清らかな結婚生活

江多之折(エタノール)

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6.妻が今日も素晴らしく可愛い(フィニス視点)

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「旦那様っ!見てください!僕の靴です!」
「名前で呼ぶ約束は?」
「あ。…フィニス!」

えへへ、と間違えたことに照れて笑うルミエルを抱き締めた。今日も妻が最高に可愛い。
ちなみに初夜は失敗に終わった。慣れない行為にルミエルが気絶したのでゆっくりと時間をかけて準備することにした。大丈夫だ。可愛い妻をオカズに自己処理するのは既にやっている。

さて、特注で作らせた靴が完成したらしい。早速履いて見せに来たルミエルは「ピカピカです!」と抱き締められても靴を見せようとぴょこぴょこ足を後ろに蹴り上げて見せてきた。
それでは靴の裏しか見えないが、それも大丈夫だ。デザインを決めたのは俺だから把握している。

「ルミエルに似合っているな。擦れて痛い所はないか?」
「ないです!」

ルミエルは自分の物が増えていくことに喜びつつ、時々戸惑うので注意が必要だが…今回は大丈夫そうだ。

結婚式の日、唯一の持ち物が身に付けていたドレスと簡素な鞄に詰め込まれたボロボロの修道服とあんまりな状態だったので教会に文句を言ったら、ルミエルには全く合わないサイズの真新しい服や装飾品が届いた。突き返したが。

どうやらこの結婚を失敗とさせる為にルミエルが選ばれたようだ。教会も反王派だったとは。

「折角だから、新しい靴でお出かけするか」
「お出かけですか?」

俺の胸板に頬を擦り寄せて堪能していたルミエルが顔を上げてキョトンと見てきた。大変可愛い。
少し空いた口から可愛い舌が見えていたので思わず舐めにいったら肩がビクンと跳ねた。たまにしか見えない若草色の瞳が俺の目を見ている。
顔が離れるとルミエルの頬がぷくっと膨らんだ。

「もう、フィニス!またお股が痛くなっちゃうからやめてください!」
「………大渋滞だ」
「??」

どうしたらいい。もう出かけるのやめたい。頬が膨らんでリスみたいだ。お股が痛いってなんだ、誘われてるのか俺は。
軽率に可愛いの大渋滞を起こすルミエルを外に連れ出して良いものか、これでは可愛すぎて目を離した瞬間に連れ去られてしまうだろう。目を離さないが。

「…出かけるのやめるか」
「やめるんですか?」
「グッ…」

ちょっと期待しちゃったな…ってしょんぼりする顔もまた、また…!

「……旦那様、理性です」
「理性が一匹、理性が二匹、理性が…………うん、やはり行こうかルミエル」
「?…りせいってどんな生き物ですか?」

後ろからセバスに声を掛けられて助かった。今日は教会の在り方についてチクる予定だったんだ。
結果的に可愛い…可愛すぎる妻をもらえたが、ルミエルの扱いには思うところがありすぎる。

「そのうちわかる。外出着を選びに行こうか」
「このままではお出かけ出来ないんですか…貴族ってすごい…」

でも、靴はこのままでいいですか?と少し心配そうにするルミエルにもう一度キスをして今度こそセバスに叱られた。










───さて、久しぶりに王城に来た訳だが。


「おっきい門…お城も大聖堂と同じくらい大きい……というか、どこまで敷地内なんだろ」

キョロキョロと辺りを見渡すルミエルの肩を抱いてゆっくりと歩き始めた。

「ルミエルは教会から外に出たことはあるのか?」
「あ、ないです。お仕事が沢山あるので聖堂から出る時間はないんです」
「…そうか」

ここもお掃除が大変そうですねぇと城を眺めるルミエルに、出来る限り多くの景色を見せようと誓った。
王城以外にも複数の建物が並ぶ城の敷地内を歩かなければならないので結構な距離があるが、ルミエルは体力があるらしい。散歩気分で跳ねるように歩き、時々靴を見てはニコニコしている。可愛い。

