1 / 1
一
しおりを挟む
皇国軍との戦を避けるために、長女を後宮に入れること。
それが和睦の条件だった。
妃として迎えると言うが、体のいい人質だと蓉華にもわかる。
皇帝は戦好きで知られ、圧倒的な兵を率いて、もう目の前に迫っている。
圧力をかけてくる皇国軍に、武力で勝つことはもはや不可能に近い。
群雄割拠の時代は終わり、力のある一国が全土を治める形に落ち着きつつあった。
戦の仕方も、国の治め方も、これまでとは違ってきている。
皇帝の要求は絶対だ。
拒めば容赦無く、国が滅ぶ。
恐ろしくて、蓉華は母の袖に隠れて震えていた。
だが、鍵を握る長女は・・・。
「戦だと? 上等だ! 相手に不足はない!」
将軍と見紛うほどの体躯に鎧を着込み、長鉾を操る女傑、劉彩華だ。
「お断りしてください、父上!」
徹底抗戦も辞さない剣幕である。
「ばかもんっ! 断るだと? お前は国を滅ぼす気か!」
父王の代わりに怒鳴ったのは、長兄の奏だ。
彩華を抑えることができるのは、父と、奏しかいない。
父王は、目を瞑り、腕を組んだまま動かなかった。
いつも冷静沈着な奏だったが、今度ばかりは黙っていられないと唾をとばす。
彩華が、ふん、と鼻を鳴らした。
「兄上ともあろうお方が、何を言われる。後宮にいくくらいなら、戦で死んだ方がましだ!」
「彩華っ、頭を冷やせ! お前一人に何ができる!」
「妃など、真っ平ごめんだ! どうしてもと言うなら、この場で殺せ!」
「何を!? 死ぬ覚悟があるなら、後宮へ行けと言っている!」
「嫌なものは嫌だ! 後宮とは、女の墓場のようなところだろう。死んでもいかぬ!」
頭に血が上った二人の言い争いは激しくなり、今にも斬り合いが始まりそうな雰囲気だ。
「二人が争ってどうするのだ」
三人の母が、嘆かわしいと首を振る。
家族会議は、まとまらず父王に皆の視線が集まった。
「父上がなんと言おうと、私は・・・」
彩華が言いかけると、父王が目を開いた。
その視線の席には、蓉華が。
「後宮には、蓉華に行ってもらう」
「な・・・」
思いがけない言葉に、皆が固まっている。
それが和睦の条件だった。
妃として迎えると言うが、体のいい人質だと蓉華にもわかる。
皇帝は戦好きで知られ、圧倒的な兵を率いて、もう目の前に迫っている。
圧力をかけてくる皇国軍に、武力で勝つことはもはや不可能に近い。
群雄割拠の時代は終わり、力のある一国が全土を治める形に落ち着きつつあった。
戦の仕方も、国の治め方も、これまでとは違ってきている。
皇帝の要求は絶対だ。
拒めば容赦無く、国が滅ぶ。
恐ろしくて、蓉華は母の袖に隠れて震えていた。
だが、鍵を握る長女は・・・。
「戦だと? 上等だ! 相手に不足はない!」
将軍と見紛うほどの体躯に鎧を着込み、長鉾を操る女傑、劉彩華だ。
「お断りしてください、父上!」
徹底抗戦も辞さない剣幕である。
「ばかもんっ! 断るだと? お前は国を滅ぼす気か!」
父王の代わりに怒鳴ったのは、長兄の奏だ。
彩華を抑えることができるのは、父と、奏しかいない。
父王は、目を瞑り、腕を組んだまま動かなかった。
いつも冷静沈着な奏だったが、今度ばかりは黙っていられないと唾をとばす。
彩華が、ふん、と鼻を鳴らした。
「兄上ともあろうお方が、何を言われる。後宮にいくくらいなら、戦で死んだ方がましだ!」
「彩華っ、頭を冷やせ! お前一人に何ができる!」
「妃など、真っ平ごめんだ! どうしてもと言うなら、この場で殺せ!」
「何を!? 死ぬ覚悟があるなら、後宮へ行けと言っている!」
「嫌なものは嫌だ! 後宮とは、女の墓場のようなところだろう。死んでもいかぬ!」
頭に血が上った二人の言い争いは激しくなり、今にも斬り合いが始まりそうな雰囲気だ。
「二人が争ってどうするのだ」
三人の母が、嘆かわしいと首を振る。
家族会議は、まとまらず父王に皆の視線が集まった。
「父上がなんと言おうと、私は・・・」
彩華が言いかけると、父王が目を開いた。
その視線の席には、蓉華が。
「後宮には、蓉華に行ってもらう」
「な・・・」
思いがけない言葉に、皆が固まっている。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【完結】旦那は堂々と不倫行為をするようになったのですが離婚もさせてくれないので、王子とお父様を味方につけました
よどら文鳥
恋愛
ルーンブレイス国の国家予算に匹敵するほどの資産を持つハイマーネ家のソフィア令嬢は、サーヴィン=アウトロ男爵と恋愛結婚をした。
ソフィアは幸せな人生を送っていけると思っていたのだが、とある日サーヴィンの不倫行為が発覚した。それも一度や二度ではなかった。
ソフィアの気持ちは既に冷めていたため離婚を切り出すも、サーヴィンは立場を理由に認めようとしない。
更にサーヴィンは第二夫妻候補としてラランカという愛人を連れてくる。
再度離婚を申し立てようとするが、ソフィアの財閥と金だけを理由にして一向に離婚を認めようとしなかった。
ソフィアは家から飛び出しピンチになるが、救世主が現れる。
後に全ての成り行きを話し、ロミオ=ルーンブレイス第一王子を味方につけ、更にソフィアの父をも味方につけた。
ソフィアが想定していなかったほどの制裁が始まる。
完結 貴方が忘れたと言うのなら私も全て忘却しましょう
音爽(ネソウ)
恋愛
商談に出立した恋人で婚約者、だが出向いた地で事故が発生。
幸い大怪我は負わなかったが頭を強打したせいで記憶を失ったという。
事故前はあれほど愛しいと言っていた容姿までバカにしてくる恋人に深く傷つく。
しかし、それはすべて大嘘だった。商談の失敗を隠蔽し、愛人を侍らせる為に偽りを語ったのだ。
己の事も婚約者の事も忘れ去った振りをして彼は甲斐甲斐しく世話をする愛人に愛を囁く。
修復不可能と判断した恋人は別れを決断した。
〖完結〗私は旦那様には必要ないようですので国へ帰ります。
藍川みいな
恋愛
辺境伯のセバス・ブライト侯爵に嫁いだミーシャは優秀な聖女だった。セバスに嫁いで3年、セバスは愛人を次から次へと作り、やりたい放題だった。
そんなセバスに我慢の限界を迎え、離縁する事を決意したミーシャ。
私がいなければ、あなたはおしまいです。
国境を無事に守れていたのは、聖女ミーシャのおかげだった。ミーシャが守るのをやめた時、セバスは破滅する事になる…。
設定はゆるゆるです。
本編8話で完結になります。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
大好きなあなたが「嫌い」と言うから「私もです」と微笑みました。
桗梛葉 (たなは)
恋愛
私はずっと、貴方のことが好きなのです。
でも貴方は私を嫌っています。
だから、私は命を懸けて今日も嘘を吐くのです。
貴方が心置きなく私を嫌っていられるように。
貴方を「嫌い」なのだと告げるのです。
【完結】旦那様、わたくし家出します。
さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。
溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。
名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。
名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。
登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*)
第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる