55 / 77
追憶編
○追憶編⑪~愛合傘~
しおりを挟む
大谷孝次は私と何もかも正反対だった。
私が女の割に背が高めだとしたら、彼は男の割に背が低め。
私が薄い系だとしたら、彼は濃い系。
私が消極的だとしたら、彼は積極的。
「そういえば、大谷孝次って私の好きな俳優さんにちょっと雰囲気似てるかも……眉毛濃いし」
私は中学の時から、ある俳優さんが大好きだった。
きっかけは、有名なアニメ映画で王子役の声優をしていたこと……
エンドロールの名前が初恋の悠幸くんのフルネームとほぼ同じだったので、見間違えた私は以後その俳優さんが何となく気になり、中学時代はその人のドラマばかり見ていた。
そしていつしかファンになっていた……といってもCDを買ったり、映画を見に行く程度のファンだけど。
声がカッコいいのはもちろんだが、演技力も抜群で色々な役をこなすカメレオン俳優といった感じで、濃い眉毛と硬派な感じも好きだった。
中性的で優しい初恋の悠幸くんとは正反対のタイプなのに、なぜなんだろうと自分でも不思議で堪らなかった。
『冬のホタル』というドラマにも出ていて……ヒロインの名字が『篠田』だったので、ドラマの中で名字が呼ばれる度に悶絶し、床をゴロゴロしていた。
後半は名前呼びだったので、ちょっと残念だったが……
ドラマが終わり、(楽しみがなくなって寂しいな)と思っていたら、次の次の夏クールで私が好きな野球を題材にした『戦いの夏』というドラマに出ると雑誌に載っていた。
しかもそのドラマのヒロインの名前が漢字は違うけど『ハルカ』だと言うのでワクワクしていたら、ほとんどが名字呼びでがっかりした。
……が、最終回で一回だけ「ハルカ……」と呼ばれた時はクッションを抱き締めながらキャーキャー転がってしまった。
私は完全に頭の中がお花畑でどうしようもない、少し特殊なミーハー中学生だった。
共通点や似ていることがあると盛り上がってしまうのは私の悪い癖だ。
その俳優さんは丁度、大学1年の春クールの『春の雪』というドラマにも出ていて……
記憶がなくなったヒロインを不器用ながらも一途に愛し続ける姿やラストシーンに号泣し過ぎて鼻水が止まらなかった。
毎週ドラマを見ながら、なぜかふと大谷孝次のことが浮かんでしまい、私は「ちょっと似てるかも……」と呟いた。
初めての英語のスピーチ発表の時、
先に発表した大谷孝次はとても堂々としていて……後ろまでよく通る声でスムーズに発表し、終わった後にはすぐ先生に誉められていた。
授業中も私と彼は正反対といった感じで、私は自信のない小さな声しか出なかった。
しかも、最後の順番まで待っている間に緊張し過ぎて……発表の時には前々から準備をしていた内容をド忘れして固まってしまった。
授業が終わった後、帰ろうとした彼とすれ違った時に「すごかったね~」と誉めたら、
「べ、別に……一夜漬けで適当にやっただけだ」と鼻をこすりながら照れていた。
彼の声は大きくてよく通るので、賑やかな学食内で彼の声だけが聞こえてきたこともあった。
何かの話題で盛り上がっていたり、友達とふざけあって大笑いしたり……
彼が笑うと、なぜか私も嬉しかった。
二人で幹事をやったゼミの飲み会では、流れで誕生日の話題になった。
私が「1月7日」と言うと、大谷孝次が「俺1月27日生まれで20日違い!」と手を挙げ、冬の誕生日あるある話で盛り上がった。
飲み会が終わると、外はかなりの雨が降っていた。
大谷孝次は雨に濡れることを気にする様子もなく、傘も差さずに出ていこうとして……
その姿だけ、なんだか昔の私みたいだなと思った。
私は天気予報を聞いて(今日の帰りは雨が降るな)と傘を持ってきていたので、「一緒に入ろう?」と傘を差し出した。
「い、いいよ」と照れながら断る彼が、なんだか可愛くて……
駅までの道、ちょっと緊張した。
相合傘というものを初めて体験したからというのもあるけど……
そして私は、その数日後……
ある事件をきっかけに行ったファミレスで、まさかの展開に唖然としてしまった。
私が女の割に背が高めだとしたら、彼は男の割に背が低め。
私が薄い系だとしたら、彼は濃い系。
私が消極的だとしたら、彼は積極的。
「そういえば、大谷孝次って私の好きな俳優さんにちょっと雰囲気似てるかも……眉毛濃いし」
私は中学の時から、ある俳優さんが大好きだった。
