【完結】蟠龍に抱かれて眠れ〜美貌のご落胤に転生?家老に溺愛されてお家騒動に巻き込まれる〜

かじや みの

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終章 蟠龍に抱かれて眠れ

3 始まりの予感

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 目を開くと、白い天井が見えた。
 ここどこ?
 動けない。

 アルコールのような匂いと、規則的な電子音。
 あれ? 江戸時代じゃなかったっけ。

「景司!」
 聞き覚えのある声。
 今、景司って呼ばれた。
 顔を覗き込んできたのは、父上だ。丁髷じゃないけど。
 あ、でもあの世にいっちゃったんだ。
 あのまま死んでしまったのかな。
「景司? ああ、よかった」
 涙ぐんだ母さんがいる。
 あの世じゃないの?
 ってことは・・・。

 戻ってきたんだ。
 現代に。



 景司は3ヶ月眠ったままっだったという。
 そして起き上がって普通に生活できるようになるまで2ヶ月かかり、結局受験できず、浪人生になった。
 一応、高校は卒業させてもらえたが。

 時々頭痛に見舞われ、勉強どころではなくなる。

 塾をサボって、自転車で気分転換に出る。

 長かった夢のことは、誰にも話していない。
 妙に生々しくて、リアルだったけど、夢だったと思うことにしている。
 時間的にも合わないし。

 本多忠勝さんの銅像に挨拶して、蟠龍櫓まできた。

 桜はとっくにすぎている。
 同級生たちは、大学生活を満喫しているんだろう。
 平日の昼間、この辺りは閑散としている。
 誰もいない。

 川面を眺めて、思いを馳せる。

 あれからちゃんと、母上のところまで無事に行けただろうか。

 体は自分の体に戻っている。
 景三郎が目覚めて、景三郎の人生が始まっていたらいいな、と思う。
 きっとそうだと信じる。

「ちょっと君、地元の人? 教えてほしいんだけど」
 後ろから声をかけられた。
 振り返る。
 背の高い若い男性。大学生?
 でも、平日だし。
 向こうも驚いたらしい。
「高校生? でも学校あるよね。じゃあ、俺と同じ大学生かな」
 大学生なのに、なんでここに?
「講義サボってきた? それは俺だけどな」
 自分で言って笑っている。
「違います。大学生じゃないです」
 説明する義理もないからこれ以上は言わない。
「なんでしょうか」
 どこかで見たことがあるような気がしたけど、スラリとして短めの髪を茶色に染めた人に、見覚えはないはずだ。
「あれは何?」
 蟠龍櫓を指差した。
「あれは蟠龍櫓と言って、模擬櫓です。桑名城は建物が何も残っていなくて、唯一復元された模擬櫓なんです。外見だけですけど。平日は中に入れませんよ」
「詳しいねえ」
「地元の人間なら誰でも知ってます」
「へえ。あの鳥居は?」
 説明するのが面倒になって、
「行ってみたらわかりますよ」
「説明してくれる? 俺、読んだってわからないしさ。なんなら、桑名案内してよ。君、くわしそうだし、飯奢るよ」
 ニコニコして言った。
 これってナンパじゃないよね。
「大学はいいんですか?」
「いいのいいの。出席しても、寝てるだけだし」
「・・・」
「あ、そうだ。桑名といえば村正じゃん。見れるとこある?」
 この人、初対面なのに馴れ馴れしい。
「レプリカで良ければ春日神社にありますよ。博物館は、今は見れないと思います。その道をまっすぐ行ったら銅の鳥居が見えますから」
「じゃあ連れてってよ。一人じゃつまんないし。説明して」
 語尾をあげて手を合わせる。
 景司は大仰にため息をついた。
「忙しくなさそうじゃん」
「・・・」
 痛いところをつかれた。

「どこから来たんですか?」
 櫓の方に歩きながら聞いてみた。
「名古屋。近いけど、来たことなくて。最近、ルーツが桑名にあるって知って、来てみたくなったんだ。名前は吉村拓海。大学3年」
「吉村?」
 驚いて顔を見た。
「やっぱりどこかで会った? なんか初めて会ったような気がしない」
 拓海がまじまじと見つめてくる。
 そういえば、右京に似ていなくもない。
 右京の髷を切って、月代さかやきに髪を生やしたら・・・。
「会ってません」
 と顔をそむける。
 胸がドキッとした。
 そんなことがあるわけない。
「名前教えてよ」
「・・・」
 記憶がどっと押し寄せてきて、頭がズキズキ痛みだした。
 動悸まで激しくなってくる。
「すいません。調子悪くて・・・」
「大丈夫? 病院行こうか? 車乗ってきてるから。柿安に停めてる」
「大丈夫です。時々起こるんです。気にしないで・・・」
 放っておいてほしかった。
 だって、これ以上近づいたら、恋に落ちる予感しかない。

「放っとけないだろう」
 自転車ごと倒れそうになり、長い腕が肩を抱いた。
「大丈夫だって。しばらく休んだらおさまる・・・」
 ひょいと抱き上げられる。
 自転車だけが倒れた。
「力だけはあるから。・・・車で休んでいけよ」
「歩けます」
「いいからいいから」
 強引なところもそっくりだ。
「なんか、前にもこんなことあったような気がするなあ」
 不思議そうに首をひねっている。
 笑いが込み上げてきた。
「何かおかしいか?」

 蟠龍櫓だけが、この恋の顛末を知っている。


 <了>
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