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6 誓いのイチゴショート
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「ねえ、どうだった? 楽しくなかったの? なんか、あった?」
朝から夢中で仕事し、お昼になって、やっと話が聞けるとるみが隣に座った。
「何にもないよ」
美香は、すましておにぎりを頬張った。
「何かわかったの?」
「西野さん、バツイチなんだって」
「そうなんだ。チャンスあるじゃない」
るみが肩を小突いた。
「チャンスってなによ。恋人はいるみたいよ。たぶん、私がフラれたってメールに書いたから、同情して慰めてくれたんじゃないのかな」
「そう」
るみの視線が湿り気を帯びる。
「で、泣いちゃったの」
「泣いてません」
むすっと答えて、スマホを見せた。
西野から送られてきた写真だった。
「あらあ、いい写真じゃない。やっぱりセンスあるわ」
「被写体がよくない。顔丸いし、二重顎だし」
美香の笑顔にピントが合って、背後の桜がぼやけて淡いピンク色の背景になっている。
「可愛いって。いい笑顔してるよ。美香のいいとこちゃんと出てる」
「う~ん」
写真のお礼のメールは、当たり障りのない文面で送っただけだった。
きっともう、来ない。
「西野さんとは、何もないんだから、これで終わりなのはわかりきってる。かえってスッキリした」
何があったかは、ちゃんと報告した。
「そう。やけ食いしてないでしょうね」
性格を熟知しているるみが、横目に見てくる。
「しようかと思ったんだけど、ここでやってしまったら、何にもならないから、してません」
「おお。えらいぞ美香」
「でしょう」
と胸を張った。
「夜はラーメンで済ませたし。やる時は、やるのです」
5月になり、ゴールデンウィークは、アパートの部屋の片付けと掃除をした。
スイートルームを見てしまったら、自分の部屋とのあまりの差に耐えられなくなっていた。
泊まれないのだから、自分の部屋をスイートルームのようにすればいいのだと気がついたのだ。
今まで捨てられないと思ってきたガラクタを、思い切って捨てた。
なりたい自分に標準を合わせて、相応しいものだけを残すのだ。
そう、スイートルームに泊まれる私、だ。
「あの部屋に、いつか泊まるぞ!」
迷った時、頭にスイートルームを思い浮かべた。
意外にうまくいき、どんどん捨てていった。
どんなに振られても、変わらなかったのに、今回は違った。
「私は一人で生きるのよ!」
一週間かかって、やり遂げた美香は、スッキリした部屋で叫ぶ。
自分のためにコーヒーを淹れて飲んだ。
西野が淹れてくれたコーヒーメーカーに似たもの、サイフォン式を買い、カップも新しく買った。
「最高の私に乾杯」
なりたい自分になるために、決めたこと。
月に一回美味しいものを食べに行くこと。
今月は、静岡に行った。
富士山の見えるラウンジで、いちごショートを食べる。
トッピングはいちごだけのシンプルなものだ。
「これよこれ。んん~~最高~~」
晴れ渡った青い空に、富士山の姿がはっきりと見えている。
この笑顔は誰にも見せない。
富士山とだけ向き合っているから。
背伸びせずに、今の美香ができる限りの贅沢。
美味しいケーキと富士山に誓う。
最高の自分に、最高に美味しいものをプレゼントする。
だからもう、惨めな自分に涙することはしないと。
朝から夢中で仕事し、お昼になって、やっと話が聞けるとるみが隣に座った。
「何にもないよ」
美香は、すましておにぎりを頬張った。
「何かわかったの?」
「西野さん、バツイチなんだって」
「そうなんだ。チャンスあるじゃない」
るみが肩を小突いた。
「チャンスってなによ。恋人はいるみたいよ。たぶん、私がフラれたってメールに書いたから、同情して慰めてくれたんじゃないのかな」
「そう」
るみの視線が湿り気を帯びる。
「で、泣いちゃったの」
「泣いてません」
むすっと答えて、スマホを見せた。
西野から送られてきた写真だった。
「あらあ、いい写真じゃない。やっぱりセンスあるわ」
「被写体がよくない。顔丸いし、二重顎だし」
美香の笑顔にピントが合って、背後の桜がぼやけて淡いピンク色の背景になっている。
「可愛いって。いい笑顔してるよ。美香のいいとこちゃんと出てる」
「う~ん」
写真のお礼のメールは、当たり障りのない文面で送っただけだった。
きっともう、来ない。
「西野さんとは、何もないんだから、これで終わりなのはわかりきってる。かえってスッキリした」
何があったかは、ちゃんと報告した。
「そう。やけ食いしてないでしょうね」
性格を熟知しているるみが、横目に見てくる。
「しようかと思ったんだけど、ここでやってしまったら、何にもならないから、してません」
「おお。えらいぞ美香」
「でしょう」
と胸を張った。
「夜はラーメンで済ませたし。やる時は、やるのです」
5月になり、ゴールデンウィークは、アパートの部屋の片付けと掃除をした。
スイートルームを見てしまったら、自分の部屋とのあまりの差に耐えられなくなっていた。
泊まれないのだから、自分の部屋をスイートルームのようにすればいいのだと気がついたのだ。
今まで捨てられないと思ってきたガラクタを、思い切って捨てた。
なりたい自分に標準を合わせて、相応しいものだけを残すのだ。
そう、スイートルームに泊まれる私、だ。
「あの部屋に、いつか泊まるぞ!」
迷った時、頭にスイートルームを思い浮かべた。
意外にうまくいき、どんどん捨てていった。
どんなに振られても、変わらなかったのに、今回は違った。
「私は一人で生きるのよ!」
一週間かかって、やり遂げた美香は、スッキリした部屋で叫ぶ。
自分のためにコーヒーを淹れて飲んだ。
西野が淹れてくれたコーヒーメーカーに似たもの、サイフォン式を買い、カップも新しく買った。
「最高の私に乾杯」
なりたい自分になるために、決めたこと。
月に一回美味しいものを食べに行くこと。
今月は、静岡に行った。
富士山の見えるラウンジで、いちごショートを食べる。
トッピングはいちごだけのシンプルなものだ。
「これよこれ。んん~~最高~~」
晴れ渡った青い空に、富士山の姿がはっきりと見えている。
この笑顔は誰にも見せない。
富士山とだけ向き合っているから。
背伸びせずに、今の美香ができる限りの贅沢。
美味しいケーキと富士山に誓う。
最高の自分に、最高に美味しいものをプレゼントする。
だからもう、惨めな自分に涙することはしないと。
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