おやすみなさい、勇者

江多之折(エタノール)

文字の大きさ
2 / 16
本編【全部背後注意】

9.幻想に溺れるくらい

しおりを挟む


「エリオ、愛しています。私の愛しい人」
「…」

僧侶はいつから俺にこんな事を言うようになったかと記憶を辿りながら足を進めた。
僧侶も魔王も邪魔ばかりするから無視をして身支度して勝手に出掛けるのが一番効率がいい。

「散歩ですか?私も…」
「一人がいい」

魔王と違って僧侶はまだ聞き分けがいい。すぐに引いたので俺はさっさと家を出た。


「──おや。エリオちゃん一人でお出掛けかい?」


近所に住む魔精族の男が話しかけてしたのでコクリと頷くと「相変わらず無口だねぇ」と慣れた男は皮袋の中身を確認していた。飄々としているが、これで魔族の中でも最も戦闘力が高いとされる魔精族だ。

「今日は騒がしいからあまり中心部には行かない方がいいと思うなぁ」
「?」
「オークが買い付けに来てるんだよ。彼等は集団で動くし、荒々しいからうるさくてね。僕は商人だから行かないといけないけど…おや、エリオちゃんはオークに興味があるのかい?」

もう一度コクリと頷いた。
俺の珍しい反応に驚いた男が「なら一緒に行こうか」と誘うも、俺は今度は首を横に振った。

「僧侶、来るから」
「…あー、そっか。またなエリオちゃん」

俺の足下の影が動く。聞き分けはいいが常に傍に居て監視を怠らない僧侶が影からゆっくりと出てきていつも通り俺を抱き締めた。

「エリオが興味を示すのは珍しいですね。流石に同伴は許しますね?」

拒否をしても、どうせ聞き入れやしない。
俺は頷いて、また歩き出した。







薄い緑、濃い緑、くすんだ緑…同じ緑色の肌でも多種多様のオーク達を俺は遠くからじっと見ていた。

「話しかけないんですか?」
「…いい」

見てるだけでいい。オークは決して人間を受け入れる事はしないから。
オーク達は自分達の集落付近で採れた果物や素材を持ち込んで金にして、酒などを買いに来たようだ。飽きずに眺めている俺に付き合う僧侶は静かに隣に立っている。
一人のオークが葡萄を手に商人に交渉しているようで、それを見ていると心が少しざわめいた。

「……果物」
「欲しいのですか?…買ってきますから、良い子に待っていて下さいね」

俺の小さな呟きに一々反応しては全てに応えようとする僧侶によく飽きないなと他人事のように考えていると、
チュ、と俺の額にキスをしてから僧侶はオークの群れへと向かって行った。


(似てる色……いない)


勇者の人生でオークを殺す事もあった。
オークに限らず、どんな魔族も大抵一回は殺している。
それでも、郷愁の感情はいつまでも心の奥でくすぶって、消えなかった。

「お待たせしました。葡萄、食べますか?」
「たべる」

素直に頷く事すら珍しいという顔をされる俺は、本当に扱いにくい人間なのだろう。
でも、感情が沸いてこないんだ。この生が終わればまた地獄の日々に戻る。喜びも、楽しみも、覚えれば覚えるほど地獄は深く、煮え滾る。
だから早々に感情は殺し、俺は無を選んだ。

「はい、口を開けて」

僧侶の白くて長い指が皮を剥いた葡萄を一粒摘んでいる。僧侶は本当に面倒見がいい。
俺は口を開けて、果汁一滴も逃すまいと僧侶の指ごと口に招き入れた。

(…あまい)

転生を繰り返す俺を何度も失望させた果物の味は、相変わらず甘かった。









「…僧侶、もう出ない」
「まだ、渇いているので」

帰ってからずっとこれだ。
僧侶は俺をベッドに運び、全身を舐め回した挙句に出すものを出し尽くして芯を持たなくなった俺の逸物イチモツを口に含んで味わい続けた。

丁寧に、丁寧に。舌をゆっくりと這わせては口に含み、吸い上げる。
僧侶も魔王も、俺の体液に何か含まれているのだろうかってくらい執着している。…いや、含まれてはいるのだが。

