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*第3章*
“好き”の方程式(1)
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冬休みが近づきつつある、放課後。
一通り日直の仕事をやり終えた真理恵から、明るい声がかかる。
「未夢、お待たせ! じゃあ、行こっか!」
「うん」
私はそれを合図に、通学用のカバンを手に取って、真理恵と一緒に教室を出た。
もうすぐクリスマスということから、今日はこれから街に真理恵とプレゼントを見に行くことにしたんだ。
クリスマスは、以前真理恵が提案していたダブルデートの予定だ。
ダブルデートと言うと、何だか聞きなれない言葉で落ち着かない。
けれど、改めて考えてみたら、毎年四人で私の家でパーティーをしていたから、クリスマスを四人で過ごすんだと思えばあまり今までと大きく変わらないようにも思える。
当日は、近場のテーマパークに四人で行こうか、という話になっている。
最近は、めっきり四人で集まることも減ってきていたから、実は結構楽しみなんだ。
「そういや、健との初デートはどうだったの? 水族館に行ったとは聞いてたけど、なんだかんだ言って、詳しく聞いてなかったなって思って」
「え!? あ、良かったよ。改装したとは聞いてたけど、結構昔の面影が残ってて懐かしかった」
「それは私も和人と行ったときに思った。やっぱり面影が残ってる方がいいよね」
そういえば、真理恵と和人の初デートも水族館だったんだよね。
健と一緒に水族館に行ってからは、不思議とそのことで気にやむことが減った。
水族館と聞いて連想して思い出すことも、健との初デートの思い出だ。
「健って見るからに未夢にベタ惚れって感じだけどさ、やっぱり二人きりだと未夢に甘いの?」
「え、ど、どうなんだろう? わかんないや……」
確かに健は私にすごく優しくしてくれるし、恋人繋ぎで手を繋いだり、抱きしめられたりもしたけれど、それが甘いのかどうかはよくわからない。
恋愛初心者の私には、難しい質問だ。
でも、少なくともすごく大切に想ってくれてるってことは、痛いくらいに伝わってきている。
これで、私が健のことを恋人として好きになれたら、本当にこれ以上のことはないだろうと思う。
「え~何それ、気になるなぁ。健って、手早そうだし、もうキスもしちゃってたりする?」
「え!? キ、キスっ!?」
真理恵の口から思わぬ言葉が出て、驚きのあまり私の声は裏返ってしまった。
同時に、自分の口から発せられた言葉の意味を理解して、顔中が一気に熱くなる。
「その反応はまだしてないのね~。未夢、わかりやすくていいわぁ~」
わたわたと慌てふためく私を見て、真理恵はどこか達観したようにウンウンとうなずく。
「真理恵は、もしかしてしたの……?」
意識しないようにしても、自然と真理恵の程よい厚さの唇に目がいってしまう。
「うん……」
さっきまでのサバサバとした雰囲気とはうってかわって、真理恵は少し照れたようにうなずいた。
以前真理恵が和人と付き合い始めたっていう日、真理恵が和人の頬にキスをしてたんだし、もう唇にも済ませちゃっててもおかしくない。
ちょっと考えれば容易に想像ついたはずなのに、胸が痛い……。
そもそも私に胸を痛める権利も何もない。
真理恵だって私が聞いたからこたえてくれたようなものだし、何より私は健と付き合っているというのだから。
複雑な心境が顔に出てしまっていたのか、真理恵は私のそんな様子を見て、まだ健とキスをしてないことを気にしているのだと捉えたらしい。
「あ、でもこういうのって、人それぞれみたいだし、早いとか遅いとかはないと思うよ!」
「そうだね」
とりあえず真理恵に本当のことを気づかれなくて良かったけれど、気持ちはすっかり沈んでしまった。
さすがにいつまでも浮かない顔をしていたら余計に真理恵を心配させてしまうだけだから、そんな感情とは裏腹に私は精一杯笑顔を浮かべて見せた。
真理恵と来たのは、街なかにある百貨店のメンズ服のコーナーだ。
真理恵は和人に毛糸の帽子をプレゼントしようと考えてるそうだ。
帽子が置いてあるコーナーには、シンプルなものから派手なカラーのものまで、多種多様に取り揃えられている。
「わぁ、すごい! こんなに種類あると目移りしちゃうね!」
「和人は結構大人っぽいシックなデザインの服が多いから、これが似合いそうかな~?」
だけど、そんな中でも、迷うことなく真理恵はひとつの帽子を手に取った。
縄編みがオシャレに入った黒のキャスケット。
サイドには、ワンポイントにデザインされたボタンがついている。
「ほんとだ、確かに和人に似合いそう……」
「でしょ? じゃあ、これに決めた」
こんなにたくさんデザインがあるのに、ピンポイントで和人に似合いそうなものを選び出してしまう真理恵。
それだけ、いつも和人のことを見てるっていうことなんだと思う。
私が全く和人のことを見てないわけではないけれど、私だったら、絶対こんなに早くに決められないもん。
