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本編2【青年期】
15.甘い我慢※
しおりを挟む水の音が部屋に響く。
「ッあ、あぅ、あぁっ!」
押し出されるように上がる高い声は、まるで自分じゃないみたいだ。いつも理性的なアリオルが、獣のようにがっついて俺を貪っている。
腰を掴む手は爪がくい込み、その小さな痛みに理性的な男の独占欲が滲み出る。
俺も俺で獣のように四つん這いになって、隙を見つけては下に寝転ぶデュミナスの口を貪っていた。
既に硬くそそり立っている大きな逸物に自分のを擦り付け、ゆるやかな快感を拾う。
それを咎めるように俺の腹を抉る熱が奥をグリ、と刺激した。
「ひ、」
「私のでは足りませんか?エリオ。」
「ちが、違う、きもちぃ、きもちいから!」
「えぇ、そうですよね」
「ッ…おい、アリオル。俺のまでやるな」
背後のアリオルがどんな表情をしているか分からないが、なんとなく逆らったら怖い気がして口を閉じる。
影が俺とデュミナスの逸物に巻きついて、一纏めに縛り上げた。
半ば反射のように達してしまい、デュミナスの腹を白塗りにする。
「エリオは前でも気持ち良くなりたいですね?」
「あ…あ、だめ…!」
前の刺激は、逆に慣れない。影が動き、二人の逸物を扱く。締め付けられた逸物はあっけなくも再び欲を吐き出して、それでも尚ぐちゅぐちゅと扱かれ続けた。
「きゃうっ!うぅ…アリオル、こっち、やだぁ」
「エリオはデューも大好きですから、嬉しいでしょう?ほら、こちらも喜んで奥が吸い付いてきてますよ。…もっともっと、奥に来て欲しいですね?」
「だめ、それだめ…」
首を振ったところで聞いてくれない。そんな事はわかっているけれど。
腹の中が痙攣して、アリオルも達したことを察して腹を撫でるとデュミナスが焦れた顔をして腰を掴んだ。
「おい、いい加減代われ。奥なら俺の方が届くだろ」
「いいえ、長さなら私のも負けていませんので。」
「ひぅっ、ちょ、喧嘩やめ…!」
喧嘩ついでに奥を突くのやめて!二人はお互いを親友とか言ってるけど、俺を間に挟んでいる時は圧倒的に喧嘩が多い。
親友って呼べるくらい、大切な関係のくせに。
「うぅ…二人が仲良く出来ない原因になるなら、もう、俺がいない方がいいじゃん…」
魔力を貰ったのに自我を失う程は酔えなかったからか、今日の出来事に疲れて弱っているのか
つい、後ろ向きな事を呟いてしまった。満たされている時間の筈なのに、喧嘩を止めて静かになった二人に挟まれているとバツが悪くなる。
「…ごめん、出しゃばって。今日はもうやめる?」
なんだか気が逸れてしまった。一人になりたい。もう誰とも会話をしたくなくなった。
未来が見えても永らく苦しんできた心が弱気になる。不安になる。
長年習慣づいた寂しさにすっかり悲しくなって、腹に入ったアリオルの熱を抜こうと腰を浮かせたら二人に腰を掴まれて阻止された。
「エリオ」
「…エリオ、お前が今、どんな顔をしているか自覚出来るか?」
顔なんて、鏡を見なきゃわからないよ。
首を振ったら、目に溜まっていた涙が落ちて自分が泣きそうだったんだと知った。
驚いて顔に触れようと手を伸ばすと、その手はアリオルの大きくて細長い手に阻まれ、手の甲にはしっとり濡れた唇を押し付けられた。
「あぁ…私の愛しい人。私の…私達の最愛」
魔王の手は俺の身体をなぞるように、指先が胸から腹へと伝っていく。
いつもムスッとしているような、楽しいと言いつつも不機嫌そうな、意地の悪そうな…そんな魔王の顔が穏やかに俺を見ている。
「エリオ、神力と戦っている時も伝えたが…どうせ聞こえていなかったろう。俺達はお前を愛している。」
「………知ってる」
そんな事、知ってる。
見ないようにしてただけで、ただ楽になりたくて、世界の…人間達の平和を理由に勇者にされるのが嫌なように、俺を理由にされたくなくて、運命は奪われたけど、心は誰にも奪われたくなくて。
でも、何年もかけて俺を助けようとしていた二人は、決して欲の為だけじゃなくて。いっそ欲の為だけであって欲しいくらい、この生活は甘くて。
辛かった事は、繰り返されて麻痺していった。
その中でひとつの思い出だけが希望として俺を照らし続けていた。
幸せを繰り返すと、ずっと昔の最愛が薄れてしまいそうで怖くて
幸せだと、大切な人を忘れてしまうのが怖くて
幸せだと、来世が来る運命という恐怖を思い出してしまうのが怖くて。
「愛してるなら、助けてよ。俺から運命を奪ってよ。」
じゃなきゃ嫌だ。二人の気持ちは受け入れない。
俺は、俺の来世を守りたいんだ。世界を守らせるのに、誰も守ってくれない俺を守りたいんだ。
快楽で時間を忘れても、子供が大人になったように、進み続けている。この停滞の日々はどれだけ続いても、老いて死ねば、それも終わる。
心臓から湧き出て血液のように全身を巡る神力。俺が勇者であると人間に伝える力。俺を勇者として人より丈夫にする程度の、ギフト。
(……本当に?)
