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四
織絵が解散を告げても、ほとんどの門弟たちが残っていた。
みんなどうなるか見たいのだ。
結城は大人しく座ったまま、稽古を見学していた。
しばらく放っておかれても、そのままそこにいるということは、次に進む、ということだからだ。
待てない者は、ここで文字通り放り出される。
「結城どの、お待たせいたしました。ご案内いたします」
道場と母屋は別棟になっている。
が、井戸は一つなので、母屋の様子もうかがうことができる。
稽古が終わって汗を拭くために門弟たちが井戸端に集まる。
今日は特に多い。
そして静かだった。
ヒソヒソと話しながら、風呂場から結城が出てくるのを待った。
幸いなことに、外の風呂場にも近い。
織絵と里絵は当然、母屋に入って汗を拭い、着替えている。
いい匂いがしてきた。
おたけさんが、夕餉を作っている。
「ええなあ。おたけさんの飯食いてえ」
誰かが言う。
おたけは住み込みで働いている。
家事をしてくれていた老婆が亡くなってから、代わりに手伝いにきてくれている人だ。
源兵衛とは、もう夫婦みたいなものだった。
一度嫁していたが、子供ができず離縁されて実家に戻ってきていたところ、源兵衛の話を聞き、お手伝いしたいと申し出てくれたのだ。
秋も深まってきて、日が落ちるのが早い。
すでに、外にいる者は、影のようになり、お互いの顔もわからなくなってきていた。
「ちょっと、あなたたち、そこにいるんだったら結城どのをご案内して」
織絵の声が母屋から聞こえた。
「あの、・・・そこまでしていただかなくとも・・・」
結城の顔も定かに見えない。
「はいはい、どうぞどうぞ」
まだ渋っている風呂上がりの結城の背中を押して、みんなが母屋までゾロゾロとついていく。
そのままみんなで、農家の広い玄関に入っていった。
道場破りなのに、遠慮しいの結城をつい応援したくなるのか、
「しっかりやれよ」
と背中を叩く者もいる。
「はあ?」
相変わらず、己のおかれている状況がさっぱり飲み込めていない結城だった。
この、道場破りを試す一連の行為は、織絵の婿探しも兼ねていることを、みなは知っている。
部屋から漏れてくる灯りが届き、結城の姿が浮かび上がった。
「着物まで貸していただき、かたじけのうござる」
中にいる織絵、源兵衛に頭を下げたその姿は、ボロを纏っていたときとは一皮剥けて、颯爽とした若侍になっていた。
「おおっ・・・」
門弟たちが驚きの声をあげている。
「まあ、上がれ」
源兵衛の太い声がした。
「いや、しかし・・・そこまでしていただくいわれは・・・」
膳が並べられ、料理のいい匂いがしてくる。
ぐうるるるーー
結城のお腹が、盛大に鳴った。
みんなどうなるか見たいのだ。
結城は大人しく座ったまま、稽古を見学していた。
しばらく放っておかれても、そのままそこにいるということは、次に進む、ということだからだ。
待てない者は、ここで文字通り放り出される。
「結城どの、お待たせいたしました。ご案内いたします」
道場と母屋は別棟になっている。
が、井戸は一つなので、母屋の様子もうかがうことができる。
稽古が終わって汗を拭くために門弟たちが井戸端に集まる。
今日は特に多い。
そして静かだった。
ヒソヒソと話しながら、風呂場から結城が出てくるのを待った。
幸いなことに、外の風呂場にも近い。
織絵と里絵は当然、母屋に入って汗を拭い、着替えている。
いい匂いがしてきた。
おたけさんが、夕餉を作っている。
「ええなあ。おたけさんの飯食いてえ」
誰かが言う。
おたけは住み込みで働いている。
家事をしてくれていた老婆が亡くなってから、代わりに手伝いにきてくれている人だ。
源兵衛とは、もう夫婦みたいなものだった。
一度嫁していたが、子供ができず離縁されて実家に戻ってきていたところ、源兵衛の話を聞き、お手伝いしたいと申し出てくれたのだ。
秋も深まってきて、日が落ちるのが早い。
すでに、外にいる者は、影のようになり、お互いの顔もわからなくなってきていた。
「ちょっと、あなたたち、そこにいるんだったら結城どのをご案内して」
織絵の声が母屋から聞こえた。
「あの、・・・そこまでしていただかなくとも・・・」
結城の顔も定かに見えない。
「はいはい、どうぞどうぞ」
まだ渋っている風呂上がりの結城の背中を押して、みんなが母屋までゾロゾロとついていく。
そのままみんなで、農家の広い玄関に入っていった。
道場破りなのに、遠慮しいの結城をつい応援したくなるのか、
「しっかりやれよ」
と背中を叩く者もいる。
「はあ?」
相変わらず、己のおかれている状況がさっぱり飲み込めていない結城だった。
この、道場破りを試す一連の行為は、織絵の婿探しも兼ねていることを、みなは知っている。
部屋から漏れてくる灯りが届き、結城の姿が浮かび上がった。
「着物まで貸していただき、かたじけのうござる」
中にいる織絵、源兵衛に頭を下げたその姿は、ボロを纏っていたときとは一皮剥けて、颯爽とした若侍になっていた。
「おおっ・・・」
門弟たちが驚きの声をあげている。
「まあ、上がれ」
源兵衛の太い声がした。
「いや、しかし・・・そこまでしていただくいわれは・・・」
膳が並べられ、料理のいい匂いがしてくる。
ぐうるるるーー
結城のお腹が、盛大に鳴った。
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