【短編集２】恋のかけらたち

「不器用なサプライズ」

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　駅の近くのロータリーのところで千佳と話していたことから、いつもは行き交う人の視線が気になってこんなことできないのに、今日はそれさえ気にならなかった。


「あ、あの……っ」

「本当は驚かせたかっただけなのに、嫌な気持ちにさせてごめんな」

「もういいから……っ!?」


　千佳の言葉を遮るように唇を重ねると、さっきまで不安そうにしていた彼女の表情はどこか安心したようなものに変わっていた。


「これも、もう渡しておくね」

　鞄から取り出して差し出したのは、ピンクのリボンのついた小さな白い箱だ。

　中には、キラキラと輝くチョーカーが収められている。


「嬉しい、ありがとう。これ、私からも」

　千佳から渡された紙袋の中を覗いて手に取ると、中身は茶色い毛糸で編まれたマフラーだった。


「それ、私が編んだの。もう、春になっちゃうけど……」

「え、千佳が？」

「編もうと決めたのが真冬だったから何も気にしてなかったけど、まだ厳しい寒さの日があるとはいってももう三月の頭だし季節外れだよね……」

　千佳は少し申し訳なさそうに眉を下げてこちらを見るけれど、季節なんて関係ない。