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幼馴染
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『君に恋をしてから私は愚かになったと思う。闇夜に輝く月を見て君を想い、届かぬ距離だと諦めながら手を伸ばし、掴んでしまえば手放せないとわかっていても手に入れようと必死に悪あがきをしている』
主人公の足元に跪き自身の秘めた恋心を打ち明ける男性の言葉に、以前読んだ時には感動があったと思います。けれど今はただ、愚かなのは自分のせいであって主人公のせいにするなど男の風上にも置けないと、妙なところが鼻についてしまってこの先を楽しく読むことは難しそうです。
「もういいわ」
読みかけの本を閉じてテーブルの上に置くと、下げてしまって構わないのか? という視線が向けられたので軽く頷きます。すると本はわたくしの視界から消えて棚に戻っていきました。
この本に出てくる主人公たちの恋路を邪魔する意地悪な女性は失敗してしまったけど、わたくしは大切な家族のためにも、ロイエン様には恋を諦めて現実を見てもらう必要があります。
その第一歩として問題のメイドには実家に帰ってもらいたいのだけど、そうすると今度はどこでどんな噂が流れるか……。今のロイエン様は男爵家だろうが関係なく押しかけてしまいそうな、無駄な情熱を持っていそうで怖いのです。
明日はクリスティナ様とお会いできるから、その時には少しだけ誰にも言えない愚痴を聞いて頂きましょう。
現王妃様の第一子であり、王の第二子にして第一王女でもあるクリスティナ様。
生まれつき心臓が悪く、最近では外を出歩くことすら難しくなってきたご様子で、月に一度わたくしを自身の離宮に招くのをとても楽しみにしてくださっています。
わたくし自身も、幼き頃は姉のように慕っていたクリスティナ様とお会いできるのは楽しみではあるけれど、ここ数年は背徳感が芽生えてしまいそうになる時があって困っているのも事実。
八歳の頃に出会った二つ年上のクリスティナ様。
日に当たらない生活をしているせいか白く美しい素肌の持ち主だった王女殿下は、今はもう記憶の中にだけ。
少しいたずら好きで、よくわたくしをからかっていた幻の王女殿下は、今や人に見られてはならない立派な成人男性へと変貌を遂げてしまわれた。
秘密を知る者はごく少数。その身を守るのは王の盾であり矛でもある王家の隠密たち。けっして外に漏れてはいけない王家の極秘事項をわたくしに教えたのは他でもないクリスティナ様。
けれど何度聞いても本当のお名前を教えてはくださらないひどい人。
王家の秘密を家族にも黙っている忠誠心の塊のようなわたくしの愚痴、たまには聞いて頂いても罰は当たらないでしょう。
きっとクリスティナ様が本物の王女殿下であったなら、部屋には侍女や護衛が大勢いてこんな話をできる場所ではなかったのだろうけど、幸か不幸かクリスティナ様はわたくしと会う時には自然体でいたいとかなんとかおっしゃって、全員外にだしてしまうから……。
未婚の男女が同じ部屋に二人きりでいるという、人に知られたらわたくしは風に舞う木の葉のように軽くふしだらな女性だと言われても仕方ない状況なのに、王家の秘密という言葉が全てを包み隠す離宮での出来事。
わたくしたちの間にあるのは恐れ多くも友情であって、恋情ではない。けれど普通の同性とはどこか違う歪な関係。
でも不思議なことに、クリスティナ様が男性だと知ってからも、二人きりが嫌だと思ったことはまだ一度もないのです。
主人公の足元に跪き自身の秘めた恋心を打ち明ける男性の言葉に、以前読んだ時には感動があったと思います。けれど今はただ、愚かなのは自分のせいであって主人公のせいにするなど男の風上にも置けないと、妙なところが鼻についてしまってこの先を楽しく読むことは難しそうです。
「もういいわ」
読みかけの本を閉じてテーブルの上に置くと、下げてしまって構わないのか? という視線が向けられたので軽く頷きます。すると本はわたくしの視界から消えて棚に戻っていきました。
この本に出てくる主人公たちの恋路を邪魔する意地悪な女性は失敗してしまったけど、わたくしは大切な家族のためにも、ロイエン様には恋を諦めて現実を見てもらう必要があります。
その第一歩として問題のメイドには実家に帰ってもらいたいのだけど、そうすると今度はどこでどんな噂が流れるか……。今のロイエン様は男爵家だろうが関係なく押しかけてしまいそうな、無駄な情熱を持っていそうで怖いのです。
明日はクリスティナ様とお会いできるから、その時には少しだけ誰にも言えない愚痴を聞いて頂きましょう。
現王妃様の第一子であり、王の第二子にして第一王女でもあるクリスティナ様。
生まれつき心臓が悪く、最近では外を出歩くことすら難しくなってきたご様子で、月に一度わたくしを自身の離宮に招くのをとても楽しみにしてくださっています。
わたくし自身も、幼き頃は姉のように慕っていたクリスティナ様とお会いできるのは楽しみではあるけれど、ここ数年は背徳感が芽生えてしまいそうになる時があって困っているのも事実。
八歳の頃に出会った二つ年上のクリスティナ様。
日に当たらない生活をしているせいか白く美しい素肌の持ち主だった王女殿下は、今はもう記憶の中にだけ。
少しいたずら好きで、よくわたくしをからかっていた幻の王女殿下は、今や人に見られてはならない立派な成人男性へと変貌を遂げてしまわれた。
秘密を知る者はごく少数。その身を守るのは王の盾であり矛でもある王家の隠密たち。けっして外に漏れてはいけない王家の極秘事項をわたくしに教えたのは他でもないクリスティナ様。
けれど何度聞いても本当のお名前を教えてはくださらないひどい人。
王家の秘密を家族にも黙っている忠誠心の塊のようなわたくしの愚痴、たまには聞いて頂いても罰は当たらないでしょう。
きっとクリスティナ様が本物の王女殿下であったなら、部屋には侍女や護衛が大勢いてこんな話をできる場所ではなかったのだろうけど、幸か不幸かクリスティナ様はわたくしと会う時には自然体でいたいとかなんとかおっしゃって、全員外にだしてしまうから……。
未婚の男女が同じ部屋に二人きりでいるという、人に知られたらわたくしは風に舞う木の葉のように軽くふしだらな女性だと言われても仕方ない状況なのに、王家の秘密という言葉が全てを包み隠す離宮での出来事。
わたくしたちの間にあるのは恐れ多くも友情であって、恋情ではない。けれど普通の同性とはどこか違う歪な関係。
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