25個のスイーツのあとで

かじや みの

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5−2 ゴーストとさくらパフェ

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「るみ、どうしよう、どうしよう」

 午前中は、何事もなかったように仕事をしていたのだが、お昼のチャイムが鳴ると同時に、るみのもとに走った。

「返事がきちゃった。来ちゃったの」
「どうした、どうした」
「見て見て」

 西野からのメールをるみに見せた。

「やっぱりゴーストだったんだ。うーん、でもこれ、ほんとかなあ。名前ないんじゃ、調べようがないけど」
「そんな・・・嘘だとは思えない」
 指摘されるまで、疑ってもいなくて、るみの言葉に驚いてしまった。
「ちょっと美香、全然疑ってなかったんだ。美香が信じるなら何も言わないけどさ。それにしても、よく送ったわね、メール」
「だって、どうなんだろうって悩んでるよりいいじゃない」
「美香って、積極的なのか消極的なのかわからない人ね」
 るみが肩をすくめた。
「ねえ、どうしたらいい?」
「これは行かなきゃだめでしょ。自分で投げたんだから、責任取らないと」
 ニヤニヤしてるみが言う。
「無理無理無理。土日とは限らないし、仕事忙しいし・・・」
「逃げないの」

 あたふたしていると、釘を刺された。

「それで、返事はしてないの?」
「してない。しないほうがいいかなあって思うの。そのうち忘れるでしょ」
「それでいいんだったら、いいけど」
「そうよ。いいの。そのうち、私を誘ったことなんて忘れるんだから。・・・取り乱しちゃってごめん」

 今日は食欲がなくて、おにぎりをコンビニで買ってきたのだった。
 でも、食欲がないと言いながら、べろりと平らげる。

「おにぎりだけなら、自分で作ったらいいのに」
 るみは、手作りのお弁当を食べている。

「そうなんだけど・・・」
「もしかして、炊飯器ないとか」
「はい、正解」
「もう、買いなさいよ」

 るみと話しているうちに、落ち着いてきて、その後は、西野のことを忘れしまうほど、日常に戻った。



 西野からメールが来たのは、3月の末ごろで、このところの冷え込みで桜の開花が遅れていて、なかなか日程が決まらなかったらしい。

 京都に一週間滞在するという。

 そのうちで行けそうな日があれば教えてほしいと言ってきた。

 美香は、仕事があるので土曜日なら大丈夫だと返信をした。

 その日が来るまでに、るみに頼み込んで買い物に付き合ってもらい、新しい服を買った。

 順調に痩せてきて、去年の春物の服がぶかぶかになってしまっていたのだった。

 ワンピース、ではなく、スラックスに、胸もとが開き気味の春ニットだ。
 気合が入っていると思われたくないから、色は地味に抑え、百貨店ではなくて、ファストファッションのお店で揃えた。

 美容室で髪も整え、背伸びをしない程度の精一杯のオシャレをして、新幹線に乗る。

 誰かが待っていてくれる旅は、これほど胸が踊るものなのかと思った。

 遠距離恋愛は、きっとこんな気分なんだろうな。
 いつも近場でのお付き合いしかしたことがないから、想像してみた。

(だめだめ。恋人でもないのにばかみたい)

 緊張するのは、住む世界が違う人と会うから。

(勘違いしちゃだめだ)
 声をかけられたのは、ただの気まぐれ。

 必死に自分に言い聞かせる。

 名古屋から京都までは一時間もかからない。
 あっという間に着いてしまった。

 京都は近いこともあって何度か来ていたが、一人で京都駅に立つのは初めてだった。

 到着する時刻は知らせてあるから、もう来ているはずだ。

 東京へ行った時とは違う緊張感に、汗をかく。

 こんなたくさんの人がいる中で、どうやって見つけるというのだろう。

 歩きながらスマホを取り出し、登録した番号をタップしようとした。

 名刺に書かれた番号と同じだ。

 だが、その必要はなかった。

「美香さん。よくいらっしゃいましたね」

 改札を出たところで、声をかけられた。

 柔らかい包み込むような笑顔で迎えられる。
 すれ違う人が振り返って見ていく。

「どこか行きたいところはありますか? どこでも案内しますよ」


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