25個のスイーツのあとで

かじや みの

文字の大きさ
17 / 37

10 信じる気持ちとイチジクパフェ

しおりを挟む
 9月。

 まだまだ夏のように暑いが、秋になったと感じるのは、やっぱり胃袋だった。

 無性にコッテリしたものが食べたくなる。

 白状すると、真夏でもいけてしまう美香だが、リバウンドを避けるために、さすがに控えていた。

 やけ食いの衝動も、時々起きて、パンを3つほど一気ぐいしてしうこともある。

 今のところ、70キロを切るか切らないかというところでウロウロしていた。

 夏の食欲減退時期に、まったく体重が減らずに、秋に突入してしまったのだった。

 芋、栗、フルーツ。

 街を歩いていると、秋の美味しいものが目に飛び込んでくる。

「食べたいよー、るみ、どうしよう」

 会社で、るみに泣きつく頻度も上がってきた。

 デパ地下へ行くと、つい買ってしまうため、炊飯器を買って、お昼はおにぎりを作るようになっていた。

「耐えろ、美香。社内でも噂になってたぞ。西園寺さん、この頃痩せたんじゃない? って。恋煩いなんじゃないかなあって言っといた」
「ちょっとやめてーー違うから」
「ま、そうね、失恋したようなものだしね」
「してません。そもそも恋なんかじゃないってば」

 いたずらっぽく疑いの目で見られる。

「でも、えらい。ちゃんとメール続けてるんでしょ」
「月一回だから、西野さんの負担にならないと思うんだけど」
「あれ? 今も西野さんって呼んでるの?」
「うん。だって、私にとって、確かなのは、西野さんの方だから」

 西野の苗字を使うのを避けていたが、もう、気を使うのはやめた。

 信じたいから。
 西野京一郎しか、美香は知らないのだから。

「でも、返事ないんでしょ」
「ない、けど・・・やっぱり、迷惑かなあ」
「いいと思うよ、私は。黙って無かったことにするより、ずっと。私だったら、きっと怒りのメールを送りつけるけど」
「るみ、意外と怖かったんだ」
「言うべきことは言わないと。相手が金持ちだろうが、関係ないでしょ」
「うん。そうだ。関係ない」
 拳を振り上げた。
「そう、その意気よ!」

「今月何食べよ~~」
「やっぱり、食欲には勝てんか、美香」



 週末、美香が向かったのは、西尾市。

 ここで、この時期限定のあるものを食べに来た。

 わざわざ遠くへ出かけなくても、美味しいものはたくさんある。

 名産のイチジクをふんだんに盛り付けたパフェだ。

 すぐに完売してしまうため、予約を入れておいた。

「これこれ~~」

 写真を撮ってから、食べる。

「いちじくうま~~」
 とろとろの果肉の優しい甘さが口いっぱいに広がる。

「幸せ」
 人に見られて恥ずかいいが、一人でニマニマ笑ってしまう。
 いや、誰も美香のことなんて見ていない。

 嫌なことなんて、どこかへ吹っ飛んでいく。



 西野京一郎さま


 今日は西尾でイチジクパフェを食べてきました。

 西野さんは、食べたことがありますか?

 幸せ気分に浸ってきました。


 西園寺美香



 そして、月末近いある日、返事が来た。


『近々、名古屋へ行きます。

 もしお時間があれば、少し、お会いできませんか』


 と簡単な文面だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

【完結】自分の都合で婚約破棄したら穴の中で暮らす羽目になった。

ジャン・幸田
恋愛
 俺は元は王子の伯爵だ。でも治めているのは穴の中だけだ。なぜそうなったのか? ざまあされた結果だ。まあ、聞いてくれ!

【完結】逃がすわけがないよね?

春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。 それは二人の結婚式の夜のことだった。 何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。 理由を聞いたルーカスは決断する。 「もうあの家、いらないよね?」 ※完結まで作成済み。短いです。 ※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。 ※カクヨムにも掲載。

王女殿下のモラトリアム

あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」 突然、怒鳴られたの。 見知らぬ男子生徒から。 それが余りにも突然で反応できなかったの。 この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの? わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。 先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。 お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって! 婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪ お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。 え? 違うの? ライバルって縦ロールなの? 世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。 わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら? この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。 ※設定はゆるんゆるん ※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。 ※明るいラブコメが書きたくて。 ※シャティエル王国シリーズ3作目! ※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、 『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。 上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。 ※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅! ※小説家になろうにも投稿しました。

幸せになれると思っていた

里見知美
恋愛
18歳になったら結婚しよう、と約束をしていたのに。 ある事故から目を覚ますと、誰もが私をいないものとして扱った。

妹の身代わりだった私に「本命は君だ」――王宮前で王子に抱き潰され、溺愛がバレました。~私が虐げられるきっかけになった少年が、私と王子を結び付

唯崎りいち
恋愛
妹の身代わりとして王子とデートすることになった私。でも王子の本命は最初から私で――。長年虐げられ、地味でみすぼらしい私が、王子の愛と溺愛に包まれ、ついに幸せを掴む甘々ラブファンタジー。妹や家族との誤解、影武者の存在も絡み、ハラハラと胸キュンが止まらない物語。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

姉の引き立て役の私は

ぴぴみ
恋愛
 アリアには完璧な姉がいる。姉は美人で頭も良くてみんなに好かれてる。 「どうしたら、お姉様のようになれるの?」 「ならなくていいのよ。あなたは、そのままでいいの」  姉は優しい。でもあるとき気づいて─

処理中です...