ジュエリー戦士Shining Guardians

岩下穂乃香

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第30話 夢の新たな決意と力

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「ホーフー、俺は戦士を倒してこいと命令している。心の輝きは後1900人分必要だが、それ以外にもしっかりと手柄を立ててくるのだ!」
大魔王は、ホーフーに向かって言った。ホーフーは頭を抱えながら、出撃していく。大魔王の言葉にホーフーは耳にたこができそうだった。

 夢の女優デビュー作、「恋はアップルティーと共に」が映画館で公開され始めた。夢は映画の舞台挨拶で各地を巡り大忙し。映画の評価はとても良く、夢は新たに来年1月開始のドラマの主人公役のオファーも得ることができた。仕事が忙しくなり、学校に通える日数は減ってしまったが夢は今の生活に充実感を感じていた。そんな中での久しぶりの新曲のレコーディングの仕事。主人公を務めるドラマの主題歌に起用される予定の曲だ。いつも通りレコーディングに夢は挑むが、歌っている間ずっと違和感のようなものが変な気持ちが夢の心の中に高まっていく。以前はとても楽しかった歌の仕事が楽しいと思えず、演技の仕事への思いが心の中で高まっていった。そんな気持ちで歌った歌は一発でOKが出ず、夢は何回もレコーディングを行う。何時間もかけてやっと夢はOKをもらうことができた。いつもと違う夢の様子に帰りの車でマネージャーが、
「なんか今日、いつもと違う感じがしたけどどうかしたの?」
と聞いてくる。夢は
「なんか歌に仕事が楽しいって思えなくなったような気がして…」
と答える。マネージャーは夢の言葉にびっくりして、夢を歌の仕事に興味を持たせようとする。そんなマネージャーの言葉に夢はうんざりして、ますます歌から気持ちが離れていった。

 そんな日々を過ごす中、久しぶりに平日オフの日ができて夢は学校に行く。愛華ちゃん、希実ちゃん、優美さんに校内で会うと、愛華ちゃんが
「映画観ました! もう私、感動しちゃって…。これからも夢ちゃんのことを応援します」
とテンションの高い声で夢に言ってくる。夢は
「ありがとう…」
と答えるが、愛華ちゃんたちにいつもよりも夢が暗いことを感づかれる。優美さんが
「夢ちゃん、どうかされたの? 何か悩み事があるように感じるけど、気のせいかしら?」
と聞いてくる。夢はこんなことを相談していいものなのか悩んだが、愛華ちゃんの夢を見る特に心配そうな顔に少しずつ話始める。
「私、歌とモデルの仕事を今まで中心にやって来たけど、女優の仕事を今回初めてやってみてお芝居の仕事ってこんなに楽しいんだって思ったの。まだ経験は少ないけど、これからもっと女優の仕事をもっとやってみたい、勉強してみたいって気持ちが溢れてきている。でもその気持ちが深まれば深まるほど、歌への気持ちが離れていく気がするの。自分でもなんでそうなるのかよく分からないし、マネージャーはそんな私の気持ちを無視している気がするの。自分がこれからどうしていきたいのか分からない」
夢はいつの間にか本音を全てぶちまけていた。それに愛華ちゃんが笑顔で、
「私、ライブでの夢ちゃんと映画の夢ちゃんと両方見たけど、どっちも夢ちゃんは輝いて見えていたと思うよ。希実と優美さんはどう思う?」
と言う。
「私も愛華の気持ちに同感だけど、今こうして近くにいる存在として夢ちゃんのことが憧れの存在から親しみを持てる存在に変わったと思う。私が完璧な人間なんていない、誰しも悩みを抱えているってことに改めて気づけた存在な気がする」
希実ちゃんはなにか照れくさそうに言ってくる。優美さんは
「私、愛華ちゃんと希実ちゃんと出会うまであんまり芸能人とか詳しくなくて、ライブのキーボードをお手伝いした時に夢ちゃんの色々な曲を初めて聞いたけど、夢ちゃんの気持ちが溢れていてどの曲も素敵だなって思えたの。映画の撮影見学した時も、途中で体調悪くしてしまって迷惑かけたと思うけど、夢ちゃんの演技にかける真剣さがとても伝わってきたと思う。夢ちゃんがお仕事にかける思いは伝わってくるから、今一番楽しいと思える方をやっていくのがモチベーションにもつながっていくと私は思うわ」
と言って、微笑む。
「みんなありがとう。私、マネージャーにもう一回自分の気持ちをしっかりと今度伝える。今は女優の仕事をたくさんして、演技の勉強をしたい。歌から完全に離れるわけじゃないから、女優の仕事にしばらく集中したいって気持ちがはっきりした気がするの。いいかな?」
夢の気持ちに愛華ちゃんたちが笑顔で頷く。明日はドラマの撮影開始日。マネージャーに会う機会はあるだろうから、夢は明日気持ちを伝えることを心に決める。そのとき校舎の外から大きな地響きが聞こえる。夢が愛華ちゃんたちと窓から外をのぞくと、グラウンドの方にメガトイフルがいるのを見つける。近くには心の輝きを奪われて倒れている人がいる。夢は愛華ちゃんたちと急いでグラウンドに向かい、
「ルビーパワーチャージ、シャイニング・フォルティッシモ」
「トパーズパワーチャージ、シャイニング・フォルティッシモ」
「サファイアパワーチャージ、シャイニング・フォルティッシモ」
「アメジストパワーチャージ、シャイニング・フォルティッシモ」
「炎と愛の戦士、シャイニールビー」
「光と希望の戦士、シャイニートパーズ」
「水と誠実の戦士、シャイニーサファイア」
「癒しと創造の戦士、シャイニーアメジスト」
と変身する。ホーフーが心の輝きを奪われて倒れた人を見下すように
「こいつらの将来の夢が何かは知らないが、勉強をし続けるなんて実に下らない。ただ無心に大魔王様にひれ伏すことこそが素晴らしいことなのだ」
と言う。アメジストがホーフーの言葉に怒りを覚え、
「勉強は自分のやりたいことにつながることもあるの。私は女優の仕事を大切にしていきたい。そのためにもっと演技のこととか学んでいきたいの」
と言うと、突然アメジストのシャイニング・アローが光り始めた。シャイニング・アローを握ると、自然と力が湧き
「アメジスト・ヒール」
と言葉が口から出て、メガトイフルとホーフーに攻撃が当たる。メガトイフルは倒され、ホーフーは少しダメージを受けて去っていった。しばらくして心の輝きを奪われた人も目を覚まし、アメジストはルビーたちと共に安心して変身を解除する。愛華ちゃんが、
「夢ちゃん、大活躍ですね。その力どうしたんですか?」
と聞いてくる。夢は首をかしげながら、
「私もよく分からないの。ホーフーに自分の気持ちをぶつけたら、急にシャイニング・アローが光り始めたから。」
と言う。その時後ろから、
「それはアメジストの本当にやりたいことで心の輝きが満たされたからです」
夢が振り向くと、そこにはプリンセスとクォーツがいた。
「そういえばプリンセスが前にそんなこと言っていた気がするけど。」
夢はプリンセスが言ったことを思い出そうとする。
「プリンセスは本当にやりたいことで心の輝きが満たされるとより強い力を発揮できると言っていたクク。きっとこの調子で全員が強い力を手に入れられれば、大魔王を倒せるって信じているクク」
クォーツは夢たちに言ってくる。愛華と希実は将来どうしたいか全然決まっていないようなことを前に言っていたが、優美さんはやりたいことがほぼ明確に決まっていたはず。夢は自分が最初に強い力に目覚めたことが不思議だった。

 次の日の撮影、夢は思い切ってマネージャーに本当の気持ちを全て打ち明ける。夢の真剣な気持ちにマネージャーは折れたようだった。女優の仕事を勉強していく。夢は新たな仕事への一歩を踏み出したような気がした。
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