崩壊した世界からの脱出 -ボクたちはセックスしか知らない-

空倉霰

文字の大きさ
24 / 139
第四章

倉庫

しおりを挟む
 ボクはシロの言う通り、別の通路を進んだ。今まで進んできた所よりも、少し幅が広くて。地面や床が、鉄とかで出来た厳重な道。
 歩く度に、足の裏が冷たくて。でも時々、ぬるっとして。そしてどうしてぬるっとしたのか、足元を見てみると。そこには首の無い誰かの死体が、転がっていた。ボクは、その人の血を踏んでいた。
「……」
 きっと、ついさっきまで生きていたんだろう。まだ血が暖かいし、水気がある。
 でも不思議と、そこまでの恐怖は感じなかった。あの意味の分からない化け物と違って、これはすごくわかりやすい。もう、死んでいる。ただそれだけだったから。
「……そこに、入ろう」
 さらにしばらく進むと、シロが近くの扉を指さした。だからボクは、その扉をゆっくりと開けた。
 どうやらここは、倉庫になっているようで。よくわからないけど、色々な道具や、荷物や、機械がある。奥にはコンテナや鉄の箱とかが山積みになっていて、隠れられそうな場所が沢山あった。
「シロ、座れる……?」
 ボクは部屋の奥に進んで、大きなコンテナの裏にシロを座らせた。シロは息苦しそうにしてて、布から血が漏れ出している。
「布、足さなきゃ……」
 そしてボクが、またお洋服を破ろうとすると。シロがボクの腕を掴んだ。
「駄目だよ。それ以上は、もったいないから」
「でもそれじゃあ、シロが……」
「ありがとう。その気持ちだけで、十分だよ」
 ……シロは、笑顔だ。その笑顔が、少し、ボクには悲しくて。
「それより、僕は僕で探してみるから……。クロは食べ物を探してみたらどうかな。倉庫だから、色々あるかも」
 その言葉で、ボクは前のことを思い出した。……あれから、食欲がわかない。あの後から、何も食べていなかった。
 でも、またお腹が鳴ったらいけないので。ボクは何かを食べておこうと思った。とりあえず、お腹に入れる形で。
「じゃあ、ちょっと探してみるね。……一人で、大丈夫?」
「うん、大丈夫。……よかったら僕の分もお願い」
「わかった」
 そうしてボクは、シロと別れて。薄暗い倉庫を探し回った。壁についてる、緑色の淡い光を頼りに。箱の中とか、コンテナの中とか。……よく、見えなかったけど。
 そこでボクは、とある一つのことに気が付いた。それは、何が食べられるのかわからないということ。ボクが食べたことのあるのは、シチューとパンくらい。だからそれ以外の何が”食べ物”なのか、判別がつかなかった。
 これはどうだろう。箱の中にいっぱい入ってた。丸っこくて、小さい。それに、何か文字が書いてある。カタカナで、”カンパン”って。取ってのようなものがついてるけど……。きっと、食べられないんだろう。だってこれ、鉄の匂いがするから。
 こっちはどうだろう。さっきのとは違って、柔らかい。ぷにぷにしてる。でも、なんだろう。……”レト……ルト”? ああ、やっぱりだめだ。意味が分からない。何か、他にないだろうか。せめて食べられそうな、匂いがするもの。
『ガタッ』
 ! ……、音がした。部屋の、奥の方で。今シロは、ボクとは逆方向の所に居るから。シロじゃない。
 思わずボクは、声をあげそうになったけど。必死に自分の口を押えた。そして、尻餅をつきながら、後ずさりをした。
『ガコッパキパキッ』
 ……、聞いたことない音がする。何の音だろう。
『あぐっ……、はぐっ……』
 ――、声?
『……いそ……きゃ……』
 化け物も、喋るのだろうか。よくわからないけど、何か言葉のようなものが、うっすらと聞こえる。
 その時だった。ボクは後ずさりをする中で、床に転がっていた何かに、ぶつかってしまった。
『カランッカラカラカラ……』
『ひっ!?』
 ……それは、ボクの声じゃなかった。ボクも驚いていたけど、何とか喉の奥で、押しとどめていたから。
 それに、今の。なんだか人間の、声だったような気がする。……もしかして、ボクら以外にも、誰かが?
『うう……うう……』
 小さな声。なんだか、怖がっているような気がして。……だからボクは、ゆっくりと、声のする方に近づいて……。暗がりを、覗いてみた。
「……。……君は、誰?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

処理中です...