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41 僕のものにする
しおりを挟むその全容を上から見て、ようやく手に入れた……という想いだった。
僕は仲の良い両親に愛されて育ち、同じ社宅で両親同士交流のある家庭に、五つ年下のかおりが産まれた時から、結婚したいと思っていた。必要な物は買ってもらっていたし、それ以上に物欲はなく、とにかく小さいかおりがかわいくてかわいくてたまらなかった。これまで大切に大切に見守ってきた。幼稚部からマリア様の学校に通っていたかおりに、結婚するまではキスだけと約束していた。ようやく、ここまで来た。綺麗だ。興奮するより感動して、その白い肌に指先で触れることすら躊躇われた。ずっと見ていたいくらいだ。
僕は経験がない。もちろん興味はあった。かおりとのあれこれを想像することさえ、今まで我慢していた。知識として知っていたこと、こうするのだろうということ、したいことを探るようにして試した。かおりは目を閉じていたが、いやがらず、僕がすることに対して僅かに表情を動かした。くすぐったそうな表情もしたし、恥ずかしがる表情もした。かわいくてかわいくてたまらなかった。僕は肌に指先を這わせながら、「かおり、愛してる」と何度となく囁いた。
きっと、本当は怖かっただろう。それでも、僕のことはこわくないと言って、にこっと笑ってみせたかおりが、愛しくて愛しくてたまらなかった。「愛してる」と囁く度に、安心するような表情になった。
何度目かの囁きに、いつしか……かおりの力が抜け、抱き心地が柔らかく変化していった。もう、その頃には自分の欲望が大きくなりすぎて、それを……早くどうにかしたかった。
女の子が潤うということがどういうことなのかは、かおりの体が教えてくれた。高めた方法は上手くいったようだ。指の周りに感じる温かい粘膜をもう一度ゆっくりと撫でた。後は痛みを感じることがないようにと祈った。
僕は、羽織っていたバスローブをゆっくりと肩から落とし、避妊具をつけた先端をそこに触れさせた。かおりの目が開いて僕を見た。指先ではない感触に驚いたのだろう。裸になった僕の姿にも……明らかに怯えていた。その表情さえ堪らなかった。大丈夫だから、逃げないでくれ。……少しだけ、温かい中に入った。お願いだ、拒まないでくれ。かおりの両手を握ってシーツに押さえつけた。僕はもう、かおりを安心させるために囁いてやることも、微笑んでみせることも出来なかった。余裕がなかったが、痛みがないようにとそれだけを願った。
奥に進むと同時に、かおりの目にみるみると涙が溢れ、閉じた目尻からこぼれ落ちていくのを見た。唇を噛み、声を出さずに悲痛な表情をした。ごめん、もう止まらない。止めてやれない。僕は、かおりの手を離してきつく抱きしめた。かおりも、僕にしがみついた。嬉しかった。かおりがこんなに強い力を持っていたことに驚いた。そして、一番奥に到達した。
初めて、ひとつになった。
僕は、溢れた涙を唇で受け止めた。
「かおり……痛くないか?……動いても、いい?」
僅かに頷いたようだ。少しずつ、ゆっくり動かすと、強張っていたかおりの体の力が抜けていき、目を閉じたまま穏やかな表情になった。大丈夫そうだ。しばらくそうしながら、頬や目蓋にキスをした。
「痛くない?」
僕は、もう一度聞いてみた。
「……く、ない……」
かおりは掠れた声を出し、ふるふると首を動かした。もう、やめられない。顎から首筋にかけて唇を這わせると、かおりが上を向いて仰反るような態勢になった。途端に、まるで絞られるようだった。豊かな胸が目の前で踊るように揺れ、視覚的にも堪らなかった。
まだ、していたいのに……。
