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深山安綺羽
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胡蝶之夢という説話がある。
蝶となってひらひらと飛ぶ夢を見た荘子は、目覚めたとき思った。はたして自分は蝶になった夢をみていたのか、それとも今の自分は蝶が見ている夢なのか……と。
僕は、これが世界の真実だと思っている。
つまり、今僕が人間という肉の器を得て活動している世界こそが夢であり、真実の僕――恐らくは蝶である――が別の世界にいるのだと。
この話を聞いて鼻で嗤わなかった人間は、僕の生涯の友人ただ一人を除いて知らない。まあ、無理からぬこととは思う。ほとんどの人間はその生涯において、禁断の発見とは無縁であるし、もし目にしてしまえば発狂するか命を落とすかなのだから。幼い頃……まだ感受性が豊かだった頃の僕や、あるいは生涯を通して羨ましいほど現役に敏感な彼女でもない限り、禁忌に触れることはなく、無知という堅牢な檻に守られて一生を終えるのだ。それは無知の知ならぬ無知の幸といえる。
幸か不幸か、魔性の光に魅入られてしまった僕は、もはや書き割りのように安っぽい現実を信じることはできず、羅針盤が暗礁を指しているとしても……その致命的な光の海へ船を出すほかないのだ。
二十年前、次元の割れ目へと飛んでいく翅を見て以来――。
蝶となってひらひらと飛ぶ夢を見た荘子は、目覚めたとき思った。はたして自分は蝶になった夢をみていたのか、それとも今の自分は蝶が見ている夢なのか……と。
僕は、これが世界の真実だと思っている。
つまり、今僕が人間という肉の器を得て活動している世界こそが夢であり、真実の僕――恐らくは蝶である――が別の世界にいるのだと。
この話を聞いて鼻で嗤わなかった人間は、僕の生涯の友人ただ一人を除いて知らない。まあ、無理からぬこととは思う。ほとんどの人間はその生涯において、禁断の発見とは無縁であるし、もし目にしてしまえば発狂するか命を落とすかなのだから。幼い頃……まだ感受性が豊かだった頃の僕や、あるいは生涯を通して羨ましいほど現役に敏感な彼女でもない限り、禁忌に触れることはなく、無知という堅牢な檻に守られて一生を終えるのだ。それは無知の知ならぬ無知の幸といえる。
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