おやすみなさい、勇者

江多之折(エタノール)

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本編【全部背後注意】

8.ただ生かされる

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活気のある街、四季を彩る木々に季節毎に植え替えられる花。十年以上見続けた、変わらない景色。

それを美しいと思った事はない。ただ、眺めているだけで目眩しにはなる。自分の影を一切気にしていないという、目眩しに。

一歩ずつ、ゆっくりと、宛もなく。
ただの暇つぶし以上の意味をなさないその行為には随分前から飽きていたが、どうでもいい。
一人を感じる時間があれば、それで良かった。心を守るのは孤独の方が楽だから。


───ぼんやりしていると、ふと頭の上から影が落ちて、影が覆われてしまったと目線を景色に向けたままほんの少しだけがっかりした自分に嫌気がさす。



「エリオ、どこに行こうとしている。」
「…どこにも」

竜はずるい。地上も空中も自由自在に移動できるから。
ようやく顔を上へと向ける。
大きな翼を羽ばたかせながらこちらを見ている真っ黒な髪に褐色の肌の男は、空とは馴染まず常に逆光を浴びているようだ。

「俺から逃げようとしていないだろうな」
「逃げてもすぐ捕まえるくせに」

大きな身体がゆっくりと降下する。近付けば近付くほどに威圧感を増していく。
地上に降りても目線は上のままだ。身体が大きくて羨ましいことで。

「何もすることがないから、歩いてただけ」
「ならば俺が街にでも連れて行こう」
「…魔王は、目立つから嫌だ。」

普通に会話をしているが、これで勇者と魔王という、本来ならば敵対関係であるはずの間柄だ。
どういうわけか、勇者の最終目標であり、俺が勇者として輪廻転生し続けている要因の魔王と同居しているというか…俺が居候している所に魔王も日々押し掛けて十年以上こうして顔を合わせている。

何度人生を繰り返しても届かなかった魔王の手が俺の顎に添えられ、顔を寄せてきたと思えば人間よりも長い舌でザラリと唇を舐められた。

「俺との同伴を嫌がるのはお前くらいだぞ、エリオ」
「やめて…涎でべちゃべちゃになるの、嫌だ」
「お前が一向に身体を許さないせいだ」
「んんッ」

舌だけを伸ばして口の中に差し込まれた。上顎を内側から撫でられ、全身がゾクゾクと鳥肌を立てる。魔王は外だろうとお構いなしだ。

「そ、れは…俺、男だから」
「男だからなんだ。俺の番になるのを拒む理由にはならんと言っているだろう」
「ふ、ぅ…」

竜の舌は少しザラザラとして、どこを舐められても身体が敏感に反応してしまう。
離して欲しくて身体を押したら今度は手を絡め取られてしまった。

「なぁ、もう成熟してるだろ。喰わせろ」
「……いやだ」

俺は、勇者として生まれ魔王を倒す為だけに存在している。死ねばまた次の勇者となって生まれ変わり、輪廻転生を繰り返して魔物をひたすら殺し回る役割を世界に押し付けられている。

…今世で殺した魔物は一体だけだし、現状は魔王の統治する魔族の国で生活しているよく分からない状況ではあるが。

逆に言えば、勇者の俺が何もしなければ魔王の統治するノクシス魔族領域魔族の国は安全を約束されたようなものだから、ずっと捕らえられている…が正しい。
俺を捕らえたのは魔王ではないが。


「──デュミナス、私のエリオに抜け駆けしないで下さい。」


噂をすれば影とは言うが、本当に影から出てくる銀色の髪が俺の顔にさらりとかかる。銀色の中に少しだけ紺色が混ざる独特な髪色は、まるで夜空を逆転させたような印象を与える。

背後から白い腕が絡み付き、俺を束縛しようと包み込む。どいつもこいつも身長が高い。

「選ばれてもいないくせに自分のモノと主張するか。愚かだなアリオル親友
「…エリオ、そろそろ夕飯の買い物に行きましょうね」
「僧侶、俺は──」
「上書きです。ね?浄化もしますから」

