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再会
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◆◆◆
九条は自分の部屋に戻らず、壬生の部屋に向かった。
確かアイツは寮長の特権で一人部屋のはずだ。
形だけの適当なノックをして、壬生が出てくるや否やさっさと部屋の中に入り込んだ。
突然の訪問に、壬生は随分と驚いた顔をしている。
「お前が俺のところに来るなんて珍しいな。何かあったのか?」
大きめのソファにどかりと寝転がり、壬生に何て答えようか少し考えた。
壬生とは中学からの付き合いだ。
この学校では一番距離が近い奴ではあるが、だからと言って全てを話せる関係とまでは言えない。
じっと俺を見下ろす壬生。
それなりの説明をしない限り、そこから動きそうもない。
言葉を選びつつ説明をした。
「ちかちゃんが、」
「ちかちゃん?」
「あー、ルームメイトの月島のこと。その子がしつこいんだよ」
「へぇ?」
興味を持った声色になったのに気がついた。
「さっき街に行ってたんだけど、俺のこと着けててさ。邪魔された」
「お前、まだあんな事続けてんのか」
「お説教はやめてくれ」
顔を隠すように寝返りを打った。
その態度に壬生は諦めたのか、今日のことを聞いてきた。
「で?邪魔されたって、何があったんだよ」
「客と会ってたら飛び込んできたんだよね。おかげで今日の予定が無くなったよ。本当馬鹿だと思わない?」
ふふっと笑う声がした。
思わずイラッとしてしまい、壬生を睨んだ。
「いや、良い奴じゃないか。危険かもしれないのに飛び込んで行ったんだろ?」
「なに言ってんの?ただの馬鹿でしょ」
「案外お前には、そのくらい馬鹿な奴が側にいた方が良いのかもしれない」
その言葉につい反応してしまう。
アイツだけは駄目だ。関わってはいけない。
あの初めて会った日、一目見てすぐに分かった。
小さくて華奢な体にあの雰囲気。
少し癖っ毛の綺麗な黒髪は、嫌というほど見覚えがある。
小さい頃からずっと俺の中に現れてきた、煩わしい存在。
俺じゃない俺の中の『誰か』が、恋焦がれる存在。それがアイツだ。
俺の人生のどこかで会うことになるだろうことは、何となく予感していた。
(でも、まさかこんなに早く会うことになるなんて思うわけねぇーだろ…)
苦々しい気持ちが湧いてきて、思わず拳を握った。
「それで?月島はどうしてるんだ?」
「んー?もう部屋に帰ってるんじゃない?俺より先に戻ったから」
「なるほど。ならお前も部屋に戻れ」
「え、酷くない?一晩ここに居させてよ」
「嫌だね。ここはお前の部屋じゃない。ちゃんと自分の部屋で寝ろ。宿直の先生に言うぞ」
「…ケチ」
教師の耳に入るのは避けたい。
少し粘ってみたがガンとして泊まらせてくれそうにない壬生に悪態をつき、大人しく部屋に戻ることにした。
「月島と仲良くな」
「まあ、無理だね」
去り際に冷たく言葉を返して、だらだらと自室へ向かう。
その途中、頭の中は月島のことを考えていた。
アイツが俺を気にかけるのは、きっとアイツの中にも居るであろう『誰か』の影響があるのかもしれない。
あの様子を見るに、俺みたいにいつだかの記憶を見ることは無いみたいだけど。
このまま何も知らなくていい。
俺たちは他人のままでいい。
お互い、あまり近づくべきではない。
…そう思うのに、何も考えず、ただ感情のままに俺を助けようとした月島のことを嫌いにはなれなかった。
(あークソッ。だから関わるのは嫌だったんだ)
感情が落ち着かないまま部屋に着くと、電気はついておらず、シンとしていた。
月島は自分の部屋にいるのかとも思ったが、物音一つしない。
…おかしい。もう寮に帰って来ているはずだ。
「…島さん……なら、やりかねないか」
このまま知らん顔をすることも出来る。
『俺に関わるな』と忠告もしているし、そこまで面倒を見てやる必要はない。
しかし、俺がキッカケで後味の悪い事になったら、壬生に小言を言われてしまいそうだ。
寝覚めも悪い。