ふと、疑問が降って湧いた。天啓で勇者を探す。勇者を見つけたら、その後は人間達が努力をして、勇者を育てて魔王討伐を目指させる。
本当に、身体を丈夫にする程度の力なのだろうか。人間に見つかる為?いいや、奴らは天啓で見つける。神力は見えていない。
神に近い精霊達は、闇に堕ちた。神に近い存在は勇者以外に聞いた事がない。せいぜい治癒魔法という光の魔法くらいだ。神の祝福を…誰も知らなかったのではないか。
「………輪廻、転生…」
人間達は、戦いしか教えない。魔族の殺し方しか教えない。
なのに俺は、知っている。輪廻転生を、運命を、疑う事を知っている。
自分の勇者としての在り方が、なんだかゲームのシステムみたいだと気が付いた。
そうだ。ありきたりな、ファンタジーだ。
神からの祝福という、遠い過去で聞き慣れた言葉を頭の中で反芻した。
「ありきたりな、ファンタジーだったんだ。」
「どうした?エリオ。」
「勇者は、仲間を集めて魔王を倒すんだ。勇者は皆のリーダーで、常に先頭に立ってるし、時には仲間を鼓舞したりして勇気付けたりするムードメーカーで」
「……エリオ、私達には貴方の伝えたい事が…」
手を上げて、神力を集めて光の雨を降らせた。
「勇者は唯一無二だから…一人で良かったんだ。だから俺だけだったんだ。」
王道ファンタジー。勇者として旅に出て、仲間を集め、魔王を倒す。
勇者は主人公だから、死んだらリセットしてやり直す。
そうしていつか、物語はハッピーエンドを迎えるんだ。
…なんて愚かな誤学習の結果だ。現実は、ゲームのようには進まないと誰もが当然として知っていたのに。
困惑している二人に笑顔を向けた。表情の作り方なんてずっと忘れていたから上手く出来ているか分からないけれど。
「ふたりとも、俺が何を要求しても愛してくれるの?」
「……貴方の愛を得られるなら、私は何も迷いません。」
「命を掛けると言っただろうが。本当に人の話を聞かない…」
「へへ…」
影が包み込む。この世界で最も温かい影が俺を守るように。
大きな翼が俺達を隠す。この世界から見えなくするように。三人だけの世界を作る。
俺が何を考えているかなんて分からないくせに、二人はいつも、俺に寄り添う。
こんなの、愛さない方が難しい。二人はいつも、俺に沢山の甘い我慢を強いてくる。
「…出来ますよ。私達なら。貴方を救い、守る為ならば」
「お前が望むなら俺は魔王として世界を壊してやる。お前の欲を、ちゃんと言え。」
「……はは、あははっ」
勇者は魔王を倒すのが王道ストーリーだから、それが当たり前だと思っていた。
視界は真っ暗なのに、世界が急に輝き出した。
見えない世界で唯一感じる二人がもっともっと愛おしくなった。
「二人とも、喧嘩はしないで。…たくさん神力あげるから、酔って。俺に集中して」
「愛はくれないのに我儘な男だな…」
「可愛らしいじゃないですか。エリオ、もっと私を酔わせて」
代わる代わる、舌を絡める。これから沢山の魔力が必要になるから、補給してもらわないと。
勝手に生成されるなら、こっちも勝手に全て魔力にしてやるんだ。
そして俺は、ひとまず快楽を優先させることにした。だってこの行為は気持ちいいから。二人が俺に夢中になってくれるから。
それでいいんだ。時間はたっぷりあるのだから。
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