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11−1 宣戦布告と誕生日ケーキ
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「来た来た、どうしよう」
「何があったの? すごい顔で見てたから、何かあると思ってたけど」
朝、何気ない顔で仕事をしていたつもりの美香だったが、るみにはお見通しだったらしい。
昼休みに入った途端に、いつものように泣きついたが、落ち着いたものだった。
「どれどれ」
メールを見たるみが、難しい顔になった。
「これって、あやしいわね」
「何が?」
探偵のように、顎に手をやって考えている。
「もしかして、本人じゃないかも。文面が簡潔すぎるし、裏がありそうな感じ」
「そんなぁ、どうすればいいの」
「美香」
るみが声を低くして表情を消した。
「決めるのは、美香よ。これからどうしたいの?」
「うぅ・・・考えてない」
「覚悟した方がいいわ。だって、あんな報道があったんだもの。監視されているでしょし。美香がどんな女なのか、見たいんじゃない?」
「脅かさないで。怖い怖い怖いっ」
争いごとに巻き込まれたことは、ほぼない美香だ。
「返事はしたの?」
「してない」
怖くてできなかったのだ。
るみが言ったことを、無意識に感じていたのかもしれない。
「面白いじゃないの。受けて立ったら」
「ちょっと、人ごとだと思って」
ニヤニヤしているるみが信じられない。
おにぎりを頬張りながら、考えた。
確かに、ここで引くのも、なんかおかしいし、違う気がする。
『はい。ありがとうございます。退社後ならいつでも大丈夫です。以前お会いした場所でいかがでしょうか』
と、返信した。
どう返ってくるだろうか。
返事が来たのは、その日の夜だった。
『では水曜日の午後6時に。最上階のレストランでお待ちしています』
微妙な回答。
本人かもしれないし、西野の行動を把握している人になら、予測ができるのかもしれない。
時間的に、家に帰って着替えることはできない。
服を持っていって着替えようかとも思ったが、社内で変に勘ぐられるのも嫌だったので、事務服のまま行くことにした。
最上階といえば、高級レストランだ。
もしも、本人でなかったら、食事というわけではないだろう。
話をして、すぐに帰ってくる。
なじられ、蔑まれる覚悟をしなければならないだろう。
想像しただけで、顔がひきつる。
「美香、自信持って。美香なら大丈夫。ビシッと言ってやりな」
「うん」
るみが、肩をバシバシ叩いて、送り出してくれた。
なんで、こうなっちゃったんだろう。
エレベーターに乗る時、さすがに後悔した。
(どうしてメールなんてしちゃったの?
美香らしくないよ)
いくら自分をなじっても、状況が変わるわけでもない。
出したのは、美香なのだ。
3月、二人で見た景色が目の前に広がる。
また見られると思っていなかった。
あれから半年が経っている。
けれど、一度見た景色は、美香に安心感をくれた。
(大丈夫)
この絶景は、私の味方だから。
相手が何を言ってきても、私は私だ。
私が思う最高の私でいればいい。
しかし、エレベーターを降りた時、足がすくんだ。
強烈な場違い感は、東京で感じたものと同じだった。
(どうしよう)
どっちへ行ったらいいのかわからない。
さっきの強気は、あっけなく消えてしまっている。
「あなたが、西園寺さん?」
立ち尽くす美香の前に女が立った。
「は、はい、そうです」
惚れ惚れするほどのプロポーションを隠さないピッタリしたニットに、足見せの短パンという姿で現れた女性は・・・。
テレビで見たアイドルではなかった。
(京都の女だ)
「よく来てくれました。立ち話もなんですから、どうぞ、こちらへ」
女は先に立って、フレンチレストランに入っていく。
カップルで食事をするには最高のロケーションだ。
もちろん、美香に経験はない。
「どうぞ、お座りになって」
女は、余裕たっぷりに美香を促すと、スタッフにドリンクを注文した。
何度も来ているのか、慣れた様子だ。
「驚かないのね。京一郎に会いに来たのでしょ?」
