯が落ちた拍子で消えてしまい何も見えない状況だ。

「痛てて、皆さん大丈夫ですか?」

「僕は何とか」
「オレも平気だ」
「ちょ、ちょっと!」

"バシッ!”

「あたっ!」

「トウマ。どこ触ってんのよ! まったく」

「ゴメン。何も見えなくて」

 なんか柔らかいものを触った気が。ロッカだったのか。

「私が最後だったからよかったけど、先だったら皆に潰されてたところよ」

「上から落ちたのは僕たち4人だけのようだな」

 セキトモは手探りで一緒に落ちた魔石ランタンを探した。

「まだ歩き回らないでくれよ。ランタン踏み潰さないようにな。
 ・・・あった。壊れてなければいいけど」

 セキトモが手にした魔石ランタンのスイッチを入れると、周りが明るく照らし出された。

 どうやらどこかの部屋にいるようだが閉ざされている場所ではなさそうだ。
 皆が滑り台のような急こう配から滑り落ちて当たった壁には分厚いクッションが設置してあった。坂を登って元の場所に戻るのは無理そうだ。例え登れたとしても閉ざされた床を押し開ける事は出来ないだろう。

「このクッションのお陰で大した怪我もせずに済んだようですね」
「この罠は運営が管理してるっぽいわね」

「トウマ、レオ、悪いけど少しこのクッションを動かしてくれないか?
 このクッションの裏側を見てみたい。
 落ちたとき何かに当たった感じがしたんだ」

 トウマとレオの二人はクッションを少し動かした。皆で裏側を覗くと円錐の先が折られている形状の石が多数並んでいた。床には折られている尖った石が落ちて散らばっている。

「こ、これって・・・」
「当たったときの違和感はこれだったのか。クッションもなく先が折ってなかったら僕たち串刺しになっていたかもしれないぞ」
「危なかったな」
「これって命に関わる罠よね?」
「元ね。運営が処置していなかったらと思うとゾッとするよ」

 レオはもう一つの魔石ランタンを拾い、スイッチを入れてみた。ランタンは明るく光り出した。

「こっちも大丈夫みたいだ。
 お前ら荷物は無事か?」

「どうだろ? 俺の携行食は潰れたかも」
「まずいな。皆、一、二食分の携行食と水があるかどうかだよね?」
「・・・まずいわね。残りはバンのリュックに入れて貰ってるんだったわ」
「早めに合流するか、ダンジョンを出ないとですね」

「動くぞ。ここで待っていても上に残ったやつらの助けはないだろ」

『了解!』

◇◆

 数分前。

”コン、コン”

「この床開いたよな?
 俺の目の錯覚じゃなければあいつら下に落ちてったよな?」

 イズハとチナはオロオロしている。

「あっという間で助けるすべがなかったっす。
 じ、自分どうしたらいいっすか?」
「ボクたち置いて行かれたのかにゃ?」

「イヤ、イヤ。あいつらが罠にかかっただけだろ」

「心配ですが一旦落ち着きましょう。
 まだ5層の序盤の罠ですから無事だと思います。
 下に閉じ込められている可能性も低いでしょう。
 この罠があった床は一定以上の重さで開く仕組みなのかもしれませんね」

「レオとセキトモの重量コンビにトウマ、おまけでロッカか。十分にありえるね。
 残った俺たち4人の重さと荷物合わせても足りないだろうな。
 今のとこ俺たちが床に乗ってもまったく開く気配がないし」

「あの奥の宝箱を持って来てみるっすか?」
「罠があると思うにゃ」

「いや、もう罠は引っかかったろ? あいつらが。
 そもそもあの宝箱を開けようとこの部屋に入って来たんだ」

 クルーロは宝箱の元に足を運び無造作に宝箱を開けた。中には金の延べ棒が山のように入っていた。クルーロは金の延べ棒のひとつを取り出し確認した。

「これは・・・偽物だな」
「でしょうね。重りを持たせて帰りに罠に落とす仕掛けだったのでしょう」
「なるほどな。あいつらが想定以上に重かったから宝箱から重りを持ち帰る前に落ちたって訳だ。わはは」

「クルーロ、それ笑えないにゃ」

「私たちも重りを加えて下に降りてみますか?」
「バン、冗談だろ? そんなん嫌に決まってるじゃん」
「それはボクもやだ」

「あっちにはセキトモがいるし、危険な探索をしようとしたら止めてくれるだろう。
 無事なら6層のセーフティゾーンを目指すんじゃないかな?
 俺たちは5層のセーフティゾーンからマッピングして来てるから戻りで迷う事はないし、このまま探索を続けて下に降りれそうな所があったら降りてあいつらを探す感じでいいんじゃないか?」

「マッピングした地図をバンが持ってたから助かったにゃ~」
「そっか。あいつらが持ってたら俺たちも迷ってたかもしれないな」
「自分は何となく頭に入ってるっすよ」
「そうなの? イズハやるじゃん。ま、俺も入ってるけど」

「クルーロ。ウソはよくない」
「う、何となくなら俺も覚えてるって」
「ボクはクルーロを半分しか信じてないにゃ」
「ワーオ、おい聞いたか? 俺、チナから半分も信じて貰えてるぞ。
 半分あれば十分だよな!
 それじゃ、話を戻すぞ。俺たちはこのまま進む。バンもそれでいいか?」

「はい。私たちがダンジョンを出て待つより6層に降りて早めに合流できたほうがよいですからね」

「よし! 迷子探索に出発だ!」

◆◇

 トウマ、ロッカ、セキトモ、レオの4人は罠で落ちた部屋から出て方位磁針を頼りに通路を西に向かったが行き止まりだった。一旦、罠で落ちた場所に戻り、今度は真っすぐに長い東の通路を進むと左右の別れ道に出た。

「どっち行きます?」
「トウマ、その前にあそこにもランタンがあるみたいだ。あれも点けよう」
「手持ちの魔石足りますかね?」

 通路の100~200m間隔に一つといった感じで魔石ランタンが設置してある。燃料である魔石が切れて消灯しているもののランタンが設置してあることから運営が管理しているエリアであることが分かる。
 明かりがあるとないでは視界の広がりがまったく違うのでランタンを見つける度に魔石を補充して点けながら進むことにしたのだ。手持ちのランタンでもある程度明かりは確保できるが後方に明かりがあれば後方からのモンスターの襲撃に対応しやすいということもある。明かりがある所まで退避して戦闘することも可能だ。何より暗がりの中、手元以外の明かりがあるだけで安心感が増す。

 トウマはセキトモに肩車をしてもらい設置型の魔石ランタンに魔石をセットした。

「お、点きましたよ!」

 設置型の魔石ランタンの輝度は低く、眩しくは感じない。要は光が弱いのだ。明るさを抑えてあるので魔石1個で1週間程度は点いているだろう。

「少し、ここで休憩にするか?」
「右へ行くか左へ行くか迷うわね」

「ロッカ、お前が決めろ。危険な匂いのしないほうを選べばいい」
「私の勘頼り?」
「この中ではお前の勘が一番鋭いだろ」
「おだてても何も出ないわよ。ハズレても文句言わないでよね」

 ロッカはしばらく考え、右の通路を選択した。

 小休憩後に右の通路を進んで行くと、迷宮と洞窟が入り混じった広い場所に出た。下り坂の半層くらい下に見える遠い場所には設置されたランタンが点いている通路が見える。

「もしかして当たり?」

「いや、待ってくれ。その手前、大きな何かが動いてる。
 あれモンスターじゃないか?」

「巨大に該当しそうだな。クエスト対象かもしれん」

「久しぶりに大物との戦闘ね。やっぱり当たりだわ!」

「全然、当たりじゃないですよ!
 あれ倒さないと先に進めないじゃないですかー」

 ロッカは口にしなかったが左右の通路選択で敢えて危険な匂いのするほうの通路を選択していた。少し退屈していたのだ。逆の左の通路を選択していれば遠回りだが安全に第6層のセーフティゾーンに着いていただろう。

「レオ、セキトモ、ランタンの明かり弱めて。
 あのモンスターまだこっちに気づいてないと思うわ。
 近くの岩陰まで行ってどんなやつか確認するわよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ

一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。 百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。 平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。 そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。 『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...