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軽くて優しい口づけ
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ガタガタと窓が鳴る。
いつの間にか雨が降り始め、風もだいぶ強くなってきていた。
台風が来ているのだから、当然と言えば当然だが。
そんな中、私の部屋で透子と二人、身を寄せ合って窓を見ていた。
窓の外は夜で、外の景色はよくわからない。
ふと視線を感じて、隣を見た。
透子は、窓ではなくて私を見ていた。
それも真剣な表情で。
何か、大事なことを私に伝えようとしていると、そう感じた。
だから私は透子に身体ごと向き直って、言葉を待った。
「あのね、そろそろおふ、おふろッ、お風呂入らない?」
ちょっと待って透子、今なんで噛んだの!?
「あ、もしかして、一緒に入るの嫌になっちゃった……?」
私のちょっとした逡巡に何を感じたのか、不安げな表情を見せる透子に、
「そんなことないよ。今日も髪を洗いっこしよ?」
高校生にもなって洗いっこだなんて、とか思う人もいるかもしれないが。
でもこれが、私と透子の当たり前、なのだ。
だから、うん。大丈夫、なんてことはない。
さっき透子が噛んだのも、きっとそうだ。そうに違いない。そうだと思いたい。
結論から言えば、お風呂はいつも通りだった。
なんとなく透子の視線が熱かったような気がしないでもなかったが、それは私が意識し過ぎというものだ。
むしろ「何か私凄く見られてる気がするんだけど?」などと透子が言い出すくらいに。
私よりサイズが二つは上の胸とか、くびれた腰とか、ほっそりとした首筋だとか、そういうところくらいしか私は見ていなかったのだから、やっぱり透子の気のせいだろうと思う。
それにしても、お風呂上がりのしっとりとした透子には、妙な色気があって困る。
私のベッドが、そこがまるで定位置です、とでも言わんばかりに座って私を見上げている。
私も私で、当然のように透子に密着して座る。
風呂上がりで、透子からは凄く良い匂いがする。
私の好きな透子の家のシャンプーではなくて、私の家のシャンプーの匂いではあるけれども、その匂いの元が透子の髪や白い柔肌からだと思うと、
「ねえ、今、何考えてるの?」
「――ッ!?」
心臓が、飛び跳ねた。
邪な考えを見抜かれているようで、――いやいや、そんなはずはない。透子は超能力者なんかじゃないぞ、大丈夫。冷静になれ私!
一瞬で心を落ち着けて、可能な限り自然な微笑みを浮かべて透子に返事を、
「私はね、こんなこと考えてるけどね」
する前に、キスをされた。
頬に軽く、親が子供にするような、そんな優しい親愛の情を表す口づけ。
「本当は、唇にしたかったのだけれど。でもそれは、嫌がられるかもなって、そう思って」
もう限界だ。私は透子の顔を見ていられなかった。
「も、もう寝よう? 電気消すね? おやすみっ」
私がベッドに潜り込んで布団をかぶる。恥ずかしくて、恥ずかしくて、もう駄目だ。
私のことを想ってくれる人がこんなにも近くにいて、こんなに色んなことをされてしまったら、もう私は、
「お邪魔するわね」
「――ッ!?」
ごくごく自然な流れで、透子がベッドに潜り込んできた。
「透子、あの、」
「どうしたの? 小さい頃はよく一緒に寝てたじゃない? ……ちょっとベッドが狭いかな? でも、」
それは、そうだが。でも今は、今だけは、
「だって、好きな人をいっぱい感じたいから。だから一緒に寝ましょう?」
何の誘いなんだ、それは。
いやいや、何の誘いでもねえよ、意識し過ぎだ私。
たかだかほっぺにキスされたくらいで、何を、
「――あ」
ベッドの中で透子の手がもぞもぞと動き、そして私は優しく抱きしめられた。
「うふふ。この家のシャンプーの匂いがするわね。私、この匂い、大好きなのよ?」
「わ、私は透子の家のシャンプーの方が好きだし……」
そう反撃するので、精一杯だった。
いつの間にか雨が降り始め、風もだいぶ強くなってきていた。
台風が来ているのだから、当然と言えば当然だが。
そんな中、私の部屋で透子と二人、身を寄せ合って窓を見ていた。
窓の外は夜で、外の景色はよくわからない。
ふと視線を感じて、隣を見た。
透子は、窓ではなくて私を見ていた。
それも真剣な表情で。
何か、大事なことを私に伝えようとしていると、そう感じた。
だから私は透子に身体ごと向き直って、言葉を待った。
「あのね、そろそろおふ、おふろッ、お風呂入らない?」
ちょっと待って透子、今なんで噛んだの!?