スマホを取り出して島さんに電話をかけつつ、俺はまた部屋を出た。
九条は自分の部屋に戻らず、壬生の部屋に向かった。
確かアイツは寮長の特権で一人部屋のはずだ。
形だけの適当なノックをして、壬生が出てくるや否やさっさと部屋の中に入り込んだ。
突然の訪問に、壬生は随分と驚いた顔をしている。
「お前が俺のところに来るなんて珍しいな。何かあったのか?」
大きめのソファにどかりと寝転がり、壬生に何て答えようか少し考えた。
壬生とは中学からの付き合いだ。
この学校では一番距離が近い奴ではあるが、だからと言って全てを話せる関係とまでは言えない。
じっと俺を見下ろす壬生。
それなりの説明をしない限り、そこから動きそうもない。
言葉を選びつつ説明をした。
「ちかちゃんが、」
「ちかちゃん?」
「あー、ルームメイトの月島のこと。その子がしつこいんだよ」
「へぇ?」
興味を持った声色になったのに気がついた。
「さっき街に行ってたんだけど、俺のこと着けててさ。邪魔された」
「お前、まだあんな事続けてんのか」
「お説教はやめてくれ」
顔を隠すように寝返りを打った。
その態度に壬生は諦めたのか、今日のことを聞いてきた。
「で?邪魔されたって、何があったんだよ」
「客と会ってたら飛び込んできたんだよね。おかげで今日の予定が無くなったよ。本当馬鹿だと思わない?」
ふふっと笑う声がした。
思わずイラッとしてしまい、壬生を睨んだ。
「いや、良い奴じゃないか。危険かもしれないのに飛び込んで行ったんだろ?」
「なに言ってんの?ただの馬鹿でしょ」
「案外お前には、そのくらい馬鹿な奴が側にいた方が良いのかもしれない」
その言葉につい反応してしまう。
アイツだけは駄目だ。関わってはいけない。
あの初めて会った日、一目見てすぐに分かった。
小さくて華奢な体にあの雰囲気。
少し癖っ毛の綺麗な黒髪は、嫌というほど見覚えがある。
小さい頃からずっと俺の中に現れてきた、煩わしい存在。
俺じゃない俺の中の『誰か』が、恋焦がれる存在。それがアイツだ。
俺の人生のどこかで会うことになるだろうことは、何となく予感していた。
(でも、まさかこんなに早く会うことになるなんて思うわけねぇーだろ…)
苦々しい気持ちが湧いてきて、思わず拳を握った。
「それで?月島はどうしてるんだ?」
「んー?もう部屋に帰ってるんじゃない?俺より先に戻ったから」
「なるほど。ならお前も部屋に戻れ」
「え、酷くない?一晩ここに居させてよ」
「嫌だね。ここはお前の部屋じゃない。ちゃんと自分の部屋で寝ろ。宿直の先生に言うぞ」
「…ケチ」
教師の耳に入るのは避けたい。
少し粘ってみたがガンとして泊まらせてくれそうにない壬生に悪態をつき、大人しく部屋に戻ることにした。
「月島と仲良くな」
「まあ、無理だね」
去り際に冷たく言葉を返して、だらだらと自室へ向かう。
その途中、頭の中は月島のことを考えていた。
アイツが俺を気にかけるのは、きっとアイツの中にも居るであろう『誰か』の影響があるのかもしれない。
あの様子を見るに、俺みたいにいつだかの記憶を見ることは無いみたいだけど。
このまま何も知らなくていい。
俺たちは他人のままでいい。
お互い、あまり近づくべきではない。
…そう思うのに、何も考えず、ただ感情のままに俺を助けようとした月島のことを嫌いにはなれなかった。
(あークソッ。だから関わるのは嫌だったんだ)
感情が落ち着かないまま部屋に着くと、電気はついておらず、シンとしていた。
月島は自分の部屋にいるのかとも思ったが、物音一つしない。
…おかしい。もう寮に帰って来ているはずだ。
「…島さん……なら、やりかねないか」
このまま知らん顔をすることも出来る。
『俺に関わるな』と忠告もしているし、そこまで面倒を見てやる必要はない。
しかし、俺がキッカケで後味の悪い事になったら、壬生に小言を言われてしまいそうだ。
寝覚めも悪い。
スマホを取り出して島さんに電話をかけつつ、俺はまた部屋を出た。
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