25個のスイーツのあとで

かじや みの

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6 誓いのイチゴショート

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「ねえ、どうだった? 楽しくなかったの? なんか、あった?」

 朝から夢中で仕事し、お昼になって、やっと話が聞けるとるみが隣に座った。

「何にもないよ」
 美香は、すましておにぎりを頬張った。

「何かわかったの?」
「西野さん、バツイチなんだって」
「そうなんだ。チャンスあるじゃない」

 るみが肩を小突いた。

「チャンスってなによ。恋人はいるみたいよ。たぶん、私がフラれたってメールに書いたから、同情して慰めてくれたんじゃないのかな」
「そう」
 るみの視線が湿り気を帯びる。
「で、泣いちゃったの」
「泣いてません」
 むすっと答えて、スマホを見せた。

 西野から送られてきた写真だった。

「あらあ、いい写真じゃない。やっぱりセンスあるわ」
「被写体がよくない。顔丸いし、二重顎だし」

 美香の笑顔にピントが合って、背後の桜がぼやけて淡いピンク色の背景になっている。

「可愛いって。いい笑顔してるよ。美香のいいとこちゃんと出てる」
「う~ん」

 写真のお礼のメールは、当たり障りのない文面で送っただけだった。

 きっともう、来ない。

「西野さんとは、何もないんだから、これで終わりなのはわかりきってる。かえってスッキリした」

 何があったかは、ちゃんと報告した。

「そう。やけ食いしてないでしょうね」

 性格を熟知しているるみが、横目に見てくる。

「しようかと思ったんだけど、ここでやってしまったら、何にもならないから、してません」
「おお。えらいぞ美香」
「でしょう」

 と胸を張った。

「夜はラーメンで済ませたし。やる時は、やるのです」




 5月になり、ゴールデンウィークは、アパートの部屋の片付けと掃除をした。

 スイートルームを見てしまったら、自分の部屋とのあまりの差に耐えられなくなっていた。

 泊まれないのだから、自分の部屋をスイートルームのようにすればいいのだと気がついたのだ。

 今まで捨てられないと思ってきたガラクタを、思い切って捨てた。

 なりたい自分に標準を合わせて、相応しいものだけを残すのだ。

 そう、スイートルームに泊まれる私、だ。

「あの部屋に、いつか泊まるぞ!」

 迷った時、頭にスイートルームを思い浮かべた。

 意外にうまくいき、どんどん捨てていった。

 どんなに振られても、変わらなかったのに、今回は違った。

「私は一人で生きるのよ!」

 一週間かかって、やり遂げた美香は、スッキリした部屋で叫ぶ。

 自分のためにコーヒーを淹れて飲んだ。

 西野が淹れてくれたコーヒーメーカーに似たもの、サイフォン式を買い、カップも新しく買った。

「最高の私に乾杯」




 なりたい自分になるために、決めたこと。

 月に一回美味しいものを食べに行くこと。

 今月は、静岡に行った。

 富士山の見えるラウンジで、いちごショートを食べる。

 トッピングはいちごだけのシンプルなものだ。

「これよこれ。んん~~最高~~」

 晴れ渡った青い空に、富士山の姿がはっきりと見えている。

 この笑顔は誰にも見せない。
 富士山とだけ向き合っているから。

 背伸びせずに、今の美香ができる限りの贅沢。

 美味しいケーキと富士山に誓う。

 最高の自分に、最高に美味しいものをプレゼントする。

 だからもう、惨めな自分に涙することはしないと。

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