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第六章
沼
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契約を交わした俺とノアは、一時休戦とし。俺とアイジス、そして黒の安全を約束させ、黒の引き渡しの要求を飲んだ。
アイジスには悪いが、こうする他にないだろう。このまま俺達があの子を守り続けることは、出来ない。必ずどこかで限界が来る。まだノアの元に居た方が、マシなはずだ。
それでも俺とアイジスは、ある程度の苦労をすることになるだろう。今更レジスタンスには戻れない。このままネズミのように、隠れて生き続けることになる。……まあ、ある意味で何も変わってないと言えるが。
「なあ、一つ聞いていいか」
エレベーターに乗る、俺とノア。隠れ家のある階に着くまでの僅かな間に、俺はとある質問をすることにした。それは……。
「本当に、人類に未来はあると思うのか?」
ノアは、少し困ったような顔をした。そして二秒ほど沈黙したのち、口を開く。
「……少なくとも我々は、君達に希望を与えている。我々が人類を救うまでに、君達を守ってやってるはずだが」
「まあ、わかるけどよ。……俺にはわからねえ。俺には、人類が死んでいくようにしか見えねえんだ」
「仕方ないさ。これしか、生きる道はない。人類が変わる他に、どうやってこの世界で生きていける?」
「死んだ方がマシって説もあるぜ」
「ならなぜ君は自殺しない?」
「自殺は痛いから嫌だ」
そうして話しているうちに、エレベーターが到着した。これ幸いなことに、他の奴は見当たらず。俺はしぶしぶ隠れ家へと戻っていく。
……しかし、黒、か。最初から妙だと思ったが、あの子供がノアの好きな奴なのか。……なるほどね。
「なるほど。配管の中か。確かにこの辺は、警備が甘くなっていたな」
「え? あ、ああ。意外とボロきてんぞ。ちゃんと修理したらどうだ」
「そんな余裕はない。知っているだろう」
「まーね。……ほら、ここだ」
俺は隠れ家の前に戻って、合図を送る。合図はタンタンタタタン、という具合のノックで。これを送れば、アイジスが中から扉を開ける手はずになっていた。
「レオか」
中から声がしたのち、扉が開いていく。そしてアイジスが姿を見せて、部屋の奥には黒も見えた。そして、その瞬間。
「……クロッ……!」
ノアは誰の断りも得ず、一足先に中へと入り。一目散に黒の元へと走って、抱きついた。
「……クロ、よかった……! よかった……!」
見事なまでに、まるで別人。先程までの人格は一体どこへ消え去ったのか。今やノアは、まるで子供のように黒を抱きしめている。
そして当の黒は、何が起こっているのかわからない様子で。しばらく放心したかと思うと、ようやく怖がるように口を開いた。
「……あ……。……シ、ロ?」
「そう、僕だよ。……ごめんね、遅くなって」
「……シロ? 本当に、シロ?」
「うん、うん……!」
黒の表情は、変わることがなかった。キョトンというように、口を少し開けていて。それでもしばらくすると、彼は涙を流した。彼自身、涙を制御出来ていないようで。ぎこちない動きで、彼はノア……いや、シロを抱き返す。
「シロ……。ボク、ボク……」
「いいの、何も言わないで。……本当に、ごめん」
そうして二人は、人目をはばからずにキスをした。長い間会ってなかった、織姫と彦星のように。今までの分を取り返すかのように、長くて熱いキスをした。
……まあとりあえず、これで黒の心配はいらないだろう。問題は、アイジスの方で。俺はアイジスの近くによって、顔色をうかがってみた。まあ当然、複雑そうな顔をしているわけだが。
「……これで、よかったんだよな」
アイジスは呟いた。俺は、否定しなかった。……これで残された問題は、コイツがシュバルツを殺すとか言ってたことなんだが。出来たらそれは、忘れていてほしい。
「……ねえ、クロ。ちょっとだけ、聞きたいことがあるんだ」
「……何?」
