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第五章
忘却
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数時間後。仕事が終わると、レオから貰った名刺を頼りに。俺はC鉱山を訪れた。
ここはレジスタンスが独自に見つけた鉱脈で、活動に必要な資源はここで採掘している。ただ二十四時間常に稼働しているものの、それでも全員を賄えるだけの資源は無いのが現状だ。
「なあ。……えっと、マシュリーって、居るか?」
坑道を進んで行くうちに、俺は何人かとすれ違う。その半数は忙しそうにしていたが、一人だけゆっくり歩いていたので。俺はそいつに、訪ねてみた。
「ああ。あいつなら、その辺に居るだろうぜ。へへ」
そいつは俺を見るや、何かを察したようにニヤつき。そして半笑いでそのまま、通り過ぎてしまって。俺は一人だけ、ポツンと立っていた。
「……はあ。何やってんだろうな、俺」
むしゃくしゃしていた。突き詰めれば、その一言で説明がつくんだが。どうにもやりきれない。
だって、そうだろう。そもそも子供に欲情する時点で、何かが間違ってるんだ。少しでも俺を受け入れてくれたってだけで、喜ぶべきなのに。
もう黒には、好きな奴が居るんだ。俺のはそれを潰してまで押し通すような、綺麗な想いじゃない。……望み過ぎなんだ。俺は。
「ねえ、アンタ」
「ん……?」
「そんな顔して、どうしたの。気分がすぐれないなら、一発どう?」
誰かが話しかけてきた。……髪が長い。なんというか、男に見えない奴。噂に聞いてた、女っていう生き物みたいな。やけに身体が細くて、なんというか。胸が大きい。
「……もしかして、アンタがマシュリー?」
「あら、話が早いね。で、どう? 缶詰一個で、楽しませてあげるわよ」
変な喋り方だな。なんか、いちいち艶めかしいというか。
「……こういうの、初めてなんだが」
「大丈夫よ。私がリードしたげる。ほら、こっち来て」
マシュリーは俺の手を握って、人目のつかない所へと移動した。……手のひらが、暖かい。でも、なぜだろう。……確かに、豊満な身体つきは魅力的に見えるのだが。……少しも、ドキドキしない。
「で、どっちがいい? 基本他の奴は、入れるのが好きなんだけど。好みで私が入れるのも、出来るわよ」
「ん……。じゃあ、入れるほうで」
「ふふ、ウブなのね」
そうして俺は、マシュリーと共にひと時を過ごした。……流石に経験が豊富なようで、最初の前戯だけで、俺は何度かいかされてしまって。本番に至っては、全部搾り取られてしまった。
でも、気持ちよくなかった。……全然。頭の中では、ずっと黒のことを考えていて。……忘れられなかった。
その後一時間ほどすると、俺達は食堂へ行って。俺は支払いをした。今朝方残しておいた缶詰一個を、今日はマシュリーに渡して。契約完了。
「はい、ありがと。気前いいのね」
「……そうか?」
「そうよ。最近はやるだけやっといて、払わないなんて奴も居るから」
マシュリーは席について、缶詰を開けた。そして俺は、特に理由はなかったが。なんとなくその隣で、座っていた。
「浮かない顔ね。沢山出しといて。ちょっとショックだわ」
「え……あ、すまない」
「まあいいけどさ。……何、嫌な事でもあった?」
「いや……。……何もない」
「ウソ下手ね。いいから、話してみなさい。じゃないと私が納得できないから」
……変わった人だ。俺の話なんて、何も面白くないのに。
「本当に、何でもないんだ。……ただ、ちょっと。好きな奴に、好きな奴が居ただけだよ」
「あー……。なるほどね。それで私が、はけ口にされたってわけか」
「いや、そんな……」
否定しようとした。でも、出来なかった。
「……ああ、そうだな。その通りだ。……すまない」
「気にしないで。そのために私は作られたんだから。……それより、今の話。本当なら、辛いわね」
マシュリーは、俺の肩を叩く。そして頬に手をつきながら、俺を見た。
「一応聞くけど、やれることはやったの? アンタが男として、やれることはやりきった?」
