白色のダリア

ななしの

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違和感

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◆◆◆
夜が更けていく中、月島はリビングでゲームをしていた。
たまに外から笑い声や遠くの車の音が聞こえてくるが、それ以外はほとんど静か。
夜ならではのこの静寂が結構お気に入りだ。
残念ながら今日は切らしているが、ゲームのお供にお菓子も用意してあったら文句なし。最高だ。

夜中の2時を回ったころ、休憩がてら飲み物を取りに行こうとして、ふと九条くんがまだ帰ってきていないことに気づいた。
いつものように『お金を稼ぎに』行っているのならともかく、今日は違うっぽかった。

(…まあ、休みの日に何してたとしても他人が口出せないしなぁ)

でも彼の場合は、ちょっと羽目を外しちゃったとかそういう可愛いものではなく、良くない事をしているのは確実なわけで。

…今晩帰って来なかったら、流石に壬生に報告しよう。何かあってからじゃ遅い。
そんなことを考えながらコップにジュースを注いでいた時、乱暴に玄関の扉が開いた音がした。
その後にどすん、という鈍い音。
何事かと慌てて玄関に行けば、座り込む九条くんの姿があった。


「え、九条くん!どうしたの?」


声をかけても反応のない九条くんの横に駆け寄る。
また喧嘩して怪我でもしてしまったのかと思ったが、アルコールの匂いが鼻をつき、それが原因なのだと分かった。


「お酒の匂い凄いんだけど!飲んだの?もしかして今酔ってる?」


間近で大きな声を出されて不快だったのか、いかにも不機嫌そうな顔をこっちに向けられた。


「…何?」

「いや、何じゃないよ。飲酒はバレたらヤバいって。なんでそんなに立てなくなるまで飲んだの。…まさか、あの島って人に付き合わされたとか?」

「違う」


俺の顔をじっと見つめながら、ゆっくりと話し始めた。


「椛と会って、」

「もみじ?」

「セックスして、」

「……えっ、と、反応に困るんですけど」


いきなり飛び出た予想もしていなかった単語に思考が一旦止まったが、そんな俺の動揺は完璧に無視された。


「なんか気分良くなくて、」

「うん」

「酒飲んできた」


そこまで話し終わると、壁に頭を預けて目を閉じる。
その態勢、もしかしてこのまま寝る気では?
九条くんは案外こういうお酒の飲み方をするのだろうか?
高校生なのにやり過ぎだ。
それに、彼の場合はこれだけじゃない。
喧嘩もして、何回も寮を抜け出すというルール違反もして、変なお金の稼ぎ方して。

(体も心配だけど、このままじゃ退学になっちゃう可能性も高いんじゃ…)

何か俺に出来ることは…。
未だ静かに目を閉じたままの九条くんを見ながら考えてみる。
そして一つだけ、ある提案を思いついた。


「九条くん、俺がお金を出すよ」


その言葉に、ゆっくりと視線だけをこっちに投げてきた。


「……あ?」


あまりに冷ややかな声に怯むが、もう口に出しちゃった以上引き下がれない。


「前にあの島って人から聞いた。お金のやり取りしてるんでしょ?なら、俺が九条くんの時間を買う」

「…どんだけバカなこと言ってんのか自覚ある?俺が客と何してんのかも知らないくせに?なんなら教えてあげよっか?」


そう言うと俺の首の後ろに手を回し、ぐいっと引っ張られた。
気づいた時には九条くんの顔がゼロ距離にあり、唇には温かい感触。
それがキスだと理解するまでに時間がかかった。
食むような動きで息がだんだん苦しくなってくる。
逃れようとするが、がっちりと掴まれた手がそれを許さなかった。

しばらくされるがままだったが、やっと離された時には息も絶え絶えだった。


「な、なんでいきなりキスしてくんの…!」

「教えてあげるって言ったでしょ。
良いよ、その提案乗ってあげる。ムカついたから泣かす。これからこれ以上の事されても文句言えないからね」

「そ、そういう事をするために言い出したんじゃないんだけど…」

「これはビジネスなんだよ、ちかちゃん。俺は『こういう関係』を売ってる。ちかちゃんは何も知らないくせにそれを買うって言った」


その説明に何も返せないでいると、九条くんは『だからバカだって言ってるんだよ』と吐き捨てて立ち上がった。


「男に二言は無いな?一晩一万。いつでもお待ちしてますお客様」


…また怒らせた。
『友達』を目指してたはずが、『客』になってしまった。
でも、これでほんの少しでも九条くんの危ない事をする時間が減れば…。
なんでか分からないがじんわりと涙が浮かんでくる。
九条くんにバレないように手の甲で拭うと、リビングに戻った。
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