かおりの裸を見たのも初めてだし、それだけでもすぐに破裂させてしまいそうだった。まだまだずっとこうしていたい。よさそうな表情を見ていたい。かおりのこんな顔は見たことがなかった。僕だけに見せてくれる表情、熱くなった体、しっとりとした肌、蕩けた場所……。かおりの可愛い顔も、白い胸も、今日から僕のものだ。今まで、ずっとずっと我慢していた。
「かおり、愛してる。愛してるよ」
肘をつき、かおりの頬を両手で包み、キスをした。かおりは目を閉じて、僕に縋りついた。かおりの短い呼吸を肌に感じる。耳からの刺激が腰にくる。堪らない。
もうダメだ。
「かおり、大丈夫?辛くなかった?」
本当は……僕もすぐに口もきけないくらいに消耗していたが、かおりが心配だった。かおりも、大きく息をしていた。唇が何か言おうとして震えていたが、聞き取れなかった。
「かおり、何?何て言った?もう一度言って」
普段ならば、こんな急かすように質問をすることはない。おとなしいかおりが、ますます答えられなくなる懸念があるからだ。でも、今は聞かずにはいられなかった。僕は注意深くかおりの口許を凝視した。
「……つらくない……しあわせ、だった」
驚いた。
幸せって……何てかわいいんだ。僕はもう一度かおりを優しく抱きしめた。
「よかった。……早く、僕を覚えて……」
僕が愛する行為を覚えて。僕に愛されることに慣れて。願わくば、僕の愛し方に幸せを感じてほしい。そして、かおりからも僕を求めてほしい。望むことはたくさんある。今日はこれだけでいい。僕はもう一度優しくキスをした。僕はバスローブを羽織り、くったりとしたかおりにネグリジェを着せ、抱きしめて眠った。腕の中にかおりを抱いて眠れるなんて……僕こそ、幸せで幸せでたまらなかった。
僕の思惑通り、それからの数日間は何者にも邪魔されずに二人で過ごした。それは、最高に幸せな日々だった。
最初は僕が求める素振りをすると、かおりは想像以上に恥ずかしがった。嫌ということではなく、驚いていたようだった。「またするの?」とでも言いたげだった。やんわり問うと、何故かその行為をするのは月に一回程度のことだと思っていたらしい。かおりが無知なのは知っていたが、意外な思考に何と返すか迷った。ついに、かおりの方から「あの、いつ?……月に、何回くらいするの?」と聞いてきた。まぁ、可愛いものだ。
「月に何回かって?決まってない。夫が求める時に。もちろん、かおりから求めてくれてもいい。生理の時は無理にしないからそう言って。僕も出さないと大変なことになるから。結婚したからには、かおりも協力して」
からかい混じりに本音を伝えた時の、かおりの驚いた表情……可愛かったし、楽しくて堪らなかった。それ以来、僕がベッドからでもソファーからでも、見つめながら両手を広げて「おいで」と言えば、かおりは恥ずかしがりながらも、僕に体を寄せて目を伏せながら差し出すようになった。夜だけでなく、夕方でも、昼間でも。朝はもともと腕の中だ。順調で、怖いくらいだった。
僕の望む通り、かおりはその行為を覚えた。長くピアノの生徒だったこともあり、何でも言うことを聞いた。もともと純粋で素直な性質だ。僕のために、おそらく恥ずかしいことを一生懸命に頑張るかおりは可愛かった。苛める趣味は毛頭ない。僕は愛情が伝わるよう、優しく教え、ゆっくり柔らかいキスをたくさんして、ひとつになると「愛してる」と囁いた。愛しあう行為を嫌がらずに覚えてくれたのはよかった。幼稚部からずっと女子校育ちで男に免疫がない為、密かに心配していたのだが、杞憂だった。
ある時など、かおりを立たせたまま、時間をかけて執拗に高めていたら、泣きそうになり、「先生……もう……たれちゃう」と言い、僕の理性を飛ばしてくれたこともあった。おとなしくてほとんどしゃべらないのに、たまにそんな発言をして僕をハラハラさせた。他所で何もしゃべってくれるなと思ってしまう。
新婚旅行は予定していなかったが、何気ない日常が本当に幸せな日々だった。
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