振り向きざまに唇を奪われた。器用にも舌に魔法を乗せて、問答無用でぬるりと侵入する舌が俺の口内を浄化をしようとパチパチと魔力が弾ける。その刺激が痛いわけではなく、むしろ口内を敏感にさせて快楽を呼び起こす気がして俺はどうにも苦手だ。

──遥か昔、何度目かの勇者の旅路で共に魔王討伐の旅をした事があったエルフは当時は僧侶として回復魔法だけを扱っていた。

それが今世で再会した時には回復魔法以外に様々な魔法を使いこなすようになっていて、エルフの寿命の長さを活かせばここまで魔法を極められるのかと関心したものだ。

「ッ…や、」
「デュミナス」
「俺を無視するからだろ。エリオ、もういいだろ。俺の番になれ」
「やだ、僧侶も、離して」

ズボンの上から柔らかさを確かめるように股を撫でられる。二人に散々快楽を教え込まれたそこはゆるゆると芯を持ち始めてしまい、身をよじるも僧侶に拘束されては身動きが取れない。
外でこんな辱めを…と思ったら魔王の大きな翼で俺の姿は隠された。

「まだ、口の中の浄化が終わっていません」
「んんッ!やら、怖くなるの、やだ」
「怖いじゃないと言っているだろ。番わないならせめてエリオの種を飲ませろ」
「ふ、ぅ…僧侶」
「大丈夫です。怖くないようにしてあげましょうね」
「あ…」

口を開けて舌を出すと、僧侶の口に吸い込まれた。一気に魔力を注ぎ込まれて俺はあっという間に酩酊状態になる。

「おい。なんで俺の魔力は嫌がるくせにアリオルのは簡単に受け入れるんだよ」
「貴方は加減をしないからでしょう。…エリオ、もう怖くないですか?」
「あぁっ、あっ、僧侶、ふわふわする」
「上手に受け入れましたね…大丈夫ですよ、私がずっと支えていますから」

影が周囲を覆い尽くした。真っ暗な空間で僧侶の白い光が三人を照らしている。
でも誰にも見られない事への安堵とか、快楽への恐れとか、既にどうでもよくなっていた。

ひとりで、立たなくていい。
それは甘い甘い毒のように、俺に染み込む。俺が俺でなくていいと肯定される。
ずっと力を入れていた口元が弛む。自由を与えられた手を魔王の頬に添えた。

「へ、へへ…きもち…魔王、ちゅ、して」
「……いつまで、俺達からそうして逃げているのか」
「急がせない約束でしょう。」
「…チッ」

魔王の舌が荒々しく俺の口の中を嬲る。
いつの間にか露出していた俺の熱を握り込み、種を絞り出そうと大きな手に扱かれた。
あー、とか、うー、という声しか出ない俺のシャツもいつの間にか捲し上げられ、小さな突起を摘まれて捏ねられる。

「ほら、エリオ。ちゃんと立たないと危ないですよ」
「あぅ、おしり、かたいの、当たってぅ」

背中に密着した僧侶の身体の一部がやけに熱い。グリグリと尻に当てられて、腹の奥がキュンと疼いた。

「モジモジして…可愛いですねエリオ」
「おい、コッチに集中しろ」
「ひゃぅっ!まお、すぐ、出ちゃ」
「飲ませろって、言ってるだろ」
「あぁっ!ッ…ふ、」

魔王の長くてザラザラした舌が芯を持った熱に絡み付いて、俺はあっという間に達してしまった。
少しも残すまいと根元から搾られ、魔王の喉を鳴らして俺の種は飲み込まれる。
俺が立てるようにずっと抱き締めている僧侶が褒めるように俺のつむじにキスを落とした。

「よく頑張りましたね、エリオ。───おやすみなさい」
「あ…」

おやすみなさいって言葉が、まるで詠唱のように俺の意識を急速に奪う。
ただ生かされるだけでなく、身体を、欲を、求められる日々はとても不純ではあるけれど、俺を勇者じゃない一人の生き物として受け入れられているような気がして拒めない。


「───」


魔法に眠らされる俺は、今日も一人で出かけるの失敗したと強制的に閉じられる意識の狭間で正気に戻り、そして意識は途切れた。
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