初恋*幼なじみ~歪に絡み合う想いの四重奏~

美和優希

文字の大きさ
24 / 61
*第3章*

“好き”の方程式(1)

しおりを挟む
 冬休みが近づきつつある、放課後。

 一通り日直の仕事をやり終えた真理恵から、明るい声がかかる。


「未夢、お待たせ! じゃあ、行こっか!」

「うん」


 私はそれを合図に、通学用のカバンを手に取って、真理恵と一緒に教室を出た。


 もうすぐクリスマスということから、今日はこれから街に真理恵とプレゼントを見に行くことにしたんだ。


 クリスマスは、以前真理恵が提案していたダブルデートの予定だ。

 ダブルデートと言うと、何だか聞きなれない言葉で落ち着かない。

 けれど、改めて考えてみたら、毎年四人で私の家でパーティーをしていたから、クリスマスを四人で過ごすんだと思えばあまり今までと大きく変わらないようにも思える。


 当日は、近場のテーマパークに四人で行こうか、という話になっている。

 最近は、めっきり四人で集まることも減ってきていたから、実は結構楽しみなんだ。


「そういや、健との初デートはどうだったの? 水族館に行ったとは聞いてたけど、なんだかんだ言って、詳しく聞いてなかったなって思って」

「え!? あ、良かったよ。改装したとは聞いてたけど、結構昔の面影が残ってて懐かしかった」

「それは私も和人と行ったときに思った。やっぱり面影が残ってる方がいいよね」


 そういえば、真理恵と和人の初デートも水族館だったんだよね。

 健と一緒に水族館に行ってからは、不思議とそのことで気にやむことが減った。

 水族館と聞いて連想して思い出すことも、健との初デートの思い出だ。


「健って見るからに未夢にベタ惚れって感じだけどさ、やっぱり二人きりだと未夢に甘いの?」

「え、ど、どうなんだろう? わかんないや……」


 確かに健は私にすごく優しくしてくれるし、恋人繋ぎで手を繋いだり、抱きしめられたりもしたけれど、それが甘いのかどうかはよくわからない。

 恋愛初心者の私には、難しい質問だ。


 でも、少なくともすごく大切に想ってくれてるってことは、痛いくらいに伝わってきている。

 これで、私が健のことを恋人として好きになれたら、本当にこれ以上のことはないだろうと思う。


「え~何それ、気になるなぁ。健って、手早そうだし、もうキスもしちゃってたりする?」

「え!? キ、キスっ!?」


 真理恵の口から思わぬ言葉が出て、驚きのあまり私の声は裏返ってしまった。

 同時に、自分の口から発せられた言葉の意味を理解して、顔中が一気に熱くなる。


「その反応はまだしてないのね~。未夢、わかりやすくていいわぁ~」


 わたわたと慌てふためく私を見て、真理恵はどこか達観したようにウンウンとうなずく。



「真理恵は、もしかしてしたの……?」

 意識しないようにしても、自然と真理恵の程よい厚さの唇に目がいってしまう。


「うん……」


 さっきまでのサバサバとした雰囲気とはうってかわって、真理恵は少し照れたようにうなずいた。


 以前真理恵が和人と付き合い始めたっていう日、真理恵が和人の頬にキスをしてたんだし、もう唇にも済ませちゃっててもおかしくない。

 ちょっと考えれば容易に想像ついたはずなのに、胸が痛い……。

 そもそも私に胸を痛める権利も何もない。
 真理恵だって私が聞いたからこたえてくれたようなものだし、何より私は健と付き合っているというのだから。


 複雑な心境が顔に出てしまっていたのか、真理恵は私のそんな様子を見て、まだ健とキスをしてないことを気にしているのだと捉えたらしい。


「あ、でもこういうのって、人それぞれみたいだし、早いとか遅いとかはないと思うよ!」

「そうだね」


 とりあえず真理恵に本当のことを気づかれなくて良かったけれど、気持ちはすっかり沈んでしまった。


 さすがにいつまでも浮かない顔をしていたら余計に真理恵を心配させてしまうだけだから、そんな感情とは裏腹に私は精一杯笑顔を浮かべて見せた。



 真理恵と来たのは、街なかにある百貨店のメンズ服のコーナーだ。

 真理恵は和人に毛糸の帽子をプレゼントしようと考えてるそうだ。

 帽子が置いてあるコーナーには、シンプルなものから派手なカラーのものまで、多種多様に取り揃えられている。
 


「わぁ、すごい! こんなに種類あると目移りしちゃうね!」

「和人は結構大人っぽいシックなデザインの服が多いから、これが似合いそうかな~?」


 だけど、そんな中でも、迷うことなく真理恵はひとつの帽子を手に取った。


 縄編みがオシャレに入った黒のキャスケット。

 サイドには、ワンポイントにデザインされたボタンがついている。


「ほんとだ、確かに和人に似合いそう……」

「でしょ? じゃあ、これに決めた」


 こんなにたくさんデザインがあるのに、ピンポイントで和人に似合いそうなものを選び出してしまう真理恵。

 それだけ、いつも和人のことを見てるっていうことなんだと思う。


 私が全く和人のことを見てないわけではないけれど、私だったら、絶対こんなに早くに決められないもん。


 そんなことで競っても仕方ないのに、そもそも私は和人のじゃなくて健のクリスマスプレゼントを選びに来ているはずなのに、余計なことを考えて真理恵には敵わないな、って胸が苦しくなった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛するということ

緒方宗谷
恋愛
幼馴染みを想う有紀子と陸の物語

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

隣の夫婦 ~離婚する、離婚しない、身近な夫婦の話

紫ゆかり
恋愛
オムニバス形式です。 理解し合って結婚したはずの梓、同級生との再会が思わぬことになる雅美、年下の夫のかつての妻に引け目を感じる千晴、昔の恋の後悔から前向きになれない志織。 大人の女性のストーリーです。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...