「――アイツは、何なの?」
刹那。シロは、アイジスを睨みつけた。その眼光の鋭さは、俺にも伝わってくるほどで。黒の返答次第では、俺達は死ぬだろう。
まあそれでも、俺はともかく、アイジスの方は覚悟が決まっているようだった。例え今ここで殺されても、コイツは文句を言わないだろう。むしろ本望、といったような。だとしたら、成り行きを見守るしかない。
「……あの人は、あの、人は……」
「お願い。正直に教えて。……クロは、アイツに何をされたの? アイツは、クロに何をしたの?」
その辺のことは、俺は知らない。ただコイツの様子から察するに、色々とやらかしたんだろう。
「……ボクに、えっちなことをしたの」
「……。そう。わかった。それだけわかれば、……十分だよ」
するとシロは、ゆっくりと立ち上がった。そして、同じくゆっくりとした動きで、アイジスの元へ近づいて。二人は、しばし目を合わせた。
「……」
二人が言葉を交わすことは、無かった。ただお互いに、見つめ合っており。……とある瞬間に、ふとシロは、アイジスの首に両手を添えて。力をこめた。
「……か……」
シロの手に、血管が浮き出ている。シロの眉間に、シワがよっていく。アイジスの身体を壁に押し付け、そのまま両手に、力を入れ続ける。全身全霊、一切の力を余すことなく。
脊髄のミシミシという音が、聞こえている。その頃から、アイジスの目が上向きになっていき。意識が混濁しているのがわかった。今アイツが、何を思っているのか。俺にはそれが、手に取るようにわかる。
……だが、事はそう簡単ではなかった。俺が予想していたよりも、事態は根深かったようで。思っていたよりも、深刻な状態だった。
「……。どうして、止めるの。……クロ」
黒は、シロの手を止めていた。腕を握って、首を左右に振っていた。
「コイツは、生かしておいちゃいけないんだよ。殺さなくちゃ、いけないんだよ」
「……でも。でも。……この人は、とっても、……可愛いんだ」
「……え?」
すると黒は、シロの手を離させて。アイジスの身体を解放した。そして咳き込むアイジスの目の前でしゃがんで、語った。
「……ボク、少しだけ、わかったんだ。シロや、マスターの、気持ちが」
「僕らの、気持ち?」
「……イジワル、したくなっちゃう気持ち。イジワルして、あげたい気持ち」
黒は、アイジスの頭を抱きかかえた。そして、耳元に近づいて。囁く。
「……アイジスは、ボクを好きなんだよね?」
「……ッ……」
「でも、ボクが子供だから、困ってるんだ。……アイジスと比べて、ボクは、身体がちっちゃいから」
「……」
「……どう、だった? ボクの、身体。ちっちゃくて、狭かったよね」
「……!」
「……でもボクは、マスターの方が、好きなんだ。……シロの方が、好きなんだ」
「……」
「……それでも、いいなら。それでも、いいなら。……ボク、アイジスのお母さんに、なってもいいよ。……好きなだけ、甘えていいんだよ」
思わず俺は、ため息をついていた。昨日なんかじゃあ比べ物にならないほど、大きなものを。
こりゃまいった。どうやら黒は、天性の才みたいなものがあったらしい。いわば、聖母マリア的な。全てを受け入れて、包み込んでしまう力。
だが今は、それが悪い方向に働いている。……だってアイジスは、裁かれることを望んでいたんだ。殺されるか、そうでなくとも、何らかの形を罰を受けることを望んでいた。
でもそれを、受け入れるってのか? 黒はそれを受け入れて、アイジスを迎え入れるってのか? ……そんなの、ヤバイだろ。ほら、アイジスが震えてやがる。あの堅物のアイジスが、泣いてやがる。そんなの俺、初めて見たぞ。
「……ころ、してくれ」
「……ううん。嫌だ」
「頼む、殺してくれ……」
「……嫌だ。ボクは、アイジスのお母さんになるんだ」
こういうのはあまりわからないが、今ここでそれを受け入れたら、完全な主従関係が作られることになる。アイジスは、一生黒に逆らえない。……もし将来、黒が敵に回ることがあったとしたら……。
「……ほら。こうするの、好きだったよね?」