「フィニス殿下!ようこそいらっしゃいました、本日はどのような…」
「父に会いに来た。今は訓練所か?」
「いえ、本日は執務室かと…あの、そちらの方は」
「俺の妻だ。まぁ、見学がてら歩いて行くか。──行こう、ルミエル」

城の前で控えていた騎士と話をしていたら、ルミエルは今まで見たことないくらい目を見開いて俺を見ていた。可愛いが、他所の男にその美しい瞳を見せないで欲しい。

「ルミエル、なにか──」
「………殿下…………王族?」
「おっと」

我が妻は俺の身分を知らなかったらしい。結婚式で王族しか持たない名前も読み上げられていたのに。まぁコルセットに苦しんでいてそれどころではなかったか。
若干引きそうになって後ろに下がったところを捕まえて、大丈夫だと伝わるようににっこり笑って見せた。
「ひぇ」と小さな悲鳴が漏れ出たので失敗したようだが。

「大丈夫だ。王族と言っても序列はだいぶ下だから普通の貴族と変わらない」
「き、貴族様も僕には手が届かない…」
「今更だ、今更。ほーら、そもそもルミエルは俺の妻だから王族も同然だぞ~」
「ひぇぇ」

ルミエルの両脇を掴んで持ち上げたが、やはり軽すぎるな。強風の日には飛ばされそうだ。
想像していたよりも大きな権力に怯えるルミエルは抱っこして移動する事にした。この様子では内装を楽しむ事も出来なそうだ。残念。








「───あれ、珍しい顔がいる。」
「げぇ、狐顔」
「名前で呼びなさいね」

城内を歩けばそれなりに顔見知りと会うわけで。そもそも俺の立ち位置も国の騎士団所属だしな。王城も職場みたいなものだ。全然寄り付かないが。
ルミエルと違って可愛くない細目の男…セドリックに見つかって、面倒だなと溜息をついた。

「…その、抱えている子は?」
「俺の妻だ。ルミエル、こいつは………俺の父の兄の嫁の弟の子供だ。」
「父の兄の…??」
「親戚、って言ってあげなさい。相変わらず可愛くないねフィニスは。いつ王都に戻ってきたんだい?」
「つい数日前だ。ルミエルと結婚する為に戻ってきた。」
「あぁ…そうか」

セドリックの同情的な視線にムッとするが、実際のところ結婚式を挙げるまで俺も期待をしていなかったから仕方ない。
抱えていたルミエルを降ろして、挨拶を促した。

「初めまして、ルミエルと申します」
「…セドリック・レヴァンだ。フィニスは偏屈な奴だけどよろしくね、ルミエル」
「フィニスは、とても優しくて素敵な人です!よろしくお願いします!…わぁっ!」

ルミエルは挨拶の仕方をあまり知らないのか、最も目上の者にする膝を地につける最敬礼をしたがセドリックはあえて指摘せずその挨拶を受け入れた。
…俺は気に食わないのですぐにまたルミエルを抱っこしたが。

驚いて俺にしがみつくルミエルはやはり可愛い。しかも俺の事を優しくて素敵な人だと言ってくれた。なんて出来た妻だろう。

「……予想に反して、上手くやれているようだね」
「あぁそうだ。父に直談判しようと思ったが、お前でもいいか。休暇の延長を申し出る。」
「フィニスが必要最低限でいいって言ったよね?!…まぁ、でもそうだね。新婚旅行で1ヶ月休暇をとる事もあるし、今は平和だから俺が話を通しとくよ。鍛練だけは怠らないように」
「よし。ルミエル帰ろうか」
「はーい」
「相変わらずサッパリしてるね君は…」

少しだけ庭園を散歩してから帰るかと踵を返して、そうだとセドリックに振り返った。

「教会はもっと調べた方がいいぞ。孤児の扱いと…あとは派閥とかな。」

セドリックならこれで十分だろう。俺は荒事担当だからな。やるのはここまでだ。
横抱きにされたルミエルが足をパタパタさせては新しい靴を眺めている姿に、俺は靴屋を店ごと買い取ろうかと真剣に悩んだ。
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