「あ、もしかして、一緒に入るの嫌になっちゃった……?」
私のちょっとした逡巡に何を感じたのか、不安げな表情を見せる透子に、
「そんなことないよ。今日も髪を洗いっこしよ?」
高校生にもなって洗いっこだなんて、とか思う人もいるかもしれないが。
でもこれが、私と透子の当たり前、なのだ。
だから、うん。大丈夫、なんてことはない。
さっき透子が噛んだのも、きっとそうだ。そうに違いない。そうだと思いたい。
結論から言えば、お風呂はいつも通りだった。
なんとなく透子の視線が熱かったような気がしないでもなかったが、それは私が意識し過ぎというものだ。
むしろ「何か私凄く見られてる気がするんだけど?」などと透子が言い出すくらいに。
私よりサイズが二つは上の胸とか、くびれた腰とか、ほっそりとした首筋だとか、そういうところくらいしか私は見ていなかったのだから、やっぱり透子の気のせいだろうと思う。
それにしても、お風呂上がりのしっとりとした透子には、妙な色気があって困る。
私のベッドが、そこがまるで定位置です、とでも言わんばかりに座って私を見上げている。
私も私で、当然のように透子に密着して座る。
風呂上がりで、透子からは凄く良い匂いがする。
私の好きな透子の家のシャンプーではなくて、私の家のシャンプーの匂いではあるけれども、その匂いの元が透子の髪や白い柔肌からだと思うと、
「ねえ、今、何考えてるの?」
「――ッ!?」
心臓が、飛び跳ねた。
邪な考えを見抜かれているようで、――いやいや、そんなはずはない。透子は超能力者なんかじゃないぞ、大丈夫。冷静になれ私!
一瞬で心を落ち着けて、可能な限り自然な微笑みを浮かべて透子に返事を、
「私はね、こんなこと考えてるけどね」
する前に、キスをされた。
頬に軽く、親が子供にするような、そんな優しい親愛の情を表す口づけ。
「本当は、唇にしたかったのだけれど。でもそれは、嫌がられるかもなって、そう思って」
もう限界だ。私は透子の顔を見ていられなかった。
「も、もう寝よう? 電気消すね? おやすみっ」
私がベッドに潜り込んで布団をかぶる。恥ずかしくて、恥ずかしくて、もう駄目だ。
私のことを想ってくれる人がこんなにも近くにいて、こんなに色んなことをされてしまったら、もう私は、
「お邪魔するわね」
「――ッ!?」
ごくごく自然な流れで、透子がベッドに潜り込んできた。
「透子、あの、」
「どうしたの? 小さい頃はよく一緒に寝てたじゃない? ……ちょっとベッドが狭いかな? でも、」
それは、そうだが。でも今は、今だけは、
「だって、好きな人をいっぱい感じたいから。だから一緒に寝ましょう?」
何の誘いなんだ、それは。
いやいや、何の誘いでもねえよ、意識し過ぎだ私。
たかだかほっぺにキスされたくらいで、何を、
「――あ」
ベッドの中で透子の手がもぞもぞと動き、そして私は優しく抱きしめられた。
「うふふ。この家のシャンプーの匂いがするわね。私、この匂い、大好きなのよ?」
「わ、私は透子の家のシャンプーの方が好きだし……」
そう反撃するので、精一杯だった。
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