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2章 王女、再び敵国へ貴族の召使として潜入する
7 覚醒
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「テオを叱らないで。私がうっかりしていただけなの」
ルーシーがテオを庇ったが、侯爵は、テオの前に立った。
「顔をあげよ。君は優秀な召使いだと思っていたが。違ったのか」
「お許しを。今後は、気をつけます」
「今後? あるかどうか。私は、怠惰が一番嫌いなのだ」
「ファン、テオをやめさせたら私が許しませんよ」
ルーシーが急に立ち上がり、侯爵に詰め寄ろうとして、めまいを起こし、よろめいた。
「大奥さま・・・!」
「おばばさま」
侯爵が抱き止め、椅子にゆっくりと座らせると、医者とユンナがルーシーのそばに寄り、介抱した。
「おばばさまを頼む」
二人にそう声をかけて、テオの腕を掴んだ。
「君は、こっちだ。話がある」
腕を引っ張られ、連れて行かれたのは、侯爵の執務部屋だった。
初めて対面し、あの人に再会した部屋だった。
足を踏み入れたのは、あの時以来だ。
「おばばさまに何を聞いたか知らんが、鵜呑みにしてもらっては困る。年寄りの戯言と聞き流せ」
「本当なのですか? 婚約者を取られたと・・・」
「なに?」
触れられたくないことに触れたのだろう。
侯爵がテオに詰め寄って、肩を掴んだ。
「それ以上言えば、容赦しないぞ」
テオは、目をそらさずに侯爵を見上げた。
「どなたに取られたのですか。言いたくなければ、私が言いましょう。それは、・・・王太子ですね」
「君!」
肩を掴む手に力が込められ、テオは痛みに顔をしかめた。
「それ以上言うなと言っている」
「なぜ、他の方と、婚約なさらないのですか? 大奥さまはそれをお望みなのに、そうしないのは、王太子への当て付けでは」
「くっ・・・」
テオが男ならば、殴られているだろう。
かろうじて踏みとどまっている侯爵は、やはり、芯が強い。
テオは、怯むことなく続けた。
「スパイを警戒して、身辺を守るのも、王太子への、敵対心があるから・・・」
「やめろ。小娘に何がわかる」
「私は、ジュートから来ました。王太子のスパイにはなり得ない」
「・・・」
「私は、あなたの味方です。あなた方が、王太子を除くことを目指しているならば、ジュートはお力になります」
侯爵の目が、怒りではない別の色を帯びた。
「君は何者だ。ただの召使いではないな」
「私は、リアの者です。私の国は、滅びました。この国によって」
「まさか・・・」
「もし、私の言葉に誤りがあるのなら、遠慮なく、城に突き出してください」
「・・・」
肩を掴んでいた手から力が抜けていく。
「テオ・・・まさか、君は、テオーネルラ王女・・・」
侯爵は絶句し、膝をついた。
「生きて、おられたのですね」
ルーシーがテオを庇ったが、侯爵は、テオの前に立った。
「顔をあげよ。君は優秀な召使いだと思っていたが。違ったのか」
「お許しを。今後は、気をつけます」
「今後? あるかどうか。私は、怠惰が一番嫌いなのだ」
「ファン、テオをやめさせたら私が許しませんよ」
ルーシーが急に立ち上がり、侯爵に詰め寄ろうとして、めまいを起こし、よろめいた。
「大奥さま・・・!」
「おばばさま」
侯爵が抱き止め、椅子にゆっくりと座らせると、医者とユンナがルーシーのそばに寄り、介抱した。
「おばばさまを頼む」
二人にそう声をかけて、テオの腕を掴んだ。
「君は、こっちだ。話がある」
腕を引っ張られ、連れて行かれたのは、侯爵の執務部屋だった。
初めて対面し、あの人に再会した部屋だった。
足を踏み入れたのは、あの時以来だ。
「おばばさまに何を聞いたか知らんが、鵜呑みにしてもらっては困る。年寄りの戯言と聞き流せ」
「本当なのですか? 婚約者を取られたと・・・」
「なに?」
触れられたくないことに触れたのだろう。
侯爵がテオに詰め寄って、肩を掴んだ。
「それ以上言えば、容赦しないぞ」
テオは、目をそらさずに侯爵を見上げた。
「どなたに取られたのですか。言いたくなければ、私が言いましょう。それは、・・・王太子ですね」
「君!」
肩を掴む手に力が込められ、テオは痛みに顔をしかめた。
「それ以上言うなと言っている」
「なぜ、他の方と、婚約なさらないのですか? 大奥さまはそれをお望みなのに、そうしないのは、王太子への当て付けでは」
「くっ・・・」
テオが男ならば、殴られているだろう。
かろうじて踏みとどまっている侯爵は、やはり、芯が強い。
テオは、怯むことなく続けた。
「スパイを警戒して、身辺を守るのも、王太子への、敵対心があるから・・・」
「やめろ。小娘に何がわかる」
「私は、ジュートから来ました。王太子のスパイにはなり得ない」
「・・・」
「私は、あなたの味方です。あなた方が、王太子を除くことを目指しているならば、ジュートはお力になります」
侯爵の目が、怒りではない別の色を帯びた。
「君は何者だ。ただの召使いではないな」
「私は、リアの者です。私の国は、滅びました。この国によって」
「まさか・・・」
「もし、私の言葉に誤りがあるのなら、遠慮なく、城に突き出してください」
「・・・」
肩を掴んでいた手から力が抜けていく。
「テオ・・・まさか、君は、テオーネルラ王女・・・」
侯爵は絶句し、膝をついた。
「生きて、おられたのですね」
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