崩壊した世界からの脱出 -ボクたちはセックスしか知らない-

空倉霰

文字の大きさ
39 / 139
第五章

仕事、そして休息

しおりを挟む
 第六収容所は、他とは違って特別な場所になっている。特に重要な人物を収容しておくために作られた牢屋で、監視カメラや監視員、思いつき実現可能なありとあらゆる手段が実行されている所だ。
 俺がレジスタンスに入ってからは、二回ほど使われたらしいが。それ以来は、ずっと封印されてきた。そんな場所が今、使用されているということは……。
「あれが……。――”ノア”、なのか?」
 薄暗い部屋。防弾ガラス越しに見える、椅子に拘束されている子供。白いドレスを着た、ちょうど黒と同じくらいの子がそこにいた。とてもここで閉じ込めておく必要があるような人物には、見えないが……。
「はい。なんでも、自らここへ来たそうで」
「ふむ……。ずっと隠れてきた奴が、今になって現れるとは。どういう心境の変化だろうな」
 ノアという人物のことを、先生から聞いたことがある。なんでも”箱舟”という名の何かを、起動させるための重要なキーだとか。
 そいつを、いや。彼を見つけることが、俺達の第二の使命だった。それが、俺達の道を切り開く鍵になると。まあもちろん、シュバルツを倒さないとそれも意味がないらしいのだが。
「……。にしても、噂には聞いてたが。やはり厳重だな。少しっていうか、明らかにやり過ぎな気もするが」
 ふと俺は、辺りを軽く見渡した。そして少し目線を動かしただけでも、目に入ってくる、監視カメラの山。そして、重装を施した監視員。さらにさらに、アホかってほどのセントリーガン。……一体、どれだけの資源をここに費やしてるんだ?
「昨日から急ピッチで作業したんです。おかげで向こう一年分の資源が、底をついてしまいましたよ」
「だろうな。……先生のことだから、考えがあるんだろうが……」
 すると、ノアがこちらを見た。……まるで、恐ろしい化け物か何かのような眼光。思わず俺は、背筋が凍ってしまう。
「さすがに、鋭いな。で? いつまで見張ってればいいんだ?」
「さあ……。とりあえず次の命令が下るまで、ってことらしいです」
「未定か……。まあ、いつものことだ」
 それからしばらくは、何事もなく時間が過ぎていった。予想に反して、ノアは一切の抵抗を見せず。実に大人しいまま、拘束され続けた。
 最初こそ俺達は緊張していたが、十時間も過ぎれば、トランプで遊ぶ者も現れ。いつしか俺達は、暇を持て余すようになっていき。気が付けば、交代の時間が来ていた。
「そろそろ二十時か……。よし、交代だ。引継ぎの準備は済ませたか?」
「終わってます。……にしても、全然動きませんでしたね」
「まあ、言ってもまだ初日だしな。これからさ」
 そうして俺は、引継ぎを済ませて休憩へと向かった。そしていつも通り、食堂で夕食分の缶詰を受け取り、食べようとしたのだが。ふと、黒のことが気になった。
 腹は空かせていないだろうか。レオはちゃんと食事を与えただろうか。色々と考えているうちに、気が付けば俺は黒の部屋へと向かっていて。扉をノックしていた。
「黒、入るぞ」
 中に入ると、ベッドに座る黒が居た。どうやら起きていたようで、黒は俺と目を合わせて。柔らかい笑顔を向けてくれた。
「あ……。おか、えり。アイジス」
「え? ……えっと。ただいま」
 急に度肝を抜かれてしまった。おかえりなんて言われたの、いつぶりだろうか。おかげで適切な返答を探すのに、少し手間取ってしまった。
 とにかく俺は、部屋に入って。また黒の隣に腰を下ろした。そうすると、俺は部屋にレオが居ないことに気が付く。
「あれ。なあ、あのデカい奴はどこ行ったんだ?」
「……お仕事だって、帰ったんだ」
「そうか。ったく、ちゃんと見張ってろっての」
 人に守れと言っといて、自分がほったらかしてどうすんだ。今度会ったら、叩きのめしてやる。
「……あ、そうだ。ほら、これ」
 ふと思い出した俺は、ポケットから缶詰を取り出し。それを黒に手渡す。
「その様子じゃ、腹減ってそうだしな。食べとけ」
「わあ、ありがとう。お腹、空いてたんだ」
 幸いなことに俺は、そこまで空腹じゃなかった。まあカンパンは、もう食べ飽きてたってのもあるが。俺よりも黒が食べるほうが、なんかいい。
「……。ん、食べないのか?」
 だが黒は、缶詰を持ったままで。開けようとはしなかった。それで俺が聞いてみると、なぜか黒は目を逸らして。小さな声で、答えた。
「……お腹、空いてないの」
「……? そう、か」
 妙だな。たった今、腹減ってるって言わなかったか? 俺がそう思っていると、黒は缶詰をベッドに置いて。俺の肩に、身体を預けた。
「ど、どうした?」
「……なんでもない」
 いや、そんなこと言ったって。明らかにどうかしてるじゃないか。なんで突然、俺の肩に寄り添ってるんだ? それに、君の、その手。
「ちょ、ちょっと待った。君、どこを触ってるんだ」
「……アイジスの、大事な所」
「いやそうだけど、そうじゃなくて。どうしてそんなとこを、急に」
「……」
 すると黒は、ちょっと背伸びをして。俺の耳元に、口を近づけて……。
「――今日は、しないの?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

処理中です...