「……。わからない。ただ、全力は出した。……その上で、俺は。……負けたんだよ」
マシュリーは、レオと同じように。多くを聞くことはしなかった。ただ、静かに。俺の話を聞いてくれていた。
「あいつも、寂しかったんだと思う。ここに来てから、一人だったみたいだし。……だから、俺を好きな奴に見立ててたんだろうな」
「ん……? どういうこと?」
「その、名前を呼んでたんだよ。……してる時に。多分そいつが、好きな奴なんだろ」
するとマシュリーは、少し眉をひそめる。
「妙ね。いくら寂しいからって、そんなことするかしら?」
「……?」
「わからないけど、普通はそんなことしないわ。確かに寂しさのあまり、誰かでそれを埋めようとすることはあると思うけど。……してる最中に名前を呼ぶなんて、不自然よ」
その瞬間。俺の中に、奇妙な疑問が現れた。
「そんなことをするってなると、相当寂しかったか、もしくは……。――心が、壊れてる時だけよ」
「ッ!?」
「ねえ、その相手って何か変じゃなかった? いつもとは違うみたいな」
「……そういえば、確か昨日は、あいつは自分から……?」
するとマシュリーは、突然立ち上がって俺の背中を叩いた。
「急ぎなさい。多分だけど、その相手。……このままだと、相当馬鹿なことしでかすわ」
「ば、バカなこと……?」
「いいから急げって言ってんの! アンタの好きな奴が、死ぬかもしれないのよ!?」
マシュリーが叫んだ。そして俺は、それを受け止め。椅子から転げ落ちてから、全速力で黒の部屋に戻った。何か、嫌な予感がした。胸の奥が、ざわめきだしていた。
今にして思えば、昨日の黒はやっぱりおかしかった。黒は傷ついていたんだ。……それに気が付けなくて、俺は。何してんだよ、本当に!!
「黒!! おい、黒!!」
そうして俺は、すぐに黒の部屋に辿り着いた。でも、扉に鍵がかかっていて。入ることが出来ない。
俺は扉に体当たりをして、何とかこじ開けようと試みる。……鍵が老朽化していたのが、幸いした。数十回すると、突然扉が開いた。
「うぐっ!! ……く、黒!」
支えを失った俺は、地面に倒れ込んでしまって。そのままの体勢で、黒を探した。……。
「……――く、ろ……?」
「……あ……。アイ、ジス。……おかえり、なさい」
ここはレジスタンスが独自に見つけた鉱脈で、活動に必要な資源はここで採掘している。ただ二十四時間常に稼働しているものの、それでも全員を賄えるだけの資源は無いのが現状だ。
「なあ。……えっと、マシュリーって、居るか?」
坑道を進んで行くうちに、俺は何人かとすれ違う。その半数は忙しそうにしていたが、一人だけゆっくり歩いていたので。俺はそいつに、訪ねてみた。
「ああ。あいつなら、その辺に居るだろうぜ。へへ」
そいつは俺を見るや、何かを察したようにニヤつき。そして半笑いでそのまま、通り過ぎてしまって。俺は一人だけ、ポツンと立っていた。
「……はあ。何やってんだろうな、俺」
むしゃくしゃしていた。突き詰めれば、その一言で説明がつくんだが。どうにもやりきれない。
だって、そうだろう。そもそも子供に欲情する時点で、何かが間違ってるんだ。少しでも俺を受け入れてくれたってだけで、喜ぶべきなのに。
もう黒には、好きな奴が居るんだ。俺のはそれを潰してまで押し通すような、綺麗な想いじゃない。……望み過ぎなんだ。俺は。
「ねえ、アンタ」
「ん……?」
「そんな顔して、どうしたの。気分がすぐれないなら、一発どう?」
誰かが話しかけてきた。……髪が長い。なんというか、男に見えない奴。噂に聞いてた、女っていう生き物みたいな。やけに身体が細くて、なんというか。胸が大きい。
「……もしかして、アンタがマシュリー?」
「あら、話が早いね。で、どう? 缶詰一個で、楽しませてあげるわよ」
変な喋り方だな。なんか、いちいち艶めかしいというか。
「……こういうの、初めてなんだが」
「大丈夫よ。私がリードしたげる。ほら、こっち来て」
マシュリーは俺の手を握って、人目のつかない所へと移動した。……手のひらが、暖かい。でも、なぜだろう。……確かに、豊満な身体つきは魅力的に見えるのだが。……少しも、ドキドキしない。
