きみと最初で最後の奇妙な共同生活

美和優希

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6.選び出したこたえ

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 その理由は、次の美也子の言葉で明らかになった。

「そう? 健太郎くんが亡くなった日、千夏、畑中先輩のことで健太郎くんと揉めてたからちょっと心配してたんだよ」


 美也子は、あの健太郎が亡くなる直前の私と健太郎の会話を心配していてくれたんだ。


「そうだったら仕返しに畑中先輩と付き合って、ラブラブなところを見せつけてやるって」

「なんだか千夏らしいね。じゃあ何で? 他に好きな人でもできたの?」

「そういうわけじゃないんだけど、ね」

「何それ。最近千夏、付き合い悪いし、やけに独り言も増えたし、ちょっと心配」


 純粋に心配そうな目を向ける美也子に、私は何もこたえることができない。

 美也子なら、健太郎が私の中にいるんだって話しても、真面目に聞いてくれそうな気がする。


 だけど、健太郎のことを他の人に話してはいけないような気がするんだ。何となくだけど誰かに話すと健太郎が私の中から消えていなくなってしまうような、根拠のない不安もあった。


「ごめんごめん。ちょっと今忙しくて。独り言も、きっと疲れてるからなんだと思う」

「そう? また何かあったら言ってね、私たち、親友なんだから」

「ありがとう、美也子……」


 美也子のことだから、もう少し食いついてくるかなと思ったけれど、思いの外あっさりと引き下がってくれた。

 他に好きな人ができたんだよ、と言えたらどれだけ良かったか。

 今の私を見てなのだろう。しつこく聞いてはこなかった美也子に、少なからず罪悪感を感じた。

 そのあとは、私の話題から美也子自身の話へと話題は移っていった。






「……美也子にも、過去にされちまったな」

「やだ。あんた、また女同士の話を盗み聞きしてたの?」

「嫌でも聞こえるんだってば! そんな人聞きの悪い言い方するなよな?」


 昼休み。いつからか私は健太郎と自然に話せるように、人気のない校舎の裏庭で一人でお昼を取るようになっていた。

 最近は、空気を読んで誰もいない場所で話しかけてくれるようになった健太郎。

 わかってはいるけど、毎回毎回健太郎に全ての会話が筒抜けになるのは慣れない。


「何? やっぱり美也子の気持ちが健太郎から離れて寂しいの?」


 私と畑中先輩とのことをひとしきり話したあと、美也子は健太郎のことを過去にすると話していたことを思い出す。

 もともと一方的な片思いだったし、亡くなったあとも想い続けるのは、お空にいる健太郎もいい気がしないだろうからと、美也子は言っていた。

 実際には健太郎は、お空じゃなくて私の中にいるのだけれど。


「そんなことねーよ。むしろ、その方が助かるっつーか、安心した」

「へぇ、そういうもんなんだ?」


 健太郎が美也子のことをどう思っていたのかはわからない。

 以前、健太郎に聞いてみたときも、はぐらかされてしまった。

 美也子は一方的な片思いだと思い込んでいたみたいだけど、健太郎も美也子のことを好きだったのかもしれない。

 何だかそう思うと、胸がモヤモヤと嫌な感情が生まれてくる。

 私ったら、一体何にモヤモヤしているんだろう?


「おい、千夏、何怒ってんだよ」

「怒ってないってば! うるさいな、話しかけないで」

「へーへー。これだから気分屋の千夏さんは困りますな」


 次第にはイライラしてきた。

 一体なんだって言うんだろう?

 触らぬ神に祟りなしと言わんばかりに、しばらく健太郎が私に話しかけてくることはなかった。私はお母さんの作ってくれたお弁当を黙々と食べて昼休みを終えた。
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