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「クリスマス・ロマンス」
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キラキラとネオン輝く街並み。
こんな夜に雪でも降ればなぁ……、だなんて思ってしまう。
今日は、クリスマスイブ。
行き交う人々は、カップルや家族、友達同士で歩く人たちが多く、いつもより賑わいを増して見える。
仕事が終わったばかりの私も、例外なく真っ先に待ち合わせの駅に走るひとりだ。
今夜は、大学の頃から付き合って五年の彼氏の和哉と、久しぶりに会えるのだ。
和哉は、今年四月から遠くの県に転勤になって、一度も会えない月もあった。
電話とメールで連絡を取るのが精一杯。
最近は年末が近いのもあり、私も和哉も仕事が立て込んでて、それすらも減っていた。
クリスマスも半ばあきらめ気味だったけれど、和哉が都合をつけてくれて、なんとか夜だけ一緒に過ごせることになったんだ。
とはいえ、和哉は、明日の朝一の飛行機で戻らないといけないらしい。
だけど、そんな僅かな時間でも一緒に居られるのが嬉しくて、思わず顔がほころぶ。
待ち合わせの駅に着き、夜空に瞬く星屑を見上げる。
すると、突然ぎゅうっと背後から大きな両腕に包み込まれた。
「……えっ!?」
驚いた声を上げて私が振り向くのと同時に耳元で響く、大好きな低い声。
「莉子、久しぶりだな!」
「わわっ、和哉!?」
思いがけない和哉の登場にグッと目を見開く私を見て、和哉はククッと笑う。
そして、和哉はふわりと私の手を取って指を絡めた。
「じゃあ、行こうか」
向かう先は、街なかのちょっとオシャレなホテルのレストランだ。
料理が美味しいと評判のバイキング形式のディナーを食べに行こうという話になっている。
以前私が一度食べてみたいなぁって言ったのを、和哉は覚えていてくれたんだ。
レストランの入ったホテルは、客室から綺麗な夜景を見渡せてロマンチックなムードを楽しめる、ということでも有名だ。
和哉はこのホテルの最上階の部屋も取ったんだと、事前に電話で伝えてくれていた。
聖なる夜に予約なんて取れたんだって驚いたけれど、どうやら和哉は、まだ私と都合がつくか分からない半年以上前から、今年のクリスマスデートを考えてくれていたらしい。
年末年始の予定はどうだ、とか、年明けはいつ頃会えそうか、とか、たわいない話をしながら歩みを進める。
そして、次第に見えてきた、ホテルのイルミネーションに胸が躍った。
「わあぁっ!!」
クリスマスらしく、入口の傍に立つ木は電飾が施され、ホテルの建物もライトアップされて幻想的な空気を漂わせている。
予約の名前を告げて、ホテル内の目的のレストランに通された。
数々のバイキングの料理に目を奪われる。
その中には、クリスマスらしくチキンも並んでいて、デザートのコーナーにも、可愛くデザインされたミニケーキもたくさん盛り付けられていた。
「わぁ!! どれから食べようか迷っちゃう……」
「そうだな。時間はいっぱいあるし、お腹いっぱい食べたらいいよ」
「うん!」
色気より食い気な私の返事に、和哉はおかしそうに笑う。
「あはは。莉子は相変わらず変わらないね」
「何よ、悪かったわね」
フイッとそっぽ向くも、和哉にふわりと抱き寄せられる。
「……でも、そういうところも好き」
小さく囁かれる言葉に、ぶわっと顔が熱くなる。
和哉はそんな私を見て柔らかい笑みを浮かべて私を離した。
「好きなの取っておいで」
野菜にスープにチキンに数々の料理を一通り食べて、私の中で一番のメインのデザートに移る。
「ほんと莉子ってよく食べるよね」
私のお皿にこんもり乗った一口サイズのケーキを見て和哉が言う。
「これが生クリームで、これがモンブランで、これが抹茶で……」
「あー、説明はいいから」
「えへへ」
バイキングのケーキは全種類制覇したい派の私は、八種類くらいのミニケーキを前に、ニコニコと笑みを浮かべる。
目の前の和哉はというと、クリスマス限定のミニケーキをひとつと、ブラックコーヒーを取って来ていた。
「でも、莉子っぽくていいと思う。元気そうで良かったよ」
「和哉も元気そうで何よりだよ。今日は忙しい中ありがとう」
「礼を言われるようなことは何もないよ。いつも寂しい思いさせてごめんな」
「ううん。大丈夫」
確かに寂しいことも多いけど、和哉が忙しい中でも私と会うための時間を作ってくれるだけでも嬉しいから……。
