25個のスイーツのあとで

かじや みの

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11−1 宣戦布告と誕生日ケーキ

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「来た来た、どうしよう」

「何があったの? すごい顔で見てたから、何かあると思ってたけど」

 朝、何気ない顔で仕事をしていたつもりの美香だったが、るみにはお見通しだったらしい。

 昼休みに入った途端に、いつものように泣きついたが、落ち着いたものだった。

「どれどれ」

 メールを見たるみが、難しい顔になった。

「これって、あやしいわね」
「何が?」
 探偵のように、顎に手をやって考えている。

「もしかして、本人じゃないかも。文面が簡潔すぎるし、裏がありそうな感じ」
「そんなぁ、どうすればいいの」
「美香」

 るみが声を低くして表情を消した。

「決めるのは、美香よ。これからどうしたいの?」
「うぅ・・・考えてない」
「覚悟した方がいいわ。だって、あんな報道があったんだもの。監視されているでしょし。美香がどんな女なのか、見たいんじゃない?」
「脅かさないで。怖い怖い怖いっ」

 争いごとに巻き込まれたことは、ほぼない美香だ。

「返事はしたの?」
「してない」

 怖くてできなかったのだ。
 るみが言ったことを、無意識に感じていたのかもしれない。

「面白いじゃないの。受けて立ったら」
「ちょっと、人ごとだと思って」

 ニヤニヤしているるみが信じられない。

 おにぎりを頬張りながら、考えた。

 確かに、ここで引くのも、なんかおかしいし、違う気がする。

『はい。ありがとうございます。退社後ならいつでも大丈夫です。以前お会いした場所でいかがでしょうか』

 と、返信した。

 どう返ってくるだろうか。




 返事が来たのは、その日の夜だった。

『では水曜日の午後6時に。最上階のレストランでお待ちしています』

 微妙な回答。

 本人かもしれないし、西野の行動を把握している人になら、予測ができるのかもしれない。


 時間的に、家に帰って着替えることはできない。
 服を持っていって着替えようかとも思ったが、社内で変に勘ぐられるのも嫌だったので、事務服のまま行くことにした。

 最上階といえば、高級レストランだ。

 もしも、本人でなかったら、食事というわけではないだろう。
 話をして、すぐに帰ってくる。

 なじられ、蔑まれる覚悟をしなければならないだろう。

 想像しただけで、顔がひきつる。

「美香、自信持って。美香なら大丈夫。ビシッと言ってやりな」
「うん」

 るみが、肩をバシバシ叩いて、送り出してくれた。

 なんで、こうなっちゃったんだろう。

 エレベーターに乗る時、さすがに後悔した。

(どうしてメールなんてしちゃったの?
 美香らしくないよ)

 いくら自分をなじっても、状況が変わるわけでもない。
 出したのは、美香なのだ。

 3月、二人で見た景色が目の前に広がる。

 また見られると思っていなかった。

 あれから半年が経っている。

 けれど、一度見た景色は、美香に安心感をくれた。

(大丈夫)
 この絶景は、私の味方だから。

 相手が何を言ってきても、私は私だ。

 私が思う最高の私でいればいい。


 しかし、エレベーターを降りた時、足がすくんだ。

 強烈な場違い感は、東京で感じたものと同じだった。

(どうしよう)

 どっちへ行ったらいいのかわからない。

 さっきの強気は、あっけなく消えてしまっている。

「あなたが、西園寺さん?」

 立ち尽くす美香の前に女が立った。

「は、はい、そうです」

 惚れ惚れするほどのプロポーションを隠さないピッタリしたニットに、足見せの短パンという姿で現れた女性は・・・。

 テレビで見たアイドルではなかった。

(京都の女だ)

「よく来てくれました。立ち話もなんですから、どうぞ、こちらへ」

 女は先に立って、フレンチレストランに入っていく。

 カップルで食事をするには最高のロケーションだ。
 もちろん、美香に経験はない。

「どうぞ、お座りになって」

 女は、余裕たっぷりに美香を促すと、スタッフにドリンクを注文した。
 何度も来ているのか、慣れた様子だ。

「驚かないのね。京一郎に会いに来たのでしょ?」

 女は髪を高く結っているせいか、目尻が吊り気味だが、形のいい大きな目で美香を正面から見据えた。

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