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9.迷い猫
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十二月も後半になり、街中はどこもイルミネーションであふれている。
「やっぱ、ここの唐揚げのトッピングはチリペッパーだよな」
この日の放課後は、商店街の中にある唐揚げ店に来ていた。
「えー、断然レモンとマヨネーズでしょ! 健太郎が指示した通りにチリペッパーかけたせいで、唇ヒリヒリしてタラコになりそうだよ~」
ここの唐揚げ屋さんは、お店の前にチリペッパーやマヨネーズ、岩塩やカレー粉、レモンや柚子ポン酢といった数多くのトッピングが置かれている。
そのためお客さんは唐揚げを買ったあと、好きなトッピングを自由にかけて楽しむことができるんだ。
そのトッピングでも私と健太郎の好みに大きく差が出ていた。
辛いものは苦手ではないけれど、健太郎の指示通りにしたら結構な量のチリペッパーをかけさせられた。
私の中に健太郎がいるからシンクロ効果で食べれているものの、こんなの私一人じゃ食べられないよ……!
「千夏は元々タラコ唇だろ? マヨネーズはわかるけど、何でわざわざ唐揚げを酸っぱくしなきゃなんねーんだよ」
「誰がタラコ唇だ! 健太郎のバカ!」
思わず怒鳴れば、同じように唐揚げを買いに来ていたお客さんに、びっくりしたような目で見られてしまった。
またやってしまったよ……。
最初の頃に比べるとかなり頻度は減ったとはいえ、やっぱり感情的になるとボロが出てしまう。
とりあえず周囲にペコペコと頭を下げて、小声で健太郎に言い返す。
「もう、健太郎のせいでまた恥かいたじゃない」
「はぁ? 俺のせい? 千夏が抜けてるからだろ~?」
「あーもう! いちいちムカつく! それに、適度なレモンは唐揚げを酸っぱくするんじゃなくて、あっさりさせて食べやすくするんだよ。風味もいいし」
「はいはい。でも、酸味が加わるから酸っぱくなることには変わりないだろ?」
健太郎は、意外と酸っぱいものが苦手だ。
ちょっとでも酸味を感じるものは苦手らしく、りんごやみかんも完熟してるもの以外は酸っぱくて食べられないらしい。
思い返せば小学生の頃、いつも健太郎は給食の果物を何かと理由をつけて私にくれていた。当時は疑問に思っていたし、健太郎自身も理由は教えてくれなかったけど、単純に苦手だったからだったようだ。
みかんはわからなくもないけど、りんごが酸っぱいって……。そうは思ったけれど、先日、初めてりんごを酸っぱく感じた。
健太郎と味覚がシンクロしたのだとすぐにわかったが、なかなかに衝撃的だった。
だから、それ以来、果物や酸味の強いものはご無沙汰している。
ひとしきり食べ終えると、唐揚げ店をあとにする。
よっぽど私の身体はさっきの辛さに堪えたようだ。十二月の冷たい空気で顔は冷えているのに、辛さのせいで唇だけ熱くて気持ち悪い。
健太郎は、この不自然に唇が熱くなる感覚は何とも思わないのかな?
まぁ辛いものが好きなら、慣れっこなのかもしれないけれど。
私の家の方向へと歩いて、懐かしい通りへと足を運ぶ。
今日は、私の通っていた小学校に行くことにした。
小学校は学区の端にあり、私にとっても健太郎にとっても自宅から中学校とは逆方向だ。
街とも反対側の位置に当たるため、決して自宅から遠いわけではないのに自然と足が遠退いてしまっていた。
「やっぱ、ここの唐揚げのトッピングはチリペッパーだよな」
この日の放課後は、商店街の中にある唐揚げ店に来ていた。
「えー、断然レモンとマヨネーズでしょ! 健太郎が指示した通りにチリペッパーかけたせいで、唇ヒリヒリしてタラコになりそうだよ~」
ここの唐揚げ屋さんは、お店の前にチリペッパーやマヨネーズ、岩塩やカレー粉、レモンや柚子ポン酢といった数多くのトッピングが置かれている。
そのためお客さんは唐揚げを買ったあと、好きなトッピングを自由にかけて楽しむことができるんだ。
そのトッピングでも私と健太郎の好みに大きく差が出ていた。
辛いものは苦手ではないけれど、健太郎の指示通りにしたら結構な量のチリペッパーをかけさせられた。
私の中に健太郎がいるからシンクロ効果で食べれているものの、こんなの私一人じゃ食べられないよ……!
「千夏は元々タラコ唇だろ? マヨネーズはわかるけど、何でわざわざ唐揚げを酸っぱくしなきゃなんねーんだよ」
「誰がタラコ唇だ! 健太郎のバカ!」
思わず怒鳴れば、同じように唐揚げを買いに来ていたお客さんに、びっくりしたような目で見られてしまった。
またやってしまったよ……。
最初の頃に比べるとかなり頻度は減ったとはいえ、やっぱり感情的になるとボロが出てしまう。
とりあえず周囲にペコペコと頭を下げて、小声で健太郎に言い返す。
「もう、健太郎のせいでまた恥かいたじゃない」
「はぁ? 俺のせい? 千夏が抜けてるからだろ~?」
「あーもう! いちいちムカつく! それに、適度なレモンは唐揚げを酸っぱくするんじゃなくて、あっさりさせて食べやすくするんだよ。風味もいいし」
「はいはい。でも、酸味が加わるから酸っぱくなることには変わりないだろ?」
健太郎は、意外と酸っぱいものが苦手だ。
ちょっとでも酸味を感じるものは苦手らしく、りんごやみかんも完熟してるもの以外は酸っぱくて食べられないらしい。
思い返せば小学生の頃、いつも健太郎は給食の果物を何かと理由をつけて私にくれていた。当時は疑問に思っていたし、健太郎自身も理由は教えてくれなかったけど、単純に苦手だったからだったようだ。
みかんはわからなくもないけど、りんごが酸っぱいって……。そうは思ったけれど、先日、初めてりんごを酸っぱく感じた。
健太郎と味覚がシンクロしたのだとすぐにわかったが、なかなかに衝撃的だった。
だから、それ以来、果物や酸味の強いものはご無沙汰している。
ひとしきり食べ終えると、唐揚げ店をあとにする。
よっぽど私の身体はさっきの辛さに堪えたようだ。十二月の冷たい空気で顔は冷えているのに、辛さのせいで唇だけ熱くて気持ち悪い。
健太郎は、この不自然に唇が熱くなる感覚は何とも思わないのかな?
まぁ辛いものが好きなら、慣れっこなのかもしれないけれど。
私の家の方向へと歩いて、懐かしい通りへと足を運ぶ。
今日は、私の通っていた小学校に行くことにした。
小学校は学区の端にあり、私にとっても健太郎にとっても自宅から中学校とは逆方向だ。
街とも反対側の位置に当たるため、決して自宅から遠いわけではないのに自然と足が遠退いてしまっていた。
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