きっかけは、有名なアニメ映画で王子役の声優をしていたこと……
エンドロールの名前が初恋の悠幸くんのフルネームとほぼ同じだったので、見間違えた私は以後その俳優さんが何となく気になり、中学時代はその人のドラマばかり見ていた。
そしていつしかファンになっていた……といってもCDを買ったり、映画を見に行く程度のファンだけど。
声がカッコいいのはもちろんだが、演技力も抜群で色々な役をこなすカメレオン俳優といった感じで、濃い眉毛と硬派な感じも好きだった。
中性的で優しい初恋の悠幸くんとは正反対のタイプなのに、なぜなんだろうと自分でも不思議で堪らなかった。
『冬のホタル』というドラマにも出ていて……ヒロインの名字が『篠田』だったので、ドラマの中で名字が呼ばれる度に悶絶し、床をゴロゴロしていた。
後半は名前呼びだったので、ちょっと残念だったが……
ドラマが終わり、(楽しみがなくなって寂しいな)と思っていたら、次の次の夏クールで私が好きな野球を題材にした『戦いの夏』というドラマに出ると雑誌に載っていた。
しかもそのドラマのヒロインの名前が漢字は違うけど『ハルカ』だと言うのでワクワクしていたら、ほとんどが名字呼びでがっかりした。
……が、最終回で一回だけ「ハルカ……」と呼ばれた時はクッションを抱き締めながらキャーキャー転がってしまった。
私は完全に頭の中がお花畑でどうしようもない、少し特殊なミーハー中学生だった。
共通点や似ていることがあると盛り上がってしまうのは私の悪い癖だ。
その俳優さんは丁度、大学1年の春クールの『春の雪』というドラマにも出ていて……
記憶がなくなったヒロインを不器用ながらも一途に愛し続ける姿やラストシーンに号泣し過ぎて鼻水が止まらなかった。
毎週ドラマを見ながら、なぜかふと大谷孝次のことが浮かんでしまい、私は「ちょっと似てるかも……」と呟いた。
初めての英語のスピーチ発表の時、
先に発表した大谷孝次はとても堂々としていて……後ろまでよく通る声でスムーズに発表し、終わった後にはすぐ先生に誉められていた。
授業中も私と彼は正反対といった感じで、私は自信のない小さな声しか出なかった。
しかも、最後の順番まで待っている間に緊張し過ぎて……発表の時には前々から準備をしていた内容をド忘れして固まってしまった。
授業が終わった後、帰ろうとした彼とすれ違った時に「すごかったね~」と誉めたら、
「べ、別に……一夜漬けで適当にやっただけだ」と鼻をこすりながら照れていた。
彼の声は大きくてよく通るので、賑やかな学食内で彼の声だけが聞こえてきたこともあった。
何かの話題で盛り上がっていたり、友達とふざけあって大笑いしたり……
彼が笑うと、なぜか私も嬉しかった。
二人で幹事をやったゼミの飲み会では、流れで誕生日の話題になった。
私が「1月7日」と言うと、大谷孝次が「俺1月27日生まれで20日違い!」と手を挙げ、冬の誕生日あるある話で盛り上がった。
飲み会が終わると、外はかなりの雨が降っていた。
大谷孝次は雨に濡れることを気にする様子もなく、傘も差さずに出ていこうとして……
その姿だけ、なんだか昔の私みたいだなと思った。
私は天気予報を聞いて(今日の帰りは雨が降るな)と傘を持ってきていたので、「一緒に入ろう?」と傘を差し出した。
「い、いいよ」と照れながら断る彼が、なんだか可愛くて……
駅までの道、ちょっと緊張した。
相合傘というものを初めて体験したからというのもあるけど……
そして私は、その数日後……
ある事件をきっかけに行ったファミレスで、まさかの展開に唖然としてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
【完結】指先が触れる距離
山田森湖
恋愛
オフィスの隣の席に座る彼女、田中美咲。
必要最低限の会話しか交わさない同僚――そのはずなのに、いつしか彼女の小さな仕草や変化に心を奪われていく。
「おはようございます」の一言、資料を受け渡すときの指先の触れ合い、ふと香るシャンプーの匂い……。
手を伸ばせば届く距離なのに、簡単には踏み込めない関係。
近いようで遠い「隣の席」から始まる、ささやかで切ないオフィスラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる