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「英雄のしつけかた」 3章 死神と呼ばれる少年
44. 祈るように 1
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ガラルドは一人で詰所の中をウロウロしていたが、ふと思い出したように母屋に行った。
大事なことを忘れるところだった。
玄関ホールで不安そうにサリが窓の外を見ているので、俺に付き合えと言って揺りイスとセットでサリを詰所に連れ込んだ。
驚くなよと前置きし、ミレーヌが消えたことを説明して、すまんと謝った。
サリは聡いし仕事にからむ相談も普通に日常からしていたので、細かな憶測も伝える。
今までのように商家の家政婦ではないのだ。
ガラルドの日常に近い特殊な立場の娘だから誘拐のようなちょっかいを出されたのだろうと、淡々と説明する。
買い物カゴを残したことを思えば、まだミレーヌに危害はくわえられていないはずだった。
さらうぐらいだから、しばらく殺めない。
だが、他に痕跡を残していない。
捜してみろと宣戦布告のようなものだ。
厄介な相手なのは間違いなかった。
それが東流派の精鋭軍を作ることを危惧した輩なのか。
ガラルドの隊の能力を見るためなのか。
剣豪個人に興味を持って誘っているのか。
情報が集まってからでないと判断できない。
他国の間者なら国際問題に発展するぞと思いながらも、ガラルドはサリの手を取った。
「サリ、心配をかけるが必ず探す」
「あの子はきっと大丈夫。あんたはいつものように、ドーンとかまえておいで。いい子たちじゃないか。あんたにできないことは、信じて任せることだよ。私と一緒に待ちましょうねぇ」
話の間はジッとガラルドを見ていたが、その頭をヨシヨシとサリはなでた。
「心配しなくてもいいんだよ? あんたは動けなくても、皆が探し出してくれるさ」
相変わらず耳ではなく心の声を聞いてるばあさんだと、ガラルドはポリポリと頭をかいた。
どんなに顔を作っても無駄だ。
ソワソワと浮足立っているのがバレバレだ。
それに誰も信用していないことまで見抜かれていた。
個々の腕を信頼してはいても、集団での行動はこれから作り上げていくしかない。
いくら同じ流派の剣士で自分の隊を作ると言っても、集まったばかりで付き合いも短い。
ガラルドを先頭に個性豊かな連中ばかりなので、本当にこの先は大丈夫か? と疑問を抱いていた。
能力的にただ一人だけ突出したせいもある。
彼らが奥義継承者を慕い敬う半分ほども、自分は彼らを信用していない。
どうせお前らも奥義継承者が欲しいだけだろうと、ちょっと歪んだ考え方をしていた。
それだけ奥義継承者は希少な存在なのだ。
ガラルドが誰にも相談せず気ままに行動してしまうのは、そういった背景があるとサリはとっくに気付いていた。
「バカな子だよ。そんなつまらない理由で、あんたみたいな面倒で手のかかる子に付き合うもんかい。みんな、一人でやってける子ばかりなんだからねぇ」
ペチペチと頬を叩かれて「そうなのか?」とガラルドはイスに座って寄り掛かった。
まぁ確かに。
敬われたり持ち上げられたりするのは、公式の場だけだ。
思い返し、ついついムッとする。
常日頃、バカにされたりどつかれたりすることがほとんどで、命令を出そうにも自分で判断をして今のように彼らは走り回っている。
留守番の指示を出されるなんて、立場が逆転して本当にふざけた話だ。
前の奥義継承者への扱いとまったく違う。
先代はサリとそう変わらないジジイだったし、自分はそれこそ若造と呼ばれる歳なのでその差だけだと思っていたが、根底から違うらしい。
大事なことを忘れるところだった。
玄関ホールで不安そうにサリが窓の外を見ているので、俺に付き合えと言って揺りイスとセットでサリを詰所に連れ込んだ。
驚くなよと前置きし、ミレーヌが消えたことを説明して、すまんと謝った。
サリは聡いし仕事にからむ相談も普通に日常からしていたので、細かな憶測も伝える。
今までのように商家の家政婦ではないのだ。
ガラルドの日常に近い特殊な立場の娘だから誘拐のようなちょっかいを出されたのだろうと、淡々と説明する。
買い物カゴを残したことを思えば、まだミレーヌに危害はくわえられていないはずだった。
さらうぐらいだから、しばらく殺めない。
だが、他に痕跡を残していない。
捜してみろと宣戦布告のようなものだ。
厄介な相手なのは間違いなかった。
それが東流派の精鋭軍を作ることを危惧した輩なのか。
ガラルドの隊の能力を見るためなのか。
剣豪個人に興味を持って誘っているのか。
情報が集まってからでないと判断できない。
他国の間者なら国際問題に発展するぞと思いながらも、ガラルドはサリの手を取った。
「サリ、心配をかけるが必ず探す」
「あの子はきっと大丈夫。あんたはいつものように、ドーンとかまえておいで。いい子たちじゃないか。あんたにできないことは、信じて任せることだよ。私と一緒に待ちましょうねぇ」
話の間はジッとガラルドを見ていたが、その頭をヨシヨシとサリはなでた。
「心配しなくてもいいんだよ? あんたは動けなくても、皆が探し出してくれるさ」
相変わらず耳ではなく心の声を聞いてるばあさんだと、ガラルドはポリポリと頭をかいた。
どんなに顔を作っても無駄だ。
ソワソワと浮足立っているのがバレバレだ。
それに誰も信用していないことまで見抜かれていた。
個々の腕を信頼してはいても、集団での行動はこれから作り上げていくしかない。
いくら同じ流派の剣士で自分の隊を作ると言っても、集まったばかりで付き合いも短い。
ガラルドを先頭に個性豊かな連中ばかりなので、本当にこの先は大丈夫か? と疑問を抱いていた。
能力的にただ一人だけ突出したせいもある。
彼らが奥義継承者を慕い敬う半分ほども、自分は彼らを信用していない。
どうせお前らも奥義継承者が欲しいだけだろうと、ちょっと歪んだ考え方をしていた。
それだけ奥義継承者は希少な存在なのだ。
ガラルドが誰にも相談せず気ままに行動してしまうのは、そういった背景があるとサリはとっくに気付いていた。
「バカな子だよ。そんなつまらない理由で、あんたみたいな面倒で手のかかる子に付き合うもんかい。みんな、一人でやってける子ばかりなんだからねぇ」
ペチペチと頬を叩かれて「そうなのか?」とガラルドはイスに座って寄り掛かった。
まぁ確かに。
敬われたり持ち上げられたりするのは、公式の場だけだ。
思い返し、ついついムッとする。
常日頃、バカにされたりどつかれたりすることがほとんどで、命令を出そうにも自分で判断をして今のように彼らは走り回っている。
留守番の指示を出されるなんて、立場が逆転して本当にふざけた話だ。
前の奥義継承者への扱いとまったく違う。
先代はサリとそう変わらないジジイだったし、自分はそれこそ若造と呼ばれる歳なのでその差だけだと思っていたが、根底から違うらしい。
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