ふと黒は、アイジスの頭を自分の脇にあてがった。……やっぱりアイツは、匂いフェチだったか。夢中になって吸ってやがる。
「ち、違う。止めてくれ。……殺してくれ。裁いてくれ。約束、したじゃないか」
「……ごめんね。もう、その必要がなくなっちゃったんだ。……それに、アイジスには……。きっと、マスターを、殺せないと思うから」
「ッ……!」
「だから、ね? 約束、守れないんだよ。……でも、いいの。ボクは、これで満足だから。赤ちゃんみたいなアイジスが、ボクは、好きだから」
黒は、アイジスの頭を撫でている。まるで授乳をする、母親のように。
……というか、俺達はどういう感情でここに居ればいいんだろうか? そろそろいたたまれなくなってきたんだが。
「アイジスが子供にえっちなことをしちゃう、悪い人でも。ボクは、好きだよ。……ボクは、受け入れてあげるから。こうやって、撫でてあげるから。……だから、ね? シロ。……この人を、助けてあげて?」
「……クロ……。まあ君が、それでいいんなら。……でもその大人、クズなのには、変わりないよ」
「うん。いいの。……だって、クズだから、ボクを好きになったんだ。好きに、なってくれたんだ。……とても、可愛いんだよ。この、お目目がグルグルしてるような……お顔が」
……はあー。アイジスは、もう駄目だ。完璧に堕ちちまってる。色んな感情が、ごっちゃまぜになってやがる。
それに黒のほうも。最初に会った時と、随分変わっちまった。何があったか知らんが、随分心のほうがいかれちまってる。……やれやれ。もうこうなったら、俺じゃあどうにもできねえ。
「……ボクが、お母さんだからね。アイジス」
「はあー。おい、ノア……じゃなくて、シロ。……どーすんだ、コレ?」
俺はシロの側に寄って、耳打ちをした。シロは未だに、アイジスを見下しており。黒のおかげでなんとか感情を押さえているようだった。
「……しょうがないよ。クロが決めたことだから」
「つってもよ。いいのか? コレ。……なんてーか、ずぶずぶじゃねえか」
アイジスはもはや、痙攣していた。それを黒が、なだめていた。いや本当に、どういう感情で見守ればいいんだ。コレ。
「……で、どうすんだ。黒のこと。回収すんのか?」
「するさ。……でもこの様子だと、このクズも拾ってかないと駄目そうだ。だから、お前たち二人をウチの方に引き入れる」
それはつまり、俺達に管理者側に寝返れと言ってるようなもんじゃないか。
「どっちみち、君らにはそれしか手段がないだろう。僕達に追われて、レジスタンスに追われて。そんな生活、三日と持たないぞ」
……。仕方ない。俺だってもう、腹をくくったんだ。最後の最後まで、コイツらを見届けないと気が済まない。……色々な、意味でも。
「わかったよ。……で、どこの配属だ。またあの嫌な実験場に送られるんじゃないだろうな?
「それが適材適所だよ。君達の得意分野は、監視だからな」
「……はああーーー。……ったく、本当に……。まいっちまうぜ」
アイジスには悪いが、こうする他にないだろう。このまま俺達があの子を守り続けることは、出来ない。必ずどこかで限界が来る。まだノアの元に居た方が、マシなはずだ。
それでも俺とアイジスは、ある程度の苦労をすることになるだろう。今更レジスタンスには戻れない。このままネズミのように、隠れて生き続けることになる。……まあ、ある意味で何も変わってないと言えるが。
「なあ、一つ聞いていいか」
エレベーターに乗る、俺とノア。隠れ家のある階に着くまでの僅かな間に、俺はとある質問をすることにした。それは……。
「本当に、人類に未来はあると思うのか?」
ノアは、少し困ったような顔をした。そして二秒ほど沈黙したのち、口を開く。
「……少なくとも我々は、君達に希望を与えている。我々が人類を救うまでに、君達を守ってやってるはずだが」
「まあ、わかるけどよ。……俺にはわからねえ。俺には、人類が死んでいくようにしか見えねえんだ」
「仕方ないさ。これしか、生きる道はない。人類が変わる他に、どうやってこの世界で生きていける?」