「あっ!それやだ、おわる」
「嫌ですか?もう、快感に変わっているはずですよ」

僧侶の尖らせた舌が股関節の形をなぞる。くすぐったいと思っていたそこは、全身がゾクゾクとして身体の内部にある何かがキュッと縮む感覚がした。

「…そろそろ、ココの準備も進めないといけませんね」
「ッ──」

薄い尻肉を広げられ、不浄の穴に舌が届く。
そんな所を弄らないでくれと何年も拒否を続けていたはずなのに、どこもかしこも快感を拾うようになった身体が期待するかのように全身から力を抜く。
それすら把握しているのかピチャ、とわざと音を立てて舌で唾液を塗りつける僧侶が腹立たしい。


「───なんだ。番う気になったか」


いつの間にか帰って来ていた魔王は大きな翼をバサリと羽ばたかせ、翼は黒い光となって霧散した。便利なものだなと現実逃避をしたら僧侶が嗜めるように不浄の穴をべろりと舐めて身体が跳ねた。

翼がなくなり人間の男と変わらない見た目になった褐色で大柄な魔王は、寝ている俺の頭を腿で挟むようにして腰掛けてくる。まるで良い予感がしない。

「先に始めるとはつれないな。そんな痴態を見せつけると、俺のココはイラついてかなわん。」

頭の上でゴソゴソしていると思えば、鼻先に巨大な逸物を見せつけられ裏筋を顔に擦り付けられる。
雄の匂いが強いソレに、蕾を僧侶に弄られている俺はその後に起こりうる事態に期待をしてか、恐れてか。
全身がふるりと震えて魔王の怒りを沈めるべく舌を伸ばした。

浮いた血管、熱い逸物、全てが雄々しい。
離れてしまわないように両手でそっと掴み、舌根から舌の先まで使って丹念に舐めた。

「貴方のではエリオの可愛い蕾が傷ついてしまう。番うのは私が先ですよ。」
「チッ…わかっている。エリオ、口開けろ」
「んッ」

頭を真上に向けられ、自分から大きく口を開ける前に口いっぱいに大きな逸物を捩じ込まれた。
歯を立てないように意識するだけで必死になり、顎が外れそうという恐れと口の中を出入りする熱にいずれ下の口で受け入れる物の質量を肌身に感じて頭の奥で無理だと警笛が鳴る。

容赦のない魔王の抜き挿しに怖くなると、すかさず僧侶が片手を握り、指を絡めて俺を更なる快楽に沈めようと空いている片手は蕾を解し、くたりと寝ていた俺の逸物を口に含んで舌で愛撫し始めた。

巨大な逸物を出し入れされた口はくぐもった声しか出せず、褐色の手に頭を掴まれて首を横に振る事すら叶わない。

グボ、グボ、とおおよそ人体から出ると思えない音が口から漏れ、クチュクチュと少し遠くから聴こえる水音に、荒い複数の息遣い。

全てが非日常で、勇者の人生で聴いたことのない音に慣れることのない耳ごと犯されている錯覚に陥る。

「ッは、ゲホッ…やぁっ!!」

顔には欲を吐き出され、下の方では力のないままの自分の逸物を吸い上げられる。簡単な刺激にも耐えられない俺の身体からは何も吐き出されることなく、しかし確かに絶頂をした。
脚がガクガクと震えている。気を抜くと一瞬で気を失いそうだ。

「なんて愛らしい…さぁエリオ、いきますね。あぁ、ついに…」
「ぅあ?…あっ?あっ、入って…」

熱いものが蕾に押し当てられ、メリ、と音がしたかと思った。
経験のない事に対する恐怖に取り乱しかけると、静かに自分の出した精液のかかった俺の顔を拭いていた魔王が顔を寄せて唇を重ねてくる。
視界いっぱいに魔王の顔が迫って暗くなり、僧侶の姿が見えなくなった。

(魔王の、舌…)

未知の快楽に取り乱しそうだ。本能的にザラザラとした長い舌が欲しくなって魔王の口の中へと自ら舌を射し込んだ。
舌先にザラリとした感触があって、早く、頑張った褒美が欲しいと魔王の頭に縋り付く。

「お前は…こんな時ばかり」
「エリオ、今は私にも集中して感じてください」
「ッあ!あ、あぁっ中がっ」
「そうです。中から貴方を引っ掻いていますよ」
「あぁ、ひ、やぁっ」

