今日は月曜だからこそ、朝はゆっくりしたいんだが

Yuzki

文字の大きさ
2 / 2

第2話

しおりを挟む
 それから今までの約十年と少し、俺は全力で駆け抜けてきた。
 ナンパに出会い系に友達の紹介に、あと最近は婚活パーティなんてのにも出てみた。
 それで色んな女の子と出会い、付き合い、けれどもすぐに別れる。最長で持って半年くらいだっただろうか。
 どの娘も悪くはなかったけれども、でも何かが違った。
 涼子のことを忘れようと決めて、けれども結局涼子以外の誰にも本気になれなかった。

 けれども。
 俺は涼子がいつも俺に言う言葉を思い出す。

――自分の心に正直に生きるべき。

 そう出来たなら、きっと俺のこれからの人生は楽しくて明るいはずである。
 だから俺は、ベッドですやすやと寝息を立てているこの幼馴染を、口元からちょっとヨダレが垂れている、女子として見せちゃ駄目な姿を曝け出してしまっている女の子との一線を越えようと、
「――――ッ」
 伸ばした手を引っ込めて、代わりにそっと頬に口づけして、それで満足する。
 焦ることはない、と思う。
 まかり間違って今手を出して、それで嫌われでもしたら俺はもう生きていけない。
 頑張って外堀を埋めるか、少しずつでも意識させて行けばいいのだ。
 うん、そうだな。
 俺のこれからの人生が上手く行くように、新たな目標を定めた。
 それは、――。

*

 翌朝。
 忙しい忙しいと騒ぎながらも、俺の分まで朝食を用意してくれた涼子に感謝の意を伝える。
「ありがとう涼子愛してる結婚してくれー」
「はいはい、寝言は寝てからね?」
 朝ご飯を手早く掻き込んで、スーツに着替えて軽く化粧を済ませて、さあ出社だと意気込む涼子を引き止めて、
「俺さ、決めたんだ。涼子と結婚する為に、涼子似の地味めな女の子と付き合うことにする!」
「お、おぅ……? そうか頑張れ稔。私も応援するよ。……っと、もう出ないと遅刻しちゃう。行こ、稔?」
「いや、今日は月曜だからこそ、朝はゆっくりしたいんだが」
「じゃ、一人でゆっくりしとれ。私は行く。鍵はいつものとこに隠しておいてくれればいいから」
「涼子も一緒じゃなきゃ意味ねーじゃん。しゃーない、俺も出るよ」
「もー、ワガママ言わない面倒掛けさせないの。ほら行くよ?」
 涼子に手を引かれ、部屋を出る。
 うむ、この貴重な朝の時間をゆっくり出来ないのは寂しいが、しかし俺の真摯な気持ちは伝わったようで良かった。
 朝日が眩しく、けれどもこれまでの人生で一番輝かしく清々しい。
 駅まで他愛もない話をしつつ、歩く。
 そして駅で別れる。涼子と俺とでは乗る電車の方向が違う。

 今回の休日は、実に充実していた。
 正確には日曜の夜から今朝に掛けて、だ。
 これだけ完璧に上手く行ったのだから、きっとこれからの一週間が上手く行くし、その先も同様に違いない。

――よし、今週も頑張ろう!

 そう気合を入れると、会社に向かう。
 朝をゆっくりしたこの時間では遅刻確定なのは、まあ仕方がないと目をつむろう。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

俺の可愛い幼馴染

SHIN
恋愛
俺に微笑みかける少女の後ろで、泣きそうな顔でこちらを見ているのは、可愛い可愛い幼馴染。 ある日二人だけの秘密の場所で彼女に告げられたのは……。 連載の気分転換に執筆しているので鈍いです。おおらかな気分で読んでくれると嬉しいです。 感想もご自由にどうぞ。 ただし、作者は木綿豆腐メンタルです。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

幼馴染の執着愛がこんなに重いなんて聞いてない

エヌ
恋愛
私は、幼馴染のキリアンに恋をしている。 でも聞いてしまった。 どうやら彼は、聖女様といい感じらしい。 私は身を引こうと思う。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

処理中です...