「死んだ方がマシって説もあるぜ」
「ならなぜ君は自殺しない?」
「自殺は痛いから嫌だ」
そうして話しているうちに、エレベーターが到着した。これ幸いなことに、他の奴は見当たらず。俺はしぶしぶ隠れ家へと戻っていく。
……しかし、黒、か。最初から妙だと思ったが、あの子供がノアの好きな奴なのか。……なるほどね。
「なるほど。配管の中か。確かにこの辺は、警備が甘くなっていたな」
「え? あ、ああ。意外とボロきてんぞ。ちゃんと修理したらどうだ」
「そんな余裕はない。知っているだろう」
「まーね。……ほら、ここだ」
俺は隠れ家の前に戻って、合図を送る。合図はタンタンタタタン、という具合のノックで。これを送れば、アイジスが中から扉を開ける手はずになっていた。
「レオか」
中から声がしたのち、扉が開いていく。そしてアイジスが姿を見せて、部屋の奥には黒も見えた。そして、その瞬間。
「……クロッ……!」
ノアは誰の断りも得ず、一足先に中へと入り。一目散に黒の元へと走って、抱きついた。
「……クロ、よかった……! よかった……!」
見事なまでに、まるで別人。先程までの人格は一体どこへ消え去ったのか。今やノアは、まるで子供のように黒を抱きしめている。
そして当の黒は、何が起こっているのかわからない様子で。しばらく放心したかと思うと、ようやく怖がるように口を開いた。
「……あ……。……シ、ロ?」
「そう、僕だよ。……ごめんね、遅くなって」
「……シロ? 本当に、シロ?」
「うん、うん……!」
黒の表情は、変わることがなかった。キョトンというように、口を少し開けていて。それでもしばらくすると、彼は涙を流した。彼自身、涙を制御出来ていないようで。ぎこちない動きで、彼はノア……いや、シロを抱き返す。
「シロ……。ボク、ボク……」
「いいの、何も言わないで。……本当に、ごめん」
そうして二人は、人目をはばからずにキスをした。長い間会ってなかった、織姫と彦星のように。今までの分を取り返すかのように、長くて熱いキスをした。
……まあとりあえず、これで黒の心配はいらないだろう。問題は、アイジスの方で。俺はアイジスの近くによって、顔色をうかがってみた。まあ当然、複雑そうな顔をしているわけだが。
「……これで、よかったんだよな」
アイジスは呟いた。俺は、否定しなかった。……これで残された問題は、コイツがシュバルツを殺すとか言ってたことなんだが。出来たらそれは、忘れていてほしい。
「……ねえ、クロ。ちょっとだけ、聞きたいことがあるんだ」
「……何?」
「――アイツは、何なの?」
刹那。シロは、アイジスを睨みつけた。その眼光の鋭さは、俺にも伝わってくるほどで。黒の返答次第では、俺達は死ぬだろう。
まあそれでも、俺はともかく、アイジスの方は覚悟が決まっているようだった。例え今ここで殺されても、コイツは文句を言わないだろう。むしろ本望、といったような。だとしたら、成り行きを見守るしかない。
「……あの人は、あの、人は……」
「お願い。正直に教えて。……クロは、アイツに何をされたの? アイツは、クロに何をしたの?」
その辺のことは、俺は知らない。ただコイツの様子から察するに、色々とやらかしたんだろう。
「……ボクに、えっちなことをしたの」
「……。そう。わかった。それだけわかれば、……十分だよ」
するとシロは、ゆっくりと立ち上がった。そして、同じくゆっくりとした動きで、アイジスの元へ近づいて。二人は、しばし目を合わせた。
「……」
二人が言葉を交わすことは、無かった。ただお互いに、見つめ合っており。……とある瞬間に、ふとシロは、アイジスの首に両手を添えて。力をこめた。
「……か……」
シロの手に、血管が浮き出ている。シロの眉間に、シワがよっていく。アイジスの身体を壁に押し付け、そのまま両手に、力を入れ続ける。全身全霊、一切の力を余すことなく。
脊髄のミシミシという音が、聞こえている。その頃から、アイジスの目が上向きになっていき。意識が混濁しているのがわかった。今アイツが、何を思っているのか。俺にはそれが、手に取るようにわかる。
