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「幼なじみとあたしの境界線」
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「……ただの幼なじみなんかじゃねーよ」
視界に映る、先程よりも潤いを増した形の良い唇が、小さく動く。
「っていうか俺、綾那のことただの幼なじみだなんて思ったこと、一度もねーし」
千尋の言ってることが分からない。
まさかあたし、千尋に幼なじみとすら思われてなかった……?
あたしが不安に押し潰されそうになりながら、揺れる千尋の瞳を見上げると、千尋はグッと眉を寄せてあたしに言った。
「だから、綾那が好きだっつってんの! お前のことずっとそういう目で見てきたんだ。いい加減気づけよ!」
「え……、ホント、に……?」
「こんなことで嘘ついて、どうすんだよ」
「だって……」
はらはらと頬を伝う涙。
だってあたし、千尋にそんな風に見られてただなんて、全然分からなかったんだもん……。
「……お前も、俺のこと好きなんだよな?」
「……へ?」
「へ? じゃねーよ。さっき綾那が言ってたんじゃん」
どこか不安げに揺れる千尋の瞳。
「うん……。大好……っ!?」
あたしが千尋の目を見て“大好き”と言い終える前に、再び壁に押さえつけられて、あたしの唇は千尋のそれに覆われていた。
「……ちょっ、千尋……っ」
やっと唇を離してくれた千尋。
そして次の瞬間、あたしは千尋の大きな腕にぎゅうっと抱きしめられた。
「お前、その顔でそのセリフ、反則だから……」
「え……?」
「いくら俺でも、気持ち抑えられなくなりそう……」
えぇえーっ!?
千尋ってこんな甘いセリフ言うようなキャラだっけ……?
「でも……、」
ドキドキうるさい胸の音に、掻き消されそうなくらいに小さく聞こえた千尋の声に顔を上げる。
「これで、もう新庄みたいな奴が綾那に寄る心配は要らねーな」
間近でニッと綺麗に笑う千尋に、あたしまで思わず笑みがこぼれる。
「これからは、俺が綾那を守るから、覚悟しとけよ?」
「……うん」
“俺が綾那を守る”
その言葉を、何度も頭に反芻させていると、一変して不機嫌そうな声が頭上で響く。
「でも、綾那が何度もあいつに抱き着かせてたのが気に入らねぇ。どんだけ俺がイライラしたと思ってんだよ」
「……え?」
千尋、イライラしてたの?
あたしが新庄くんに抱き着かれる度に……?
「罰として、キスの刑だ」
フンと鼻を鳴らして悪魔のように笑う千尋。
「え、え、え……?」
「これからも、俺を怒らせたらこうなるからな?」
そこまで言い終えると、あたしの口元に近づいた唇は、再びあたしの唇を奪った。
でも、こんな罰ならいいかもなんて思ってしまうあたしは、きっともう、彼から離れられない。
*幼なじみとあたしの境界線*
*END*
視界に映る、先程よりも潤いを増した形の良い唇が、小さく動く。
「っていうか俺、綾那のことただの幼なじみだなんて思ったこと、一度もねーし」
千尋の言ってることが分からない。
まさかあたし、千尋に幼なじみとすら思われてなかった……?
あたしが不安に押し潰されそうになりながら、揺れる千尋の瞳を見上げると、千尋はグッと眉を寄せてあたしに言った。
「だから、綾那が好きだっつってんの! お前のことずっとそういう目で見てきたんだ。いい加減気づけよ!」
「え……、ホント、に……?」
「こんなことで嘘ついて、どうすんだよ」
「だって……」
はらはらと頬を伝う涙。
だってあたし、千尋にそんな風に見られてただなんて、全然分からなかったんだもん……。
「……お前も、俺のこと好きなんだよな?」
「……へ?」
「へ? じゃねーよ。さっき綾那が言ってたんじゃん」
どこか不安げに揺れる千尋の瞳。
「うん……。大好……っ!?」
あたしが千尋の目を見て“大好き”と言い終える前に、再び壁に押さえつけられて、あたしの唇は千尋のそれに覆われていた。
「……ちょっ、千尋……っ」
やっと唇を離してくれた千尋。
そして次の瞬間、あたしは千尋の大きな腕にぎゅうっと抱きしめられた。
「お前、その顔でそのセリフ、反則だから……」
「え……?」
「いくら俺でも、気持ち抑えられなくなりそう……」
えぇえーっ!?
千尋ってこんな甘いセリフ言うようなキャラだっけ……?
「でも……、」
ドキドキうるさい胸の音に、掻き消されそうなくらいに小さく聞こえた千尋の声に顔を上げる。
「これで、もう新庄みたいな奴が綾那に寄る心配は要らねーな」
間近でニッと綺麗に笑う千尋に、あたしまで思わず笑みがこぼれる。
「これからは、俺が綾那を守るから、覚悟しとけよ?」
「……うん」
“俺が綾那を守る”
その言葉を、何度も頭に反芻させていると、一変して不機嫌そうな声が頭上で響く。
「でも、綾那が何度もあいつに抱き着かせてたのが気に入らねぇ。どんだけ俺がイライラしたと思ってんだよ」
「……え?」
千尋、イライラしてたの?
あたしが新庄くんに抱き着かれる度に……?
「罰として、キスの刑だ」
フンと鼻を鳴らして悪魔のように笑う千尋。
「え、え、え……?」
「これからも、俺を怒らせたらこうなるからな?」
そこまで言い終えると、あたしの口元に近づいた唇は、再びあたしの唇を奪った。
でも、こんな罰ならいいかもなんて思ってしまうあたしは、きっともう、彼から離れられない。
*幼なじみとあたしの境界線*
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