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追憶編
○追憶編⑤~本物の人~
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作曲コンクール授賞式会場前……
「わ~大きい~」
私と澪ちゃんは最寄り駅で待ち合わせをし、歩いて一緒に向かった会場であるホールの前で、その大きさに圧倒されていた。
中に入ると……始まる前のロビーには有名な作詞家、作曲家であろうお偉い先生方が勢揃いといった感じで明らかに場違いな感じがした。
ホールの座席に座っても周りは年配の方ばかりで、高校生なのは多分私達だけ……という感じで全然落ち着かなかった。
ビーーーーッ
「ただ今より……全国音楽振興会主催、第8回音楽コンクールの結果発表、及び授賞式を始めさせていただきたいと思います」
「まずは、歌手部門の発表です……」
コンクールでは私達が応募した作詞・作曲のソングライター部門だけでなく、歌手部門、作詞のみの部門など他にも色々な部門があった。
「続いて作詞部門、新人賞の発表です……」
(新人賞?……での募集もあったんだ)
名前が読み上げられて、歓声と拍手が上がり、受賞者が壇上に案内されていく……
応援してくれる人がいるということは、ある程度有名な人なのだろうか?
「続いて作詞・作曲、ソングライター部門、新人賞の発表です……」
(もうすぐかも……)とドキドキした。
「続いて作詞・作曲、ソングライター部門、特選賞の発表です……」
(お願いします……音大受験ができるかの人生がかかっているんです……)
心の中で強く願った。
自分の事でこんなに叶えたい願いというのは、生まれて初めてだった。
「特選賞は……」
結果は、落選……つまり特選賞候補止まりだった。
『生命のささやき』という題名も、私の名前も永遠に呼ばれることはなかった。
「最後に、各賞の候補に上がった方々のお名前をご紹介します……」
賞の候補者が数名ずつ次々に発表される……その中に代表として澪ちゃんの名前が読み上げられたのが唯一の救いだった。
私はこの時(これから先いくら曲を作っても私の曲は世の中に出ることはないだろう)と変な確信をした。
「ステージの上にいる人は、本物の才能がある人で、手が届かない本物の人なんだろうな」
私は澪ちゃんと別れた帰り道、電車の窓にそう呟いた。
「……でも、音楽は音が苦になってはいけません。音を楽しまなきゃね」
私は高校2年最後の文化祭に向けて頑張ることにした。
来年は受験生なので、軽音楽部にとっては最後のライブ……
その中で私が作った曲も歌いたいと澪ちゃんが言ってくれたので、歌詞を相談しながら新たに作った『夢の終わり』という歌を演奏することになった。
そして最後の曲は「みんなが知ってる『翼になりたい』にしない?」という澪ちゃんの発案で、しっとり系希望二人と激しい系希望二人で意見が別れたが……
「賛成~『翼になりたい』なら小学生の時に習ってハモリまで分かるし」という私の賛成意見により、しっとり系で最後の曲が決定した。
そしてそう言った手前、私も一緒に歌うことになってしまった。
最後の文化祭ライブのお客さんは、去年よりかなり増えていて満員という感じだった。
澪ちゃんが『夢の終わり』を歌っている間、私は涙が止まらなくて……
弾きながらだから拭けないし、鼻水も出てたから、きっとかなり怪しい人だと思われただろう。
そして最後の『翼になりたい』……
曲が始まり澪ちゃんが歌い出すと、盛り上がっていた会場は、その綺麗な声に聞き入るように静かになった。
そしてサビ……私と澪ちゃんのハモリ……
一緒に歌っている間に今までの色々な思い出が浮かび、本当に楽しかった。
(私達の歌が少しでも誰かの希望になりますように……)という想いが届いたのか……間奏の間にハンカチで涙を拭う人もいた。
そして2番が始まり、最後のサビ……
澪ちゃんの声が珍しく震えていた。
私も「これで終わりなんだ」と涙が出そうになり声が少し震えたが、なんとか堪えた。
最後のハモリを最高のハモリにしたかった……
そして最後の一音を精一杯、歌いきった。
後奏が終わった後、なかなか拍手が鳴り止まなかった。
最後のライブは、今までで一番の……最高のライブだった。
「最後まで聞いていただきありがとうございましたー! OURSKYでしたー!」
私が即席でつけたアナグラムのアーティスト名はそのままバンド名になっていて……
それも今日で終わりかと思うと、なんだかとても切なかった。
それから少し経ったある日、公募雑誌を何気なく見ていたら気になる記事を見つけてしまった。
特集の見開きで、高校生作曲コンクール最優秀賞の○○さんデビューという大きな見出しだった。
私が賞を貰ったのと同じコンクールで名前も見たことがある先輩……
「有名コンクールでも大賞を受賞して音大に推薦入学も決まったが、この度本格的に音楽活動開始&CDデビュー決定……」
そのデビュー曲が映画の曲として近日発売されるとのことだった。
「さすが先輩……本物の才能がある人はレベルが違うな」
「やっぱり音大に行くような人はすごいや…………私と違って……」
先輩の曲が使われているという映画自体は見に行けなかったが……CMで少し聞いたメロディが気になってCDを買ってしまった。
帰りの電車の途中、ウォークマンで曲を聞いていた私はサビの部分で思わず呟いた。
「あ……サビが『空を見上げて』だって」
「ふふ……自分を信じて探しに行こうって私が送ったコメントみたいだな……」
私は音大受験を諦めて、進学塾に通い始めた。
そして、ある大切な人と出会った。
「わ~大きい~」
私と澪ちゃんは最寄り駅で待ち合わせをし、歩いて一緒に向かった会場であるホールの前で、その大きさに圧倒されていた。
中に入ると……始まる前のロビーには有名な作詞家、作曲家であろうお偉い先生方が勢揃いといった感じで明らかに場違いな感じがした。
ホールの座席に座っても周りは年配の方ばかりで、高校生なのは多分私達だけ……という感じで全然落ち着かなかった。
ビーーーーッ
「ただ今より……全国音楽振興会主催、第8回音楽コンクールの結果発表、及び授賞式を始めさせていただきたいと思います」
「まずは、歌手部門の発表です……」
コンクールでは私達が応募した作詞・作曲のソングライター部門だけでなく、歌手部門、作詞のみの部門など他にも色々な部門があった。
「続いて作詞部門、新人賞の発表です……」
(新人賞?……での募集もあったんだ)
名前が読み上げられて、歓声と拍手が上がり、受賞者が壇上に案内されていく……
応援してくれる人がいるということは、ある程度有名な人なのだろうか?