魔王にしがみつきながら、未知の快感に素直に溺れていると、頬を掴まれて今度は下を向かされ、僧侶とも唇を合わせた。

「っこわい、僧侶、これ、」
「俺のも受け入れないといけねぇのに怖がるなよ」
「ひ、それ、駄目!」

魔王の手に腹の外から僧侶の逸物を強調するようにグッと押され、より刺激が強くなる。
生理的なものか、涙がぼろぼろと零れ落ちた。

「大人になりましたね、エリオ。私の愛しいエリオ」
「これでお前は俺達の番だな。生涯、離れられると思うなよ」

高揚した二人から告げられる言葉は、俺にはどちらも悲しいものだった。生理的な涙で緩んだ涙腺が、新たな涙を溢れさせ、零していく。


(───嫌だ。大人になりたくなかった。大人になって、老いて、死んだら……また次の勇者になる)


気を逸らさなければ耐えられない。だから多くの快感を拾うために二人にキスをせがんで舌を伸ばした。
二人に頭を掴まれ、代わる代わる口が塞がれる。それでもいつものようには酔えなかった。

(なんで、今日は魔力くれないの…)

いっそ、常に酔っていたい。
この日々に慣れすぎれば、次の絶望に耐えられなくなる。
だから今は、幻想に溺れるくらいが丁度いい。魔力がほしい。
涙はとめどなく流れ続けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

愛人少年は王に寵愛される

時枝蓮夜
BL
女性なら、三年夫婦の生活がなければ白い結婚として離縁ができる。 僕には三年待っても、白い結婚は訪れない。この国では、王の愛人は男と定められており、白い結婚であっても離婚は認められていないためだ。 初めから要らぬ子供を増やさないために、男を愛人にと定められているのだ。子ができなくて当然なのだから、離婚を論じるられる事もなかった。 そして若い間に抱き潰されたあと、修道院に幽閉されて一生を終える。 僕はもうすぐ王の愛人に召し出され、2年になる。夜のお召もあるが、ただ抱きしめられて眠るだけのお召だ。 そんな生活に変化があったのは、僕に遅い精通があってからだった。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

アイドルグループ脱退メンバーは人生をやり直す 〜もう芸能界とは関わらない〜

ちゃろ
BL
ひたすら自分に厳しく練習と経験を積んできた斎川莉音はアイドルグループResonance☆Seven(レゾナンスセブン)のリオンとして活動中。 アイドルとして節目を迎える年に差し掛かる。 しかしメンバーたちとの関係はあまり上手くいってなかった。 最初は同じ方向を見ていたはずなのに、年々メンバーとの熱量の差が開き、莉音はついに限界を感じる。 自分が消えて上手く回るのなら自分はきっと潮時なのだろう。 莉音は引退を決意する。 卒業ライブ無しにそのまま脱退、莉音は世間から姿を消した。 しばらくはゆっくりしながら自分のやりたいことを見つけていこうとしていたら不慮の事故で死亡。 死ぬ瞬間、目標に向かって努力して突き進んでも結局何も手に入らなかったな…と莉音は大きな後悔をする。 そして目が覚めたら10歳の自分に戻っていた。 どうせやり直すなら恋愛とか青春とかアイドル時代にできなかった当たり前のことをしてみたい。 グループだって俺が居ない方がきっと順調にいくはず。だから今回は芸能界とは無縁のところで生きていこうと決意。 10歳の年は母親が事務所に履歴書を送る年だった。莉音は全力で阻止。見事に防いで、ごく普通の男子として生きていく。ダンスは好きだから趣味で続けようと思っていたら、同期で親友だった幼馴染みやグループのメンバーたちに次々遭遇し、やたら絡まれる。 あまり関わりたくないと思って無難に流して避けているのに、何故かメンバーたちはグイグイ迫って来るし、幼馴染みは時折キレて豹変するし、嫌われまくっていたやり直し前の時の対応と違いすぎて怖い。 何で距離詰めて来るんだよ……! ほっといてくれ!! そんな彼らから逃げる莉音のやり直しの日常。 やり直し編からでも読めます。 ※アイドル業界、習い事教室などの描写は創作込みのふんわりざっくり設定です。その辺は流して読んで頂けると有り難いです。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

淫愛家族

箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。 事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。 二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。 だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

処理中です...