崩壊した世界からの脱出 -ボクたちはセックスしか知らない-

空倉霰

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第六章

奪取

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 この階は、採掘用の道具や機械などを保管するためのものだ。そして同時に、採掘された資源を蓄えておく貯蔵庫としての意味も持つ。
 だが当然、その分監視の目は厳しい。生体センサ、監視カメラ、赤外線、監視用ドローン。その他多数。まず肉体にマイクロチップが埋め込まれている俺達は、本来この階に片足を踏み込むことすら不可能。
 そこで使うのが、俺のポケットに入ったこのジャミング装置。埋め込まれたマイクロチップが発する信号を、一時的に妨害。とりあえず、これで片足を突っ込むことくらいは出来るわけだ。
「とっ……」
 まあそれでも、ドローンや監視カメラが危険なのに変わりない。ドローンには小銃が備え付けてあり、侵入者を発見次第に正確無比な射撃を行う。命中精度は、驚異の百パーセント。過去にコイツに狙われて逃げることが出来た奴は、ただの一人も居ない。
 目的地は、エレベーター前から二百メートルほどの地点。そこに古い食糧庫があり、とりあえずそれをあたってみようと思う。……こう言うのはなんだが、ここが一番”警備が緩い”のだ。ここが駄目だと、腕の一本は失う覚悟をしなくてはならない。
「……(脱走してから、装置を充電出来ていない。今後のことを考えると、短時間で終わらせないと)」
 ジャミング装置のバッテリーは、およそ五十時間。日常的に起動させ続けるので、装置自体の寿命も長くない。
 嫌に静まり返った道を、俺は足音を殺して進む。そしてドローンの飛行する微かな音を聞き分け、物陰に身を潜める。確実に、そして迅速に。
 結果として、俺は食糧庫まで五分で到着した。食糧庫の暗証番号は、変わっておらず。何とか中に忍び込むことに成功する。
「……くそっ、ほとんど残ってないな」
 しかし中にあったのは、鉄の箱が三つだけ。それでもあるだけマシなので、箱の中を覗いてみると。全部で七つの缶詰を見つけることが出来た。
 とりあえず俺はそれを、戦闘服のポケットに入るだけ突っ込み。入りきらなかった一つは手で持って帰ることにして。ここから立ち去ろうと、先程入って来た食糧庫の扉に身体を向けた。
「――!!」
 しかしその瞬間、俺は缶詰をそこらに放り投げた。そして背中の銃を手に取り、目の前の”それ”に向けって銃口を向ける。だが”それ”は、俺が銃を動かす速度よりも。早く! 俺の間合いへと飛び込んできたのだ!
「オラァ!!」
 刹那、俺は銃を捨て素手での戦闘へ持ち込んだ。”それ”の放つ弾丸のような拳を、俺は自慢の上腕二頭筋と腕橈骨筋わんとうこっきんで受け止め、そのままジャーマンスープレックスの動きで”それ”の肉体を背後へと受け流す。
 しかし”それ”は、瞬間的に壁を蹴り、俺の拘束から逃れた。そして必然的にイナバウアーの体勢になっている俺の身体に向けて、槍のような蹴りを放つ。
「ぐおっ!!」
 腹に直撃。一気に俺の内臓が、いくらか潰れてしまう。馬鹿みてえにクソいてえ。
 続けて”それ”は、地面に仰向けになった俺の顔面目掛け、足を踏み下ろした。俺は激痛を押し殺し、身体を転がして回避する。”それ”はまるでもぐら叩きのように、俺の頭を執拗に狙い続けた。
「調子に乗るなよ、この野郎!!」
 しかし俺は、”それ”の足をつかみ取った。そして思い切り引っ張り、”それ”の体勢を崩させ、流れで俺が馬乗りになる。当然、俺は顔面目掛けて両腕のラッシュを放った。
 だが”それ”は、かわした。あくまでもかわした。僅かに顔を動かすだけで、俺の渾身の打撃をかわし続けてみせた。刹那、俺の頭は沸騰し、全身全霊を籠めた一撃でトドメをさしにかかる。
「ぐぬうっ……!!」
 しかし結局、俺はコンクリの地面を殴ったに過ぎない。そして”それ”は、俺の僅かな疲労を見抜き、俺の目ん玉に向けて何か鋭く尖った物を差し向けた。だから俺は、身体をのけぞらせて回避した。結果として、”それ”に対する拘束を甘くすることに繋がり、”それ”は俺の股下から一瞬で抜け出した。
「うっ……ふう、やべえ!」
 この時点から、俺達は膠着状態へと陥った。お互いに、一瞬の隙も許さない間合い。どちらかが隙を見せれば、間違いなく死ぬ!
「は、ははあ。やっぱり、流石に強いな。マスターシュバルツの飼い犬なだけはあるってことか、ああ?」
「……剛腕部隊の、レオ、か。こちらも噂には聞いている。筋肉だけの馬鹿が居ると、な」
「言ってくれるぜ。だが筋トレってのは、人間の心をも成長させるのさ。……お前は、どうなんだ? オメーには、人の心はあるのか? ――なあ、ノアさんよォ!!」
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