「続いて作詞・作曲、ソングライター部門、新人賞の発表です……」
(もうすぐかも……)とドキドキした。
「続いて作詞・作曲、ソングライター部門、特選賞の発表です……」
(お願いします……音大受験ができるかの人生がかかっているんです……)
心の中で強く願った。
自分の事でこんなに叶えたい願いというのは、生まれて初めてだった。
「特選賞は……」
結果は、落選……つまり特選賞候補止まりだった。
『生命のささやき』という題名も、私の名前も永遠に呼ばれることはなかった。
「最後に、各賞の候補に上がった方々のお名前をご紹介します……」
賞の候補者が数名ずつ次々に発表される……その中に代表として澪ちゃんの名前が読み上げられたのが唯一の救いだった。
私はこの時(これから先いくら曲を作っても私の曲は世の中に出ることはないだろう)と変な確信をした。
「ステージの上にいる人は、本物の才能がある人で、手が届かない本物の人なんだろうな」
私は澪ちゃんと別れた帰り道、電車の窓にそう呟いた。
「……でも、音楽は音が苦になってはいけません。音を楽しまなきゃね」
私は高校2年最後の文化祭に向けて頑張ることにした。
来年は受験生なので、軽音楽部にとっては最後のライブ……
その中で私が作った曲も歌いたいと澪ちゃんが言ってくれたので、歌詞を相談しながら新たに作った『夢の終わり』という歌を演奏することになった。
そして最後の曲は「みんなが知ってる『翼になりたい』にしない?」という澪ちゃんの発案で、しっとり系希望二人と激しい系希望二人で意見が別れたが……
「賛成~『翼になりたい』なら小学生の時に習ってハモリまで分かるし」という私の賛成意見により、しっとり系で最後の曲が決定した。
そしてそう言った手前、私も一緒に歌うことになってしまった。
最後の文化祭ライブのお客さんは、去年よりかなり増えていて満員という感じだった。
澪ちゃんが『夢の終わり』を歌っている間、私は涙が止まらなくて……
弾きながらだから拭けないし、鼻水も出てたから、きっとかなり怪しい人だと思われただろう。
そして最後の『翼になりたい』……
曲が始まり澪ちゃんが歌い出すと、盛り上がっていた会場は、その綺麗な声に聞き入るように静かになった。
そしてサビ……私と澪ちゃんのハモリ……
一緒に歌っている間に今までの色々な思い出が浮かび、本当に楽しかった。
(私達の歌が少しでも誰かの希望になりますように……)という想いが届いたのか……間奏の間にハンカチで涙を拭う人もいた。
そして2番が始まり、最後のサビ……
澪ちゃんの声が珍しく震えていた。
私も「これで終わりなんだ」と涙が出そうになり声が少し震えたが、なんとか堪えた。
最後のハモリを最高のハモリにしたかった……
そして最後の一音を精一杯、歌いきった。
後奏が終わった後、なかなか拍手が鳴り止まなかった。
最後のライブは、今までで一番の……最高のライブだった。
「最後まで聞いていただきありがとうございましたー! OURSKYでしたー!」
私が即席でつけたアナグラムのアーティスト名はそのままバンド名になっていて……
それも今日で終わりかと思うと、なんだかとても切なかった。
それから少し経ったある日、公募雑誌を何気なく見ていたら気になる記事を見つけてしまった。
特集の見開きで、高校生作曲コンクール最優秀賞の○○さんデビューという大きな見出しだった。
私が賞を貰ったのと同じコンクールで名前も見たことがある先輩……
「有名コンクールでも大賞を受賞して音大に推薦入学も決まったが、この度本格的に音楽活動開始&CDデビュー決定……」
そのデビュー曲が映画の曲として近日発売されるとのことだった。
「さすが先輩……本物の才能がある人はレベルが違うな」
「やっぱり音大に行くような人はすごいや…………私と違って……」
先輩の曲が使われているという映画自体は見に行けなかったが……CMで少し聞いたメロディが気になってCDを買ってしまった。
帰りの電車の途中、ウォークマンで曲を聞いていた私はサビの部分で思わず呟いた。
「あ……サビが『空を見上げて』だって」
「ふふ……自分を信じて探しに行こうって私が送ったコメントみたいだな……」
私は音大受験を諦めて、進学塾に通い始めた。
そして、ある大切な人と出会った。
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