今日は月曜だからこそ、朝はゆっくりしたいんだが

Yuzki

文字の大きさ
1 / 2

第1話

しおりを挟む
 昨日は日曜だった。
 つまり、今日は月曜だ。
 一週間の仕事の始まりとなる最初の日。
 その月曜という日が上手く行くかどうか、いやもっというならこれからの一週間が上手くいくかどうかは、その前日である日曜の過ごし方に掛かっている。
 今日が上手く行けば、これから先の一週間が上手く行く。
 一週間が上手く行けば、その先の一ヶ月も上手く行く。
 一ヶ月が上手く行けば、その先の、――。
 そう、それこそ俺の人生そのものが上手く行く、という完璧な理論。
 だからこそ俺は、今日という日が人生最高の日となるように、色んなことをやってきた。
 そしてその成果が、

「あー、稔? 私眠いからね? 明日も朝早いし、だから寝るね?」
 おやすみという挨拶もそこそこに、ベッドに潜り込んで寝息を立てているのが、幼馴染の涼子である。
 男の俺を日曜の夜中に家にあげておいて、そんで「私シャワー浴びてくる」からのこれである。
 ほんと、色っぽいことの一つもなくそっこで寝るとかどういう神経してんだと問い詰めてやりたい気持ちが半分。
 お疲れのようだから寝かせてやりたいという気持ちが残り半分。
 俺はベッドの脇に座り込んで、涼子の寝顔をぼんやりと眺める。
 なんだかんだ、俺はこの幼馴染に甘いと言うか、
「好きだって、きちんと伝えられた良いんだけどな。……無理か」
 もう二十年にも渡る片思いである。
 涼子に気持ちを伝えようと思うと、思うように言葉が出てこない。
 好きだという気持ちが心一杯になって溢れてしまいそうな程なのに、それをかけらも言葉にすることが出来ない。
 そんな、意気地なしな自分がもどかしく、同時に。
 涼子の鈍感さ加減というか、ある意味天然なところに全く太刀打ち出来ないのがもどかしい。

*

 涼子に関連する恋愛の苦い思い出を遡れば、まず初めに出てくるのが中学時代の話になるだろう。
 登場人物は俺と涼子という幼馴染のペアにもう一人、今はここには居ないそれなりに仲の良かった同級生の女の子である。
 男1の女2というなかなかな組み合わせで、その頃から三角関係のもつれが……ということは全然なかった。
 俺が涼子を好きで、そのことはそのもう一人の女の子も知っていて、むしろ協力してくれる素晴らしい女の子だった。
 俺の心の中では、その彼女のことは親友認定ですらあった。
 その親友には時々恋愛相談に乗ってもらうこともあり、心の支えにすらなっていた。
 ただ、後になって思い返せば、その親友も親友でなかなかにぶっ飛んでいて、
「稔君さ、涼子ちゃんに告白しよ?」
 いやだからそれ無理だっての。出来るんなら苦労しねえっての。
「じゃあさじゃあさ、私と稔君で付き合うフリしてさ、涼子ちゃんにヤキモチ焼かせよ? そしたら二人の仲も進展するよ!」
 その時は、そりゃ名案だと賛同して、早速の翌日に涼子を呼び出して、
「俺、こいつと付き合うことにしたから」
 彼女の肩を抱いて言うと、それを見た涼子が目を輝かせた。そして、
「わぁ、やった。私ね、二人を応援してたんだ! 良かったね稔! ここんとこ毎日二人でお話してたから怪しいなーって思ってたんだけど、でも稔の恋が実って良かったぁ、なんてね?」
 ふむ、おいおかしいぞどういうことだ? ジト目で隣を見るも、親友の目は泳いでおり、ついぞ合うことはなかった。

「作戦は失敗だった訳だが、どうしたらいい?」
 涼子にヤキモチ焼かせよう大作戦が失敗したその日の帰り道、俺は親友にそう話し掛ける。
「んー。んんー、涼子ちゃんって結構鋭いトコあるからさ。もしかすると、私達のこと気付いてたのかもね?」
 ん? それはどういうことだ? 俺達が付き合っているのが演技だとバレていたということか? それならば……。
「本気で付き合うっていうのはどうだろう? そうしたら、何かが変わるかも?」
 俺が本気で涼子以外の誰かを好きになったとして、それで何が変わるんだ……?
「稔君は、涼子ちゃん以外の女の子のことも見るべきだと思うよ? 他にもっと良い娘が居るかもしれないし。……ほら、私とか」
 あんまり気は進まないのだが、そういうのも試してみるべきか。
「えっ!? あーうんそうだね。うんうん、付き合おう、うん。他の女の子のことを知ったら、涼子ちゃんの良いところも見えてくるかもしれないし!」
 そうか。そうだな、ありがとう。よし、これから俺は新しい女の子を捜しに行ってくるぜ!
「え、あーちょっと稔君。あれぇー? 私と本気で付き合ってくれるんじゃ……?」
 親友が何やら言っているようだが、そんなことは知ったことではない。
 俺は俺のやるべきことをやるだけだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

俺の可愛い幼馴染

SHIN
恋愛
俺に微笑みかける少女の後ろで、泣きそうな顔でこちらを見ているのは、可愛い可愛い幼馴染。 ある日二人だけの秘密の場所で彼女に告げられたのは……。 連載の気分転換に執筆しているので鈍いです。おおらかな気分で読んでくれると嬉しいです。 感想もご自由にどうぞ。 ただし、作者は木綿豆腐メンタルです。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

幼馴染の執着愛がこんなに重いなんて聞いてない

エヌ
恋愛
私は、幼馴染のキリアンに恋をしている。 でも聞いてしまった。 どうやら彼は、聖女様といい感じらしい。 私は身を引こうと思う。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

処理中です...