「で、どっちがいい? 基本他の奴は、入れるのが好きなんだけど。好みで私が入れるのも、出来るわよ」
「ん……。じゃあ、入れるほうで」
「ふふ、ウブなのね」
そうして俺は、マシュリーと共にひと時を過ごした。……流石に経験が豊富なようで、最初の前戯だけで、俺は何度かいかされてしまって。本番に至っては、全部搾り取られてしまった。
でも、気持ちよくなかった。……全然。頭の中では、ずっと黒のことを考えていて。……忘れられなかった。
その後一時間ほどすると、俺達は食堂へ行って。俺は支払いをした。今朝方残しておいた缶詰一個を、今日はマシュリーに渡して。契約完了。
「はい、ありがと。気前いいのね」
「……そうか?」
「そうよ。最近はやるだけやっといて、払わないなんて奴も居るから」
マシュリーは席について、缶詰を開けた。そして俺は、特に理由はなかったが。なんとなくその隣で、座っていた。
「浮かない顔ね。沢山出しといて。ちょっとショックだわ」
「え……あ、すまない」
「まあいいけどさ。……何、嫌な事でもあった?」
「いや……。……何もない」
「ウソ下手ね。いいから、話してみなさい。じゃないと私が納得できないから」
……変わった人だ。俺の話なんて、何も面白くないのに。
「本当に、何でもないんだ。……ただ、ちょっと。好きな奴に、好きな奴が居ただけだよ」
「あー……。なるほどね。それで私が、はけ口にされたってわけか」
「いや、そんな……」
否定しようとした。でも、出来なかった。
「……ああ、そうだな。その通りだ。……すまない」
「気にしないで。そのために私は作られたんだから。……それより、今の話。本当なら、辛いわね」
マシュリーは、俺の肩を叩く。そして頬に手をつきながら、俺を見た。
「一応聞くけど、やれることはやったの? アンタが男として、やれることはやりきった?」
「……。わからない。ただ、全力は出した。……その上で、俺は。……負けたんだよ」
マシュリーは、レオと同じように。多くを聞くことはしなかった。ただ、静かに。俺の話を聞いてくれていた。
「あいつも、寂しかったんだと思う。ここに来てから、一人だったみたいだし。……だから、俺を好きな奴に見立ててたんだろうな」
「ん……? どういうこと?」
「その、名前を呼んでたんだよ。……してる時に。多分そいつが、好きな奴なんだろ」
するとマシュリーは、少し眉をひそめる。
「妙ね。いくら寂しいからって、そんなことするかしら?」
「……?」
「わからないけど、普通はそんなことしないわ。確かに寂しさのあまり、誰かでそれを埋めようとすることはあると思うけど。……してる最中に名前を呼ぶなんて、不自然よ」
その瞬間。俺の中に、奇妙な疑問が現れた。
「そんなことをするってなると、相当寂しかったか、もしくは……。――心が、壊れてる時だけよ」
「ッ!?」
「ねえ、その相手って何か変じゃなかった? いつもとは違うみたいな」
「……そういえば、確か昨日は、あいつは自分から……?」
するとマシュリーは、突然立ち上がって俺の背中を叩いた。
「急ぎなさい。多分だけど、その相手。……このままだと、相当馬鹿なことしでかすわ」
「ば、バカなこと……?」
「いいから急げって言ってんの! アンタの好きな奴が、死ぬかもしれないのよ!?」
マシュリーが叫んだ。そして俺は、それを受け止め。椅子から転げ落ちてから、全速力で黒の部屋に戻った。何か、嫌な予感がした。胸の奥が、ざわめきだしていた。
今にして思えば、昨日の黒はやっぱりおかしかった。黒は傷ついていたんだ。……それに気が付けなくて、俺は。何してんだよ、本当に!!
「黒!! おい、黒!!」
そうして俺は、すぐに黒の部屋に辿り着いた。でも、扉に鍵がかかっていて。入ることが出来ない。
俺は扉に体当たりをして、何とかこじ開けようと試みる。……鍵が老朽化していたのが、幸いした。数十回すると、突然扉が開いた。
「うぐっ!! ……く、黒!」
支えを失った俺は、地面に倒れ込んでしまって。そのままの体勢で、黒を探した。……。
「……――く、ろ……?」
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