そんなことで競っても仕方ないのに、そもそも私は和人のじゃなくて健のクリスマスプレゼントを選びに来ているはずなのに、余計なことを考えて真理恵には敵わないな、って胸が苦しくなった。
一通り日直の仕事をやり終えた真理恵から、明るい声がかかる。
「未夢、お待たせ! じゃあ、行こっか!」
「うん」
私はそれを合図に、通学用のカバンを手に取って、真理恵と一緒に教室を出た。
もうすぐクリスマスということから、今日はこれから街に真理恵とプレゼントを見に行くことにしたんだ。
クリスマスは、以前真理恵が提案していたダブルデートの予定だ。
ダブルデートと言うと、何だか聞きなれない言葉で落ち着かない。
けれど、改めて考えてみたら、毎年四人で私の家でパーティーをしていたから、クリスマスを四人で過ごすんだと思えばあまり今までと大きく変わらないようにも思える。
当日は、近場のテーマパークに四人で行こうか、という話になっている。
最近は、めっきり四人で集まることも減ってきていたから、実は結構楽しみなんだ。
「そういや、健との初デートはどうだったの? 水族館に行ったとは聞いてたけど、なんだかんだ言って、詳しく聞いてなかったなって思って」
「え!? あ、良かったよ。改装したとは聞いてたけど、結構昔の面影が残ってて懐かしかった」
「それは私も和人と行ったときに思った。やっぱり面影が残ってる方がいいよね」
そういえば、真理恵と和人の初デートも水族館だったんだよね。
健と一緒に水族館に行ってからは、不思議とそのことで気にやむことが減った。
水族館と聞いて連想して思い出すことも、健との初デートの思い出だ。
「健って見るからに未夢にベタ惚れって感じだけどさ、やっぱり二人きりだと未夢に甘いの?」
「え、ど、どうなんだろう? わかんないや……」
確かに健は私にすごく優しくしてくれるし、恋人繋ぎで手を繋いだり、抱きしめられたりもしたけれど、それが甘いのかどうかはよくわからない。
恋愛初心者の私には、難しい質問だ。
でも、少なくともすごく大切に想ってくれてるってことは、痛いくらいに伝わってきている。
これで、私が健のことを恋人として好きになれたら、本当にこれ以上のことはないだろうと思う。
「え~何それ、気になるなぁ。健って、手早そうだし、もうキスもしちゃってたりする?」
「え!? キ、キスっ!?」
真理恵の口から思わぬ言葉が出て、驚きのあまり私の声は裏返ってしまった。
同時に、自分の口から発せられた言葉の意味を理解して、顔中が一気に熱くなる。
「その反応はまだしてないのね~。未夢、わかりやすくていいわぁ~」
わたわたと慌てふためく私を見て、真理恵はどこか達観したようにウンウンとうなずく。
「真理恵は、もしかしてしたの……?」
意識しないようにしても、自然と真理恵の程よい厚さの唇に目がいってしまう。
「うん……」
さっきまでのサバサバとした雰囲気とはうってかわって、真理恵は少し照れたようにうなずいた。
以前真理恵が和人と付き合い始めたっていう日、真理恵が和人の頬にキスをしてたんだし、もう唇にも済ませちゃっててもおかしくない。
ちょっと考えれば容易に想像ついたはずなのに、胸が痛い……。
そもそも私に胸を痛める権利も何もない。
真理恵だって私が聞いたからこたえてくれたようなものだし、何より私は健と付き合っているというのだから。
複雑な心境が顔に出てしまっていたのか、真理恵は私のそんな様子を見て、まだ健とキスをしてないことを気にしているのだと捉えたらしい。
「あ、でもこういうのって、人それぞれみたいだし、早いとか遅いとかはないと思うよ!」
「そうだね」
とりあえず真理恵に本当のことを気づかれなくて良かったけれど、気持ちはすっかり沈んでしまった。
さすがにいつまでも浮かない顔をしていたら余計に真理恵を心配させてしまうだけだから、そんな感情とは裏腹に私は精一杯笑顔を浮かべて見せた。
真理恵と来たのは、街なかにある百貨店のメンズ服のコーナーだ。
真理恵は和人に毛糸の帽子をプレゼントしようと考えてるそうだ。
帽子が置いてあるコーナーには、シンプルなものから派手なカラーのものまで、多種多様に取り揃えられている。
「わぁ、すごい! こんなに種類あると目移りしちゃうね!」
「和人は結構大人っぽいシックなデザインの服が多いから、これが似合いそうかな~?」
だけど、そんな中でも、迷うことなく真理恵はひとつの帽子を手に取った。
縄編みがオシャレに入った黒のキャスケット。
サイドには、ワンポイントにデザインされたボタンがついている。
「ほんとだ、確かに和人に似合いそう……」
「でしょ? じゃあ、これに決めた」
こんなにたくさんデザインがあるのに、ピンポイントで和人に似合いそうなものを選び出してしまう真理恵。
それだけ、いつも和人のことを見てるっていうことなんだと思う。
私が全く和人のことを見てないわけではないけれど、私だったら、絶対こんなに早くに決められないもん。
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