ひろいひろわれ こいこわれ ~華燭~

九條 連

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第11章

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 呼吸すら奪われるような激しさに翻弄されるうち、秘部の入り口にあてがわれた指が、ツプリと内部への侵入を果たす。ビクッと身をふるわせた莉音は、眉根を寄せてヴィンセントにすがりついた。咄嗟に逃げかけた腰を素早く捕らえ、ヴィンセントはあやしながら挿入を深めていった。

「…………~~~~~っっっ……っ」

 縋りつく手に力がこもるが、ヴィンセントはそのままゆっくりと抜き挿しを繰り返す。緊張に硬張こわばる肉洞と秘蕾ひらいを、丹念にほぐしていった。入浴中に自分でも充分ほぐして準備をしたつもりだったが、ヴィンセントと自分では、指の長さも太さもまるで違う。その圧迫感に莉音は息を詰め、口唇を噛みしめた。

「莉音、痛むか?」

 あまりにも莉音が身を硬くしていたせいだろう。ヴィンセントが気遣うように尋ねた。
 耳もとで響いたその声は、情欲が滲んで低く掠れている。莉音は愛しい恋人を見やって、ふるふるとかぶりを振った。普段落ち着いて穏やかな彼が、自分への欲望を隠そうともしない。そのことが、たまらなく嬉しかった。

「だい、じょぶです。気持ち…ぃ……ッアァ……!」

 中を探っていた指先が、目当てのしこりを見つけ出してグッと押しこんでくる。莉音の腰は、途端に跳ねた。

「ヤッ、だめっ……そこ…っ――ヒァッ!」
 ふたたび逃げようとして、さらに強く刺激される。
「だめ? 本当に? 莉音が気持ちのいいところだろう?」
 耳もとで囁かれて、首筋と腰にゾワゾワとした感覚がはしり抜けた。莉音は縋りついていたヴィンセントのバスローブをきつく握りしめる。

「気持ち…けど、よすぎて変、なるからヤ……なのっ!」

 懸命に訴えるが、頭と舌がうまくまわらず、幼い子供がグズるような口調になってしまう。ヴィンセントは、それすら愛おしくてしかたがないとでもいうように莉音を抱き寄せ、よしよしとなだめた。

「莉音、大丈夫だ。こういうときはみんな変になる。莉音だけがおかしくなるわけじゃない」
「でも、僕ばっかり恥ずかしいの、イヤ、です」
 甘やかされているうちに気持ちがどんどん幼児退行したようになってしまい、莉音はベソベソと泣きながら訴えた。自分がどうして泣き出したのかすらも、よくわからなかった。ただヴィンセントによしよしと優しくあやしてもらえることが嬉しくて、もう本当に、小さな子供になってしまったような気分だった。

「いい子だ、莉音。大丈夫、一緒に気持ちよくなるだけだ。少しも恥ずかしくないし、莉音はどんなときでも、とても可愛い」
 涙を吸いとった口唇が、顔中にキスの雨を降らす。そうしてふたたび緊張が解けてきたタイミングで、後ろをほぐす指が少しずつ増やされていった。
 莉音はヴィンセントに縋りつきながら、身を委ねる。口から吐き出される息が次第に熱く、余裕のないものへと変わっていった。

「……んっ…ふ……っ、んんっ…ん………」

 指の動きに合わせて腰が揺れる。だが、入り口と内壁が充分にほぐれて馴染んでくると、数を増やされても指だけでは物足りなくなってきた。

「アルフ、さ……、も、ゆび、だい…じょうぶ」
 早く早くと切なさを持てあますようにせがむ莉音に、ヴィンセントは気遣わしげな様子を見せた。
「だが随分ひさしぶりになる。もう少し、ほぐしてからがいいと思うのだが」
「へ、きです。早くアルフさんのものに、なりたい」
 言った途端に強く抱き寄せられた。
「もうとっくになっている。そして私も、莉音のものだ」

 低く応えたヴィンセントは、ようやく指を引き抜くと莉音の足を大きく割り開いて、そのあいだに陣取った。バスローブのポケットから取り出したコンドームをくわえて封を切り、すでに臨戦態勢になっている己の剛直に手早く装着する。物欲しげに開閉しているだろうすぼまりに、その先端をあてがわれただけで期待に胸が高鳴った。
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