女は髪を高く結っているせいか、目尻が吊り気味だが、形のいい大きな目で美香を正面から見据えた。
「何があったの? すごい顔で見てたから、何かあると思ってたけど」
朝、何気ない顔で仕事をしていたつもりの美香だったが、るみにはお見通しだったらしい。
昼休みに入った途端に、いつものように泣きついたが、落ち着いたものだった。
「どれどれ」
メールを見たるみが、難しい顔になった。
「これって、あやしいわね」
「何が?」
探偵のように、顎に手をやって考えている。
「もしかして、本人じゃないかも。文面が簡潔すぎるし、裏がありそうな感じ」
「そんなぁ、どうすればいいの」
「美香」
るみが声を低くして表情を消した。
「決めるのは、美香よ。これからどうしたいの?」
「うぅ・・・考えてない」
「覚悟した方がいいわ。だって、あんな報道があったんだもの。監視されているでしょし。美香がどんな女なのか、見たいんじゃない?」
「脅かさないで。怖い怖い怖いっ」
争いごとに巻き込まれたことは、ほぼない美香だ。
「返事はしたの?」
「してない」
怖くてできなかったのだ。
るみが言ったことを、無意識に感じていたのかもしれない。
「面白いじゃないの。受けて立ったら」
「ちょっと、人ごとだと思って」
ニヤニヤしているるみが信じられない。
おにぎりを頬張りながら、考えた。
確かに、ここで引くのも、なんかおかしいし、違う気がする。
『はい。ありがとうございます。退社後ならいつでも大丈夫です。以前お会いした場所でいかがでしょうか』
と、返信した。
どう返ってくるだろうか。
返事が来たのは、その日の夜だった。
『では水曜日の午後6時に。最上階のレストランでお待ちしています』
微妙な回答。
本人かもしれないし、西野の行動を把握している人になら、予測ができるのかもしれない。
時間的に、家に帰って着替えることはできない。
服を持っていって着替えようかとも思ったが、社内で変に勘ぐられるのも嫌だったので、事務服のまま行くことにした。
最上階といえば、高級レストランだ。
もしも、本人でなかったら、食事というわけではないだろう。
話をして、すぐに帰ってくる。
なじられ、蔑まれる覚悟をしなければならないだろう。
想像しただけで、顔がひきつる。
「美香、自信持って。美香なら大丈夫。ビシッと言ってやりな」
「うん」
るみが、肩をバシバシ叩いて、送り出してくれた。
なんで、こうなっちゃったんだろう。
エレベーターに乗る時、さすがに後悔した。
(どうしてメールなんてしちゃったの?
美香らしくないよ)
いくら自分をなじっても、状況が変わるわけでもない。
出したのは、美香なのだ。
3月、二人で見た景色が目の前に広がる。
また見られると思っていなかった。
あれから半年が経っている。
けれど、一度見た景色は、美香に安心感をくれた。
(大丈夫)
この絶景は、私の味方だから。
相手が何を言ってきても、私は私だ。
私が思う最高の私でいればいい。
しかし、エレベーターを降りた時、足がすくんだ。
強烈な場違い感は、東京で感じたものと同じだった。
(どうしよう)
どっちへ行ったらいいのかわからない。
さっきの強気は、あっけなく消えてしまっている。
「あなたが、西園寺さん?」
立ち尽くす美香の前に女が立った。
「は、はい、そうです」
惚れ惚れするほどのプロポーションを隠さないピッタリしたニットに、足見せの短パンという姿で現れた女性は・・・。
テレビで見たアイドルではなかった。
(京都の女だ)
「よく来てくれました。立ち話もなんですから、どうぞ、こちらへ」
女は先に立って、フレンチレストランに入っていく。
カップルで食事をするには最高のロケーションだ。
もちろん、美香に経験はない。
「どうぞ、お座りになって」
女は、余裕たっぷりに美香を促すと、スタッフにドリンクを注文した。
何度も来ているのか、慣れた様子だ。
「驚かないのね。京一郎に会いに来たのでしょ?」
女は髪を高く結っているせいか、目尻が吊り気味だが、形のいい大きな目で美香を正面から見据えた。
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