22 / 25
違和感
4
しおりを挟む
◆◆◆
夜が更けていく中、月島はリビングでゲームをしていた。
たまに外から笑い声や遠くの車の音が聞こえてくるが、それ以外はほとんど静か。
夜ならではのこの静寂が結構お気に入りだ。
残念ながら今日は切らしているが、ゲームのお供にお菓子も用意してあったら文句なし。最高だ。
夜中の2時を回ったころ、休憩がてら飲み物を取りに行こうとして、ふと九条くんがまだ帰ってきていないことに気づいた。
いつものように『お金を稼ぎに』行っているのならともかく、今日は違うっぽかった。
(…まあ、休みの日に何してたとしても他人が口出せないしなぁ)
でも彼の場合は、ちょっと羽目を外しちゃったとかそういう可愛いものではなく、良くない事をしているのは確実なわけで。
…今晩帰って来なかったら、流石に壬生に報告しよう。何かあってからじゃ遅い。
そんなことを考えながらコップにジュースを注いでいた時、乱暴に玄関の扉が開いた音がした。
その後にどすん、という鈍い音。
何事かと慌てて玄関に行けば、座り込む九条くんの姿があった。
「え、九条くん!どうしたの?」
声をかけても反応のない九条くんの横に駆け寄る。
また喧嘩して怪我でもしてしまったのかと思ったが、アルコールの匂いが鼻をつき、それが原因なのだと分かった。
「お酒の匂い凄いんだけど!飲んだの?もしかして今酔ってる?」
間近で大きな声を出されて不快だったのか、いかにも不機嫌そうな顔をこっちに向けられた。
「…何?」
「いや、何じゃないよ。飲酒はバレたらヤバいって。なんでそんなに立てなくなるまで飲んだの。…まさか、あの島って人に付き合わされたとか?」
「違う」
俺の顔をじっと見つめながら、ゆっくりと話し始めた。
「椛と会って、」
「もみじ?」
「セックスして、」
「……えっ、と、反応に困るんですけど」
いきなり飛び出た予想もしていなかった単語に思考が一旦止まったが、そんな俺の動揺は完璧に無視された。
「なんか気分良くなくて、」
「うん」
「酒飲んできた」
そこまで話し終わると、壁に頭を預けて目を閉じる。
その態勢、もしかしてこのまま寝る気では?
九条くんは案外こういうお酒の飲み方をするのだろうか?
高校生なのにやり過ぎだ。
それに、彼の場合はこれだけじゃない。
喧嘩もして、何回も寮を抜け出すというルール違反もして、変なお金の稼ぎ方して。
(体も心配だけど、このままじゃ退学になっちゃう可能性も高いんじゃ…)
何か俺に出来ることは…。
未だ静かに目を閉じたままの九条くんを見ながら考えてみる。
そして一つだけ、ある提案を思いついた。
「九条くん、俺がお金を出すよ」
その言葉に、ゆっくりと視線だけをこっちに投げてきた。
「……あ?」
あまりに冷ややかな声に怯むが、もう口に出しちゃった以上引き下がれない。
「前にあの島って人から聞いた。お金のやり取りしてるんでしょ?なら、俺が九条くんの時間を買う」
「…どんだけバカなこと言ってんのか自覚ある?俺が客と何してんのかも知らないくせに?なんなら教えてあげよっか?」
そう言うと俺の首の後ろに手を回し、ぐいっと引っ張られた。
気づいた時には九条くんの顔がゼロ距離にあり、唇には温かい感触。
それがキスだと理解するまでに時間がかかった。
食むような動きで息がだんだん苦しくなってくる。
逃れようとするが、がっちりと掴まれた手がそれを許さなかった。
しばらくされるがままだったが、やっと離された時には息も絶え絶えだった。
「な、なんでいきなりキスしてくんの…!」
「教えてあげるって言ったでしょ。
良いよ、その提案乗ってあげる。ムカついたから泣かす。これからこれ以上の事されても文句言えないからね」
「そ、そういう事をするために言い出したんじゃないんだけど…」
「これはビジネスなんだよ、ちかちゃん。俺は『こういう関係』を売ってる。ちかちゃんは何も知らないくせにそれを買うって言った」
その説明に何も返せないでいると、九条くんは『だからバカだって言ってるんだよ』と吐き捨てて立ち上がった。
「男に二言は無いな?一晩一万。いつでもお待ちしてますお客様」
…また怒らせた。
『友達』を目指してたはずが、『客』になってしまった。
でも、これでほんの少しでも九条くんの危ない事をする時間が減れば…。
なんでか分からないがじんわりと涙が浮かんでくる。
九条くんにバレないように手の甲で拭うと、リビングに戻った。
夜が更けていく中、月島はリビングでゲームをしていた。
たまに外から笑い声や遠くの車の音が聞こえてくるが、それ以外はほとんど静か。
夜ならではのこの静寂が結構お気に入りだ。
残念ながら今日は切らしているが、ゲームのお供にお菓子も用意してあったら文句なし。最高だ。
夜中の2時を回ったころ、休憩がてら飲み物を取りに行こうとして、ふと九条くんがまだ帰ってきていないことに気づいた。
いつものように『お金を稼ぎに』行っているのならともかく、今日は違うっぽかった。
(…まあ、休みの日に何してたとしても他人が口出せないしなぁ)
でも彼の場合は、ちょっと羽目を外しちゃったとかそういう可愛いものではなく、良くない事をしているのは確実なわけで。
…今晩帰って来なかったら、流石に壬生に報告しよう。何かあってからじゃ遅い。
そんなことを考えながらコップにジュースを注いでいた時、乱暴に玄関の扉が開いた音がした。
その後にどすん、という鈍い音。
何事かと慌てて玄関に行けば、座り込む九条くんの姿があった。
「え、九条くん!どうしたの?」
声をかけても反応のない九条くんの横に駆け寄る。
また喧嘩して怪我でもしてしまったのかと思ったが、アルコールの匂いが鼻をつき、それが原因なのだと分かった。
「お酒の匂い凄いんだけど!飲んだの?もしかして今酔ってる?」
間近で大きな声を出されて不快だったのか、いかにも不機嫌そうな顔をこっちに向けられた。
「…何?」
「いや、何じゃないよ。飲酒はバレたらヤバいって。なんでそんなに立てなくなるまで飲んだの。…まさか、あの島って人に付き合わされたとか?」
「違う」
俺の顔をじっと見つめながら、ゆっくりと話し始めた。
「椛と会って、」
「もみじ?」
「セックスして、」
「……えっ、と、反応に困るんですけど」
いきなり飛び出た予想もしていなかった単語に思考が一旦止まったが、そんな俺の動揺は完璧に無視された。
「なんか気分良くなくて、」
「うん」
「酒飲んできた」
そこまで話し終わると、壁に頭を預けて目を閉じる。
その態勢、もしかしてこのまま寝る気では?
