崩壊した世界からの脱出 -ボクたちはセックスしか知らない-

空倉霰

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第六章

二日目

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 一日が過ぎた。運が良かったのか、誰かに救われたのか。とにかく追手がここを突き止めることはなく。俺達三人、何とか少しだけ休息を取ることが出来ていた。
 しかしそろそろ鳴り始める、腹の虫。虎の子の缶詰は、残りあと六つ。長くは持たない。これからのことも考えて、何とかして食糧を調達してこないと。
「とりあえず、俺が行ってくる。……念を押すようだが、合図があるまで開けるなよ」
「ああ。わかった」
 俺はアイジスと子供を待機させて、一人食糧探しへと旅立つ。心当たりはいくつかあるが、手に届きそうなのはどれも、レジスタンスの縄張りばかり。いざという時を考えて、一人で行動する方がいい。
 俺は再び配管を通って、坑道へと出る。そしてその坑道を忍びながら進んで、エレベーターの前へと辿り着く。
 だが当然、そんなものを使えば人の目につくので。だから俺はエレベーターが使用されるのを待ち、この階からエレベーターがいなくなってから、扉をこじ開けた。
「(確か、四十八階に備蓄庫があったはずだ)」
 このエレベーターが昇降するための、ワイヤー。俺にとってこれは、実に便利な交通手段なわけで。縄登りよろしく、俺は上の階層を目指す。ここからなら、人目につく心配はない。
 そして俺は、登っている間にこれからのことについて思考を巡らせた。生存方法という名の、戦う方法を。
 現在俺達は、二つの勢力から追われている。一つは、この施設の管理者であるマスター・シュバルツから。そしてもう一つは、そのシュバルツに対抗するレジスタンスから。
 まずそのどちらに対しても、正面から戦って勝つことは考えないほうがいい。人数が違い過ぎるし、物資の数も違う。基本戦術は”逃走”、ただそれに限定される。
 次に重要なのは、生活物資をどう確保するかだ。俺が知っている物資の保管庫は、いくつかあるが。どれもこれもがシュバルツの管理下のため、そう簡単に盗むことは出来ない。今までは協力する仲間が居たからいいものの、今じゃ俺とアイジスのみ。単純な話、キツ過ぎる。
 それにレジスタンスが所有する保管庫も、もう使えないだろう。暗証番号は変更され、警備は厳重化されるはず。そうなると今までの基礎概念は、全て取っ払った方がいいか。
 とりあえず、今日の飯はこれからなんとかするとして。問題はレジスタンスの追手だな。今朝も、追手が隠れ家の配管を通っていた。追手をどうするか、それを重点的に……。
「――追手?」
 その時。ふと俺の中に、疑問が現れた。……『なぜ、追手があるのか』と。ある種当たり前とも思えていたので、気が付かなかった。
 おかしい。やはりおかしい。なぜレジスタンスは、いや。”先生”は、俺達を追う? 今レジスタンスを統括しているのは、実質的に先生だ。となると、あの追手も先生の指示ということになる。
 先生は、何を追っているんだ? なぜ、俺達を追っているんだ? 仲間殺しの罪を、裁くためか? ――いや、違う! 一部の過激な奴ならともかく、先生はそんなことに人員を割きはしない。そんな余裕はない。
 しかもあんなに、装備を堅めて。あの装備は先生の許可が無いと使用できない。……あの子供、黒の能力を恐れてか? それにしては、厳重過ぎるような。……もしかして、”別の何か”を警戒して?
 別の、何か。それは何だ? 俺か、アイジスか? 黒か? ……それとも、それは”出来事”か? 俺達が逃げることで発生する、何かの出来事?
 何が起こる? 俺達が逃げると、何が起こる? 俺が逃げると、缶詰が一人分余る。それとデートの約束をすっぽかしたから、アニーの奴がブチ切れる。
 アイジスが逃げると、缶詰が余って、……隊長の座が空く。それで、他の誰かが隊長に。……。違う、そんなことじゃない。
 となると、黒か? 黒が逃げると、何が起こる? ……。わからない。黒が逃げるとどうなるか、わからない。というより……。そもそも先生は、なぜ”黒”を捕らえたんだ?
「……?」
 その時、俺の頭の中で閃きがあった。直観というか、勘。……黒と同時期に捕らえられた、あのノア。……まさか、黒とノアは、繋がりがあるのでは?
 気になっていた。なぜノアが、自ら捕まったのか。……仮に二人が繋がっていたとして。そして、先生が黒を人質に取り。ノアを、おびき出していたとしたら? そうしたら、先生は。――『ノアに対する抑止力を、失うことになる』。
 根拠はない。今のは全て俺の憶測だ。だがなぜ、俺は焦っている? なぜこんなに、胸がざわめくのだろうか。……それでも今まで、俺はこの自分の勘に自分を救われてきた。そういう意味では、警戒しておくに越したことはない。
 とにかく今は、飯のことを考えよう。タイミングよく、目的の階層まで着いた。俺は壁に飛び移って、非常用の扉を開けて。フロアへと出る。とりあえず、飯が見つかればいいのだが。
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