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2章 王女、再び敵国へ貴族の召使として潜入する
8 共謀
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「ご無礼をお許しください。王女」
セド侯爵は、テオの手を取り、口付けた。
怒りよりも、驚きがまさり、かろうじて冷静さを取り戻したといったところか。
「信じてくださるのですか」
思わず確かめるように、侯爵の顔をのぞきこむ。
その意思の強そうな目が、じっとテオの目を見つめてきた。
「敵国で王女を名乗ることが、どれほどのことか。私に打ち明けてくださったのは、私を信頼してくださっている証です。疑うなど・・・滅相もない」
「ありがとうございます」
テオの頬を涙が伝う。
侯爵の言葉に嘘はなさそうだった。
威厳を保つために気を張って対峙していたのだが、実際は怖くてたまらなかったのだ。
ほっとした。
一度途切れた緊張の糸は、元に戻らず、涙はあとからあとからこぼれてきて、嗚咽になった。
侯爵が、子供を慰めるようにそっと、抱き寄せる。
「さぞ辛かったでしょう・・・」
背中を優しくさすった。
「怖い思いをさせてしまいましたね。申し訳ありません。私はクールで通っておりますので」
と苦笑し、さあ、とソファーに導いて座らせた。
「お茶を淹れましょう。こう見えて、得意なのですよ」
テーブルに置かれたティーセットで、紅茶を淹れ始める。
「王女の言う通り、私は、婚約者のジュリーを王太子に横取りされた男です。私たちは、婚約する前から好きあっていました。学園に通っていた頃からのつきあいで・・・。ジュリーの家は身分が低かったのですが、頭がよく、美しい人で、目立っていましたよ」
侯爵は、カップに紅茶を注ぎ、テオの前に置いた。
「落ち着きますよ」
「ありがとう」
涙を急いで拭いて、ソーサーを持ち上げた。
「いい香り」
テオはカップに口をつける。
お茶の芳醇な香りが口の中にも広がって、温かさに心も落ち着いた。
「こんなところを見られたら、大騒ぎだな」
「ユンナさんに叱られますね」
「勘違いしないでいただきたい。私はユンナに召使い以上の思いを抱いてはいない」
「ジュリーさんを、まだ愛していらっしゃるのですね」
「ジュリーはもう、この世にはいない。お腹の子と共に、天国へ・・・」
「まあ・・・」
「病がちだったのが、たたって、子供を産み落とす力がなかったんだ」
その子は、王太子の子なのだろうか。
テオに尋ねる勇気はなかった。
「私は、確かに、王太子を憎んでいる。この思いは、王太子を排するまで消えないでしょう。王女からの申し出は、ありがたい。ぜひ手を組みましょう」
セドが手を差し出した。
「ええ・・・」
テオは、その手を握った。
「王子は、どのような方なのですか? セドさまは、王子とは、幼馴染なのでしょう? 王太子に代わって、王になる資質があると思われますか」
「・・・」
思いがけず、セドが笑った。
「私は、王子を推しています。もう一度、婚約するつもりはありませんか」
「え?・・・」
なんと返事をすればいいかわからなかった。
セド侯爵は、テオの手を取り、口付けた。
怒りよりも、驚きがまさり、かろうじて冷静さを取り戻したといったところか。
「信じてくださるのですか」
思わず確かめるように、侯爵の顔をのぞきこむ。
その意思の強そうな目が、じっとテオの目を見つめてきた。
「敵国で王女を名乗ることが、どれほどのことか。私に打ち明けてくださったのは、私を信頼してくださっている証です。疑うなど・・・滅相もない」
「ありがとうございます」
テオの頬を涙が伝う。
侯爵の言葉に嘘はなさそうだった。
威厳を保つために気を張って対峙していたのだが、実際は怖くてたまらなかったのだ。
ほっとした。
一度途切れた緊張の糸は、元に戻らず、涙はあとからあとからこぼれてきて、嗚咽になった。
侯爵が、子供を慰めるようにそっと、抱き寄せる。
「さぞ辛かったでしょう・・・」
背中を優しくさすった。
「怖い思いをさせてしまいましたね。申し訳ありません。私はクールで通っておりますので」
と苦笑し、さあ、とソファーに導いて座らせた。
「お茶を淹れましょう。こう見えて、得意なのですよ」
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「王女の言う通り、私は、婚約者のジュリーを王太子に横取りされた男です。私たちは、婚約する前から好きあっていました。学園に通っていた頃からのつきあいで・・・。ジュリーの家は身分が低かったのですが、頭がよく、美しい人で、目立っていましたよ」
侯爵は、カップに紅茶を注ぎ、テオの前に置いた。
「落ち着きますよ」
「ありがとう」
涙を急いで拭いて、ソーサーを持ち上げた。
「いい香り」
テオはカップに口をつける。
お茶の芳醇な香りが口の中にも広がって、温かさに心も落ち着いた。
「こんなところを見られたら、大騒ぎだな」
「ユンナさんに叱られますね」
「勘違いしないでいただきたい。私はユンナに召使い以上の思いを抱いてはいない」
「ジュリーさんを、まだ愛していらっしゃるのですね」
「ジュリーはもう、この世にはいない。お腹の子と共に、天国へ・・・」
「まあ・・・」
「病がちだったのが、たたって、子供を産み落とす力がなかったんだ」
その子は、王太子の子なのだろうか。
テオに尋ねる勇気はなかった。
「私は、確かに、王太子を憎んでいる。この思いは、王太子を排するまで消えないでしょう。王女からの申し出は、ありがたい。ぜひ手を組みましょう」
セドが手を差し出した。
「ええ・・・」
テオは、その手を握った。
「王子は、どのような方なのですか? セドさまは、王子とは、幼馴染なのでしょう? 王太子に代わって、王になる資質があると思われますか」
「・・・」
思いがけず、セドが笑った。
「私は、王子を推しています。もう一度、婚約するつもりはありませんか」
「え?・・・」
なんと返事をすればいいかわからなかった。
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