ひろいひろわれ こいこわれ ～華燭～

第11章

（５）

　圧倒的な質量を誇る熱杭が狭い入り口をこじ開け、内部へと侵入してくる。その凄まじい圧迫感に、莉音は歯を食いしばった。

「莉音……、莉音、ゆっくり息を吐いて」

　言われて従おうとはするものの、もうなにがなんだかわからない。気づけば恋人の逞しい雄蘂ゆうずいを、最奥まで呑みこんだ状態で果てていた。

「莉音、大丈夫か？」

　挿れられると同時に意識を飛ばしていたらしい。ふっと我に返った瞬間、ビクビクと身体が痙攣して、下腹部に重く痺れるような余韻がひろがっていることに気づく。その途端、己の内部に穿うがたれているものに絡みつくように媚肉が収縮し、莉音は喘いだ。

「あぁあ……んっ！」

　ヴィンセントもまた、強烈な締めつけに顔を歪め、息を詰める。そして、その締めつけに持っていかれることがないよう、わずかに腰を引いて身体の位置を調整しなおすと、ゆっくりと抽挿を開始した。
　最初はゆるやかに、けれども次第に強く、激しくなっていく。
　巧みな腰使いで内部を掻きまわされ、揺さぶられ、引き抜かれては泣きどころを的確に衝かれた。
　浅い部分をひたすら抜き挿しされていたかと思えば、深い部分までひと息に抉られる。正常位でさんざん攻め抜かれたあとは四つに這わされ、背後から一気に貫かれた。

「やっ、あああ――――――っ……！」

　弾ける快感。
　頭の中が真っ白になり、視界いっぱいに星が飛んだ。

　反射的に逃げを打つ腰はまたしても捕らえられ、引き戻されてそのまま猛々しい楔くさびの張り出した部分で執拗に前立腺をこすられた。上体は完全に突っ伏してしまい、尻だけを突き出すような恥ずかしい格好になる。そこに何度も腰を打ちつけられて、肌と肌がぶつかり合う音が室内に響いた。
　硬度と容積を増した怒張をより深く呑みこむため、熱を帯びた隘路あいろが蠕動ぜんどうし、締めつけを強くする。愛する人の欲望を受け入れた肉環は、抜き挿しされるたびにめくれ上がっては押しこまれ、淫らな音をたてつづけた。

「あっ、や…っ、だめっ、……それダメっ！」

　背後から激しく突かれながら前を扱かれて、莉音は身悶えた。もう、どこがどう気持ちいいのかもわからない。ただ好きな人と繋がれて、強く激しく求められていることがひたすら嬉しかった。
　嬉しくて幸せで、自分からもどこまでも貪欲に求めてしまう。イヤ、ダメと口では言いながら、全身が歓喜して夢中で恋人の要求に応えていた。
　叩きつけるような抽挿はさらに激しさを増し、媚肉をこじ開けて最奥を抉っていく。

「あ、やだっ……なんか変……っ！　変なの、キちゃうっ。アルフさ……っ、ダメッ、ダメ…っ！　ヤァアァァァアァァァ――――………………ッッ!!」

　嬌声を迸ほとばしらせた莉音は、背中を大きく仰のけ反らせて全身を痙攣させた。同時にヴィンセントもまた達したことが、締め上げた肉壁の感覚ではっきりとわかる。だがなぜか、たしかに達したはずの莉音の絶頂が治まらない。延々と持続する快感に、莉音は恐怖をおぼえた。

「やっ、なんで？　気持ちいいの、全然止まらな……。身体、変……っ。怖いっ！」
「莉音、大丈夫だ。落ち着いて。おそらく、ドライオーガズムというやつだ」
「ドラ……？」

　自分の身体に起こっている、これまで経験したことのない状態にパニックになりかけていた莉音は、耳慣れない言葉に理性を引き戻された。
　結合を解いたヴィンセントは、装着していたコンドームを処理すると、ふたたび向き合うように身体の位置を入れ替えて莉音の躰を正面から抱きしめた。そして、落ち着かせるように背中を叩く。

「いま、ほとんど同時に達したはずなのに、莉音のほうは射精を伴っていなかった。そういう場合、通常よりも強く長く、快感が持続するらしい」

　私のすべてを受け止めて、心から求めてくれた結果だとヴィンセントに言われ、莉音はその胸に顔をうずめた。
　背中を撫でられる感触すら気持ちがよすぎて、身体がビクビクと反応してしまう。だがもう、恐怖はなかった。