そんな意味を込めて力強く笑うと、和哉も柔らかい笑みを返してくれた。
こんな夜に雪でも降ればなぁ……、だなんて思ってしまう。
今日は、クリスマスイブ。
行き交う人々は、カップルや家族、友達同士で歩く人たちが多く、いつもより賑わいを増して見える。
仕事が終わったばかりの私も、例外なく真っ先に待ち合わせの駅に走るひとりだ。
今夜は、大学の頃から付き合って五年の彼氏の和哉と、久しぶりに会えるのだ。
和哉は、今年四月から遠くの県に転勤になって、一度も会えない月もあった。
電話とメールで連絡を取るのが精一杯。
最近は年末が近いのもあり、私も和哉も仕事が立て込んでて、それすらも減っていた。
クリスマスも半ばあきらめ気味だったけれど、和哉が都合をつけてくれて、なんとか夜だけ一緒に過ごせることになったんだ。
とはいえ、和哉は、明日の朝一の飛行機で戻らないといけないらしい。
だけど、そんな僅かな時間でも一緒に居られるのが嬉しくて、思わず顔がほころぶ。
待ち合わせの駅に着き、夜空に瞬く星屑を見上げる。
すると、突然ぎゅうっと背後から大きな両腕に包み込まれた。
「……えっ!?」
驚いた声を上げて私が振り向くのと同時に耳元で響く、大好きな低い声。
「莉子、久しぶりだな!」
「わわっ、和哉!?」
思いがけない和哉の登場にグッと目を見開く私を見て、和哉はククッと笑う。
そして、和哉はふわりと私の手を取って指を絡めた。
「じゃあ、行こうか」
向かう先は、街なかのちょっとオシャレなホテルのレストランだ。
料理が美味しいと評判のバイキング形式のディナーを食べに行こうという話になっている。
以前私が一度食べてみたいなぁって言ったのを、和哉は覚えていてくれたんだ。
レストランの入ったホテルは、客室から綺麗な夜景を見渡せてロマンチックなムードを楽しめる、ということでも有名だ。
和哉はこのホテルの最上階の部屋も取ったんだと、事前に電話で伝えてくれていた。
聖なる夜に予約なんて取れたんだって驚いたけれど、どうやら和哉は、まだ私と都合がつくか分からない半年以上前から、今年のクリスマスデートを考えてくれていたらしい。
年末年始の予定はどうだ、とか、年明けはいつ頃会えそうか、とか、たわいない話をしながら歩みを進める。
そして、次第に見えてきた、ホテルのイルミネーションに胸が躍った。
「わあぁっ!!」
クリスマスらしく、入口の傍に立つ木は電飾が施され、ホテルの建物もライトアップされて幻想的な空気を漂わせている。
予約の名前を告げて、ホテル内の目的のレストランに通された。
数々のバイキングの料理に目を奪われる。
その中には、クリスマスらしくチキンも並んでいて、デザートのコーナーにも、可愛くデザインされたミニケーキもたくさん盛り付けられていた。
「わぁ!! どれから食べようか迷っちゃう……」
「そうだな。時間はいっぱいあるし、お腹いっぱい食べたらいいよ」
「うん!」
色気より食い気な私の返事に、和哉はおかしそうに笑う。
「あはは。莉子は相変わらず変わらないね」
「何よ、悪かったわね」
フイッとそっぽ向くも、和哉にふわりと抱き寄せられる。
「……でも、そういうところも好き」
小さく囁かれる言葉に、ぶわっと顔が熱くなる。
和哉はそんな私を見て柔らかい笑みを浮かべて私を離した。
「好きなの取っておいで」
野菜にスープにチキンに数々の料理を一通り食べて、私の中で一番のメインのデザートに移る。
「ほんと莉子ってよく食べるよね」
私のお皿にこんもり乗った一口サイズのケーキを見て和哉が言う。
「これが生クリームで、これがモンブランで、これが抹茶で……」
「あー、説明はいいから」
「えへへ」
バイキングのケーキは全種類制覇したい派の私は、八種類くらいのミニケーキを前に、ニコニコと笑みを浮かべる。
目の前の和哉はというと、クリスマス限定のミニケーキをひとつと、ブラックコーヒーを取って来ていた。
「でも、莉子っぽくていいと思う。元気そうで良かったよ」
「和哉も元気そうで何よりだよ。今日は忙しい中ありがとう」
「礼を言われるようなことは何もないよ。いつも寂しい思いさせてごめんな」
「ううん。大丈夫」
確かに寂しいことも多いけど、和哉が忙しい中でも私と会うための時間を作ってくれるだけでも嬉しいから……。
そんな意味を込めて力強く笑うと、和哉も柔らかい笑みを返してくれた。
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