【完結】蟠龍に抱かれて眠れ〜美貌のご落胤に転生?家老に溺愛されてお家騒動に巻き込まれる〜

かじや みの

文字の大きさ
35 / 40
4章 対決 桑名城

6 襲撃

しおりを挟む
「増蔵は、髑髏組だったの?」
 賭場で増蔵を見かけてそばによった。
 家を別にしてから、顔を合わせるのは、ほとんど賭場だった。

 増蔵は、色町を縄張りにしていて、そちらの方に入り浸っている。

「まさか、その頃は、わしもまだ餓鬼やで。・・・でも憧れやった。景、夢を見させてくれておおきにな。重いもん背負わせて、すまんかったな」
 頭を優しく撫でられて、思わず抱きついていった。
「おいおい、わしはそんな趣味はないって言うとるやろ。ムラムラするやないか」
「こんなんで、良かったのかな。おれ、髑髏を背負えるだけの男になってた?」
「ええ男や。光徳院さまらしいし、景三郎らしい。上出来っちゃうか」
「よかった~」
「そうだな」
 増蔵が耳元に口を寄せて囁いた。
「もうそろそろ潮時かもしれん。ずらかれ」
「え?」
「こんなことは、長くやるもんやない。意地を見せたればそれでええ。もう十分、お上に刃向かった。この先は危険や。髑髏組は忽然と消える。・・・ええやろ」
 と、得意げに胸を張ってみせた。
「増蔵・・・」
「あほ、泣くやつがあるか。留吉を連れて逃げろ。城下を離れるんや」
「ありがとう」
「こっちこそ、楽しかったぜ」
「若」
 と、留吉が呼びにきた。
「元締のところへ」

 元締の部屋へ行き、羽織を脱いだ。
「ご苦労やったな、景さん。ええ思い出ができた。命懸けやったがな」
 元締にも抱きついた。
「ありがとう。でも、それがかぶき者でしょう?」
「そらそうや。景さんは立派なかぶきもんや。留吉にはいい含めてある。・・・元気でな」
「うん」
 危険が迫っていると、みんな肌でわかるのだ。
「髑髏組は忽然と消える。ええ筋書きや」



 表からではなく、裏からそっと出た。

「留吉、いつからそんな話になってたの?」
「わいも今日初めて聞かされました」
「どこへ逃げるんだ?」
「とりあえずは、上方へ」
「そうか・・・」
 城下を離れることになってしまった。
 そうするべきだとは思うものの、本当にこれでいいの?

「伊織は?」
 さっきから、伊織の気配がない。
「どこ行ったんだろう」
「さあ、すぐ戻ってくるんちゃいます?」
「だといいけど」
 伊織がいないと不安になる。

 もう隠れ家に着こうとするところまで来て、伊織が走ってきた。
 それだけで、異常事態だとわかる。
「若、今すぐ久松さまの別邸へお行きください。殿はお戻りになっておられます」
「式部が? なんで・・・」
 おそらく、取り決めが破られたからだ。

「留吉どの、若を頼みます」
「はい」
「伊織は?」
「賭場が襲撃を受けています。伊賀者の仕業です。少しでも食い止めなければ」
 愕然とした。
 まさか、もう来たのか。
 右京もいるのか?
「おれも行く! 元締を助けなきゃ」
「なりませぬ! 若が行っては足手纏いです」
 いつになく厳しい口調で言う。
 が、思い直したようにそばによると、手を伸ばして頬に触れた。
「生きなければなりませぬ。・・・生きて。私の分まで。・・・よろしいですね」
 微笑んだ。
 踵を返して闇に消えた。

 後を追おうとする景司を、留吉が抱きとめた。
 腰に抱きついて体重をかけるようにして、行かせないようにしている。
「行かせてくれ、留吉!」
「ダメです、若!」
「行かせろ!」
 暴れた。
 賭場の方角の空が妙に明るい。
「まさか!」
 火事か。
 火をつけられた。
「ごめん、留吉!」
 股間を蹴り上げた。



 賭場が燃えている。
 伊織が伊賀者と対峙していた。
 忍びの死体が足元に転がっている。
 なんの感情も持たない冷たい刃物のような表情を、炎が照らし出している。
 伊織の腰が沈んだ。
 動き出す瞬間。
 上から襲いかかる忍びに、逆袈裟で斬り上げた。
 返す刀で、振り向きざまに後ろの敵を斬る。
 鮮やかな太刀捌きに、息を呑んだ。

「さすがだ。早乙女伊織」
「服部毅八郎」
 毅八郎が姿を現した。
「今日こそ決着をつける」
「望むところだ」
「色小姓などと、もう侮りはせぬ。・・・いざ」
 刀を抜いて、構えた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)

子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ 喰われるなんて聞いてないんだが(?) 俺はただ、 いちご狩りに誘われただけだが。 なのに── 誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に なぜか俺が捕まって食われる展開に? ちょっと待てい。 意味がわからないんだが! いちご狩りから始まる ケンカップルいちゃらぶBL ※大人描写のある話はタイトルに『※』あり

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?

monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。 そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。 主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。 ※今回の表紙はAI生成です ※小説家になろうにも公開してます

処理中です...