……だが、事はそう簡単ではなかった。俺が予想していたよりも、事態は根深かったようで。思っていたよりも、深刻な状態だった。
「……。どうして、止めるの。……クロ」
黒は、シロの手を止めていた。腕を握って、首を左右に振っていた。
「コイツは、生かしておいちゃいけないんだよ。殺さなくちゃ、いけないんだよ」
「……でも。でも。……この人は、とっても、……可愛いんだ」
「……え?」
すると黒は、シロの手を離させて。アイジスの身体を解放した。そして咳き込むアイジスの目の前でしゃがんで、語った。
「……ボク、少しだけ、わかったんだ。シロや、マスターの、気持ちが」
「僕らの、気持ち?」
「……イジワル、したくなっちゃう気持ち。イジワルして、あげたい気持ち」
黒は、アイジスの頭を抱きかかえた。そして、耳元に近づいて。囁く。
「……アイジスは、ボクを好きなんだよね?」
「……ッ……」
「でも、ボクが子供だから、困ってるんだ。……アイジスと比べて、ボクは、身体がちっちゃいから」
「……」
「……どう、だった? ボクの、身体。ちっちゃくて、狭かったよね」
「……!」
「……でもボクは、マスターの方が、好きなんだ。……シロの方が、好きなんだ」
「……」
「……それでも、いいなら。それでも、いいなら。……ボク、アイジスのお母さんに、なってもいいよ。……好きなだけ、甘えていいんだよ」
思わず俺は、ため息をついていた。昨日なんかじゃあ比べ物にならないほど、大きなものを。
こりゃまいった。どうやら黒は、天性の才みたいなものがあったらしい。いわば、聖母マリア的な。全てを受け入れて、包み込んでしまう力。
だが今は、それが悪い方向に働いている。……だってアイジスは、裁かれることを望んでいたんだ。殺されるか、そうでなくとも、何らかの形を罰を受けることを望んでいた。
でもそれを、受け入れるってのか? 黒はそれを受け入れて、アイジスを迎え入れるってのか? ……そんなの、ヤバイだろ。ほら、アイジスが震えてやがる。あの堅物のアイジスが、泣いてやがる。そんなの俺、初めて見たぞ。
「……ころ、してくれ」
「……ううん。嫌だ」
「頼む、殺してくれ……」
「……嫌だ。ボクは、アイジスのお母さんになるんだ」
こういうのはあまりわからないが、今ここでそれを受け入れたら、完全な主従関係が作られることになる。アイジスは、一生黒に逆らえない。……もし将来、黒が敵に回ることがあったとしたら……。
「……ほら。こうするの、好きだったよね?」
ふと黒は、アイジスの頭を自分の脇にあてがった。……やっぱりアイツは、匂いフェチだったか。夢中になって吸ってやがる。
「ち、違う。止めてくれ。……殺してくれ。裁いてくれ。約束、したじゃないか」
「……ごめんね。もう、その必要がなくなっちゃったんだ。……それに、アイジスには……。きっと、マスターを、殺せないと思うから」
「ッ……!」
「だから、ね? 約束、守れないんだよ。……でも、いいの。ボクは、これで満足だから。赤ちゃんみたいなアイジスが、ボクは、好きだから」
黒は、アイジスの頭を撫でている。まるで授乳をする、母親のように。
……というか、俺達はどういう感情でここに居ればいいんだろうか? そろそろいたたまれなくなってきたんだが。
「アイジスが子供にえっちなことをしちゃう、悪い人でも。ボクは、好きだよ。……ボクは、受け入れてあげるから。こうやって、撫でてあげるから。……だから、ね? シロ。……この人を、助けてあげて?」
「……クロ……。まあ君が、それでいいんなら。……でもその大人、クズなのには、変わりないよ」
「うん。いいの。……だって、クズだから、ボクを好きになったんだ。好きに、なってくれたんだ。……とても、可愛いんだよ。この、お目目がグルグルしてるような……お顔が」
……はあー。アイジスは、もう駄目だ。完璧に堕ちちまってる。色んな感情が、ごっちゃまぜになってやがる。
それに黒