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プロローグ
1番勝負 淀君(上)
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「姫路に? 何しに?」
愚問かもしれないが、思わず口から出てしまった。
答えは一つしかないとわかりきっている。
でも、幽霊の口から聞かなければならない。
「お千に会いに行きたいのだ」
予想した答えが返ってきた。
だけど、「行けば」とは言えない。
この人は、ここから動けないのだ。
だから、頼まれている。
「・・・」
俺は返事につまった。
「無理だとは言わせない」
先回りされた。
「なぜそう思う? 見えるだけで、俺には、何の力もない」
それは、本当のことだ。
幽霊は、ふっと笑った。
「そうかもしれないが、お前の後ろに憑いているやつらは何なのだ」
やっぱり見えているらしい。
俺の後ろには、勝手についてきてしまったやつらがいる。
犬などの動物や子供たちだ。
天涯孤独の身の上でも、やつらのおかげで寂しいと感じたことはない。
独り言が多くなってしまうのが難点だが、変人扱いは慣れている。
「大人は遠慮してもらっている」
小さい子たちは無害だからいいが、大人は重ずぎる。
「承諾はしないが、話だけは聞いてやるよ。おそらく何かの縁だからな」
すべての幽霊が見えるわけでもない。
おそらく俺と波長の合うやつらが俺と関わりを持つ。
もし本物の秀頼なら、俺も偉くなったもんだな、と自尊心がくすぐられる。
生きていたら絶対に会うことのない相手だ。
だからこそ胡散臭くもあるのだが・・・。
「千姫に会ってどうするんだよ」
千姫は夫を亡くして、その動向が注目されていたから、下々の俺まで噂は知っている。
全国の大名が集まるこの大坂城の普請場で、噂されないわけがない。
情報を集めるのに、これほどいい場所もないのだ。
「それは言えない」
「なんで」
この世に残る霊魂は、この世に強い想いを残している。
誰かに想いを聞いてほしいから、姿も現す。
今まで、遠慮する幽霊には会ったことがない。
だから、みんな、聞いてやるよと声をかけるまでもなく、念を送ってくるものだ。
「遠慮はいらねえぜ。誰にもしべらないし。あ、言っとくけど、聞くだけだからな。それ以上はできないから」
どんなに苦しんでいても、あの世に送ってやることはできない。
心苦しくなることもあるが、本当に見えるだけなのだ。
心苦しく思うことが、霊を引き寄せてしまっているのだろうが、思うなと言われても無理な話だ。
だから、極力見ないように、避けるようにして、生きている。
「何を話しているのです? 秀頼どの」
女の声がした。
そして、今まで見えていなかった、女の人の姿が見えた。
「母上・・・」
秀頼が母と呼ぶ人は、おそらく、
「淀の方・・・?」
思わず呟いてしまった。
豪華な打ち掛けを纏った女は、秀頼の母、淀君その人なのか。
名前を呼んでしまった。
名前というのは強力で、その魂との関係性を強く結びつけてしまう。
(しまった!)
淀君と思われる女の存在感が増して、一気に膨れ上がった。
「そなたは何者じゃ」
秀頼とは比べものにならないほどの強い眼差しが、俺を射抜く。
平伏してしまいそうなほどに、高圧的な気が押し寄せる。
「秀頼に何をするのじゃ。許さぬ!」
愚問かもしれないが、思わず口から出てしまった。
答えは一つしかないとわかりきっている。
でも、幽霊の口から聞かなければならない。
「お千に会いに行きたいのだ」
予想した答えが返ってきた。
だけど、「行けば」とは言えない。
この人は、ここから動けないのだ。
だから、頼まれている。
「・・・」
俺は返事につまった。
「無理だとは言わせない」
先回りされた。
「なぜそう思う? 見えるだけで、俺には、何の力もない」
それは、本当のことだ。
幽霊は、ふっと笑った。
「そうかもしれないが、お前の後ろに憑いているやつらは何なのだ」
やっぱり見えているらしい。
俺の後ろには、勝手についてきてしまったやつらがいる。
犬などの動物や子供たちだ。
天涯孤独の身の上でも、やつらのおかげで寂しいと感じたことはない。
独り言が多くなってしまうのが難点だが、変人扱いは慣れている。
「大人は遠慮してもらっている」
小さい子たちは無害だからいいが、大人は重ずぎる。
「承諾はしないが、話だけは聞いてやるよ。おそらく何かの縁だからな」
すべての幽霊が見えるわけでもない。
おそらく俺と波長の合うやつらが俺と関わりを持つ。
もし本物の秀頼なら、俺も偉くなったもんだな、と自尊心がくすぐられる。
生きていたら絶対に会うことのない相手だ。
だからこそ胡散臭くもあるのだが・・・。
「千姫に会ってどうするんだよ」
千姫は夫を亡くして、その動向が注目されていたから、下々の俺まで噂は知っている。
全国の大名が集まるこの大坂城の普請場で、噂されないわけがない。
情報を集めるのに、これほどいい場所もないのだ。
「それは言えない」
「なんで」
この世に残る霊魂は、この世に強い想いを残している。
誰かに想いを聞いてほしいから、姿も現す。
今まで、遠慮する幽霊には会ったことがない。
だから、みんな、聞いてやるよと声をかけるまでもなく、念を送ってくるものだ。
「遠慮はいらねえぜ。誰にもしべらないし。あ、言っとくけど、聞くだけだからな。それ以上はできないから」
どんなに苦しんでいても、あの世に送ってやることはできない。
心苦しくなることもあるが、本当に見えるだけなのだ。
心苦しく思うことが、霊を引き寄せてしまっているのだろうが、思うなと言われても無理な話だ。
だから、極力見ないように、避けるようにして、生きている。
「何を話しているのです? 秀頼どの」
女の声がした。
そして、今まで見えていなかった、女の人の姿が見えた。
「母上・・・」
秀頼が母と呼ぶ人は、おそらく、
「淀の方・・・?」
思わず呟いてしまった。
豪華な打ち掛けを纏った女は、秀頼の母、淀君その人なのか。
名前を呼んでしまった。
名前というのは強力で、その魂との関係性を強く結びつけてしまう。
(しまった!)
淀君と思われる女の存在感が増して、一気に膨れ上がった。
「そなたは何者じゃ」
秀頼とは比べものにならないほどの強い眼差しが、俺を射抜く。
平伏してしまいそうなほどに、高圧的な気が押し寄せる。
「秀頼に何をするのじゃ。許さぬ!」
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