九条くんは案外こういうお酒の飲み方をするのだろうか?
高校生なのにやり過ぎだ。
それに、彼の場合はこれだけじゃない。
喧嘩もして、何回も寮を抜け出すというルール違反もして、変なお金の稼ぎ方して。
(体も心配だけど、このままじゃ退学になっちゃう可能性も高いんじゃ…)
何か俺に出来ることは…。
未だ静かに目を閉じたままの九条くんを見ながら考えてみる。
そして一つだけ、ある提案を思いついた。
「九条くん、俺がお金を出すよ」
その言葉に、ゆっくりと視線だけをこっちに投げてきた。
「……あ?」
あまりに冷ややかな声に怯むが、もう口に出しちゃった以上引き下がれない。
「前にあの島って人から聞いた。お金のやり取りしてるんでしょ?なら、俺が九条くんの時間を買う」
「…どんだけバカなこと言ってんのか自覚ある?俺が客と何してんのかも知らないくせに?なんなら教えてあげよっか?」
そう言うと俺の首の後ろに手を回し、ぐいっと引っ張られた。
気づいた時には九条くんの顔がゼロ距離にあり、唇には温かい感触。
それがキスだと理解するまでに時間がかかった。
食むような動きで息がだんだん苦しくなってくる。
逃れようとするが、がっちりと掴まれた手がそれを許さなかった。
しばらくされるがままだったが、やっと離された時には息も絶え絶えだった。
「な、なんでいきなりキスしてくんの…!」
「教えてあげるって言ったでしょ。
良いよ、その提案乗ってあげる。ムカついたから泣かす。これからこれ以上の事されても文句言えないからね」
「そ、そういう事をするために言い出したんじゃないんだけど…」
「これはビジネスなんだよ、ちかちゃん。俺は『こういう関係』を売ってる。ちかちゃんは何も知らないくせにそれを買うって言った」
その説明に何も返せないでいると、九条くんは『だからバカだって言ってるんだよ』と吐き捨てて立ち上がった。
「男に二言は無いな?一晩一万。いつでもお待ちしてますお客様」
…また怒らせた。
『友達』を目指してたはずが、『客』になってしまった。
でも、これでほんの少しでも九条くんの危ない事をする時間が減れば…。
なんでか分からないがじんわりと涙が浮かんでくる。
九条くんにバレないように手の甲で拭うと、リビングに戻った。
0
あなたにおすすめの小説
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
告白ごっこ
みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。
ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。
更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。
テンプレの罰ゲーム告白ものです。
表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました!
ムーンライトノベルズでも同時公開。
先輩たちの心の声に翻弄されています!
七瀬
BL
人と関わるのが少し苦手な高校1年生・綾瀬遙真(あやせとうま)。
ある日、食堂へ向かう人混みの中で先輩にぶつかった瞬間──彼は「触れた相手の心の声」が聞こえるようになった。
最初に声を拾ってしまったのは、対照的な二人の先輩。
乱暴そうな俺様ヤンキー・不破春樹(ふわはるき)と、爽やかで優しい王子様・橘司(たちばなつかさ)。
見せる顔と心の声の落差に戸惑う遙真。けれど、彼らはなぜか遙真に強い関心を示しはじめる。
****
三作目の投稿になります。三角関係の学園BLですが、なるべくみんなを幸せにして終わりますのでご安心ください。
ご感想・ご指摘など気軽にコメントいただけると嬉しいです‼️
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
君に不幸あれ。
ぽぽ
BL
「全部、君のせいだから」
学校でも居場所がなく、家族に見捨てられた男子高校生の静。
生きる意味を失いかけた時に屋上で出会ったのは、太陽に眩しい青年、天輝玲だった。
静より一つ年上の玲の存在は、静の壊れかけていた心の唯一の救いだった。
静は玲のことを好きになり、静の告白をきっかけに二人は結ばれる。
しかしある日、玲の口から聞いた言葉が静の世界を一瞬で反転させる。
玲に対する感情は信頼から憎悪へと変わった。
それから十年。
かつて自分を救った玲に再会した静は玲に対して同じ苦しみを味合わせようとする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる