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第四章
邂逅
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それは、”誰か”だった。ボクと同じように、手があって、足があって。同じ子供のように見えていた。
その子は両手を頭にのせて、震えている。自分の顔を膝で隠しながら、怯えている。
「……ね、ねえ。……君は……」
「ひっ!」
ボクが声をかけると、その子はもっと身体を小さくして。もっと暗い場所に行ってしまった。
「だ、大丈夫だよ。ボクは、人間だよ。……怖く、ないよ」
それでもボクは、その子を落ち着かせようとして。必死に声をかけた。何とか頑張って、安心してほしくて。
するとその子は、ゆっくりと顔をあげて。ボクの方を見た。ボクの方からは、その子の顔はよく見えなかったけど。向こうからは、ボクの顔が見えているのだろう。
「……誰?」
「……えっと、ボクは……。ボクは、……クロ。クロ、だよ」
これが、初めての自己紹介だった。シロと出会う前は、意識していなかったコト。
「……黒……? ……変な、お名前」
「……そう、かな?」
するとその子は、ゆっくりと影から顔を出した。……髪の毛が、長くて。ボクよりも、少し身体が小さくて。目の辺りに、何か変わったものがついている。……丸い、ガラスみたいな。
「……君は、誰?」
「……私は……。私は、メア。メア、だよ」
メア。メア。……よく、わからない。
「ねえ、君はここで……何をしてるの?」
「えっと、その。お腹が空いちゃって……」
ふと、メアの足元を見た。そこにはさっきの箱に入ってた、丸くて小さいものが転がっていた。蓋が開いていて、中には何かが入っている。つまりこれは、何かを入れておくための入れ物だったのだ。
「カンパンしか見つけられなかったけど、もう何日も食べてなかったから……」
「……カンパン? それって、食べ物なの?」
「え? あ、うん。……食べたこと、ないの?」
聞いたことがない。知らない。絵本でも見たことがない。
「食べて、みる? まだ沢山、あるから」
するとメアは、そのカンパン……が入った、丸い入れ物を差し出した。中には、薄茶色の長方形みたいなものが何個も入ってて。ボクは恐る恐る、それを一つ取った。なんというか、とても、硬い。
「……本当に、食べられるの?」
「うん。私たちは、いつもそれを食べてたから」
うまく、理解出来なかったけど。でもボクは、食べてみることにした。変な匂いはしないし、あの白いのが入ってる様子もなかったから。
まずボクはカンパンを、前歯で甘噛みしてみた。噛んでみた感じは、かちかちになったパンみたいな。だから、奥歯で噛んでみて。かみ砕いてみる。
「……どう?」
ボリボリという音がする。それを聞いてか、メアがボクに感想を聞いていた。そしてしばらく噛み続けて、飲み込んでみて。それからボクは、ようやく返事をした。
「――とっても、美味しい!」
こんなの、食べたことない。少し硬いけど、いざ噛んでみれば、ボロボロと簡単に崩れて。どうしてだか、その硬さ具合と噛み砕く触感が、とても心地いい。
味も、ボクの知らない味だった。少なくとも、あのパンやシチューなんかじゃ、比べ物にならないくらい。とっても、とっても。美味しかった。
「黒って、不思議だね。カンパンも食べたことないの?」
「……うん。いつもずっと、変な物ばかりだったから」
「そう……。じゃあ、これあげるよ。私は、他のを開けるから」
するとメアは、入れ物ごと全部ボクに渡してくれた。いいのかな、と思っていると。既にメアは、まだ開いてない新しいやつを手に取っていた。
「……ありがとう!」
シロにも、分けてあげよう。美味しい物を食べれば、きっと、元気が出る。
「ねえ、シロ。シロ!」
ボクは、少し部屋の中央に戻って。シロを探してみた。するとシロは、どこかの鉄の箱からひょっこりと顔を出して。ボクと目を合わせた。
「どうしたの? 何か見つけた?」
「うん、これを見て!」
ボクは入れ物を、シロに差し出す。
「あ、カンパンかあ。長持ちするから、いいよね」
「美味しいんだよ。そこで、貰ったの」
「――貰った?」
そしてボクは、少し戻ってメアの手を握った。少し強引だったけど、メアの手を引っ張って。シロの所まで連れてって。二人を、会わせた。そして、紹介した。
「シロ、この子は、メアって言うんだ。そこで会ったんだよ」
「……メア?」
「うん。ねえ、メア。この子は、シロ。ボクの、お友達だよ」
なんだか、嬉しかった。お友達にお友達を紹介するなんて、初めてだったから。
二人は、少し見つめ合ってた。きっと、恥ずかしがってるんだろう。中々、口を開かない。
「――メア、ね。……よろしく」
「……うん。よろしく、――白」
その子は両手を頭にのせて、震えている。自分の顔を膝で隠しながら、怯えている。
「……ね、ねえ。……君は……」
「ひっ!」
ボクが声をかけると、その子はもっと身体を小さくして。もっと暗い場所に行ってしまった。
「だ、大丈夫だよ。ボクは、人間だよ。……怖く、ないよ」
それでもボクは、その子を落ち着かせようとして。必死に声をかけた。何とか頑張って、安心してほしくて。
するとその子は、ゆっくりと顔をあげて。ボクの方を見た。ボクの方からは、その子の顔はよく見えなかったけど。向こうからは、ボクの顔が見えているのだろう。
「……誰?」
「……えっと、ボクは……。ボクは、……クロ。クロ、だよ」
これが、初めての自己紹介だった。シロと出会う前は、意識していなかったコト。
「……黒……? ……変な、お名前」
「……そう、かな?」
するとその子は、ゆっくりと影から顔を出した。……髪の毛が、長くて。ボクよりも、少し身体が小さくて。目の辺りに、何か変わったものがついている。……丸い、ガラスみたいな。
「……君は、誰?」
「……私は……。私は、メア。メア、だよ」
メア。メア。……よく、わからない。
「ねえ、君はここで……何をしてるの?」
「えっと、その。お腹が空いちゃって……」
ふと、メアの足元を見た。そこにはさっきの箱に入ってた、丸くて小さいものが転がっていた。蓋が開いていて、中には何かが入っている。つまりこれは、何かを入れておくための入れ物だったのだ。
「カンパンしか見つけられなかったけど、もう何日も食べてなかったから……」
「……カンパン? それって、食べ物なの?」
「え? あ、うん。……食べたこと、ないの?」
聞いたことがない。知らない。絵本でも見たことがない。
「食べて、みる? まだ沢山、あるから」
するとメアは、そのカンパン……が入った、丸い入れ物を差し出した。中には、薄茶色の長方形みたいなものが何個も入ってて。ボクは恐る恐る、それを一つ取った。なんというか、とても、硬い。
「……本当に、食べられるの?」
「うん。私たちは、いつもそれを食べてたから」
うまく、理解出来なかったけど。でもボクは、食べてみることにした。変な匂いはしないし、あの白いのが入ってる様子もなかったから。
まずボクはカンパンを、前歯で甘噛みしてみた。噛んでみた感じは、かちかちになったパンみたいな。だから、奥歯で噛んでみて。かみ砕いてみる。
「……どう?」
ボリボリという音がする。それを聞いてか、メアがボクに感想を聞いていた。そしてしばらく噛み続けて、飲み込んでみて。それからボクは、ようやく返事をした。
「――とっても、美味しい!」
こんなの、食べたことない。少し硬いけど、いざ噛んでみれば、ボロボロと簡単に崩れて。どうしてだか、その硬さ具合と噛み砕く触感が、とても心地いい。
味も、ボクの知らない味だった。少なくとも、あのパンやシチューなんかじゃ、比べ物にならないくらい。とっても、とっても。美味しかった。
「黒って、不思議だね。カンパンも食べたことないの?」
「……うん。いつもずっと、変な物ばかりだったから」
「そう……。じゃあ、これあげるよ。私は、他のを開けるから」
するとメアは、入れ物ごと全部ボクに渡してくれた。いいのかな、と思っていると。既にメアは、まだ開いてない新しいやつを手に取っていた。
「……ありがとう!」
シロにも、分けてあげよう。美味しい物を食べれば、きっと、元気が出る。
「ねえ、シロ。シロ!」
ボクは、少し部屋の中央に戻って。シロを探してみた。するとシロは、どこかの鉄の箱からひょっこりと顔を出して。ボクと目を合わせた。
「どうしたの? 何か見つけた?」
「うん、これを見て!」
ボクは入れ物を、シロに差し出す。
「あ、カンパンかあ。長持ちするから、いいよね」
「美味しいんだよ。そこで、貰ったの」
「――貰った?」
そしてボクは、少し戻ってメアの手を握った。少し強引だったけど、メアの手を引っ張って。シロの所まで連れてって。二人を、会わせた。そして、紹介した。
「シロ、この子は、メアって言うんだ。そこで会ったんだよ」
「……メア?」
「うん。ねえ、メア。この子は、シロ。ボクの、お友達だよ」
なんだか、嬉しかった。お友達にお友達を紹介するなんて、初めてだったから。
二人は、少し見つめ合ってた。きっと、恥ずかしがってるんだろう。中々、口を開かない。
「――メア、ね。……よろしく」
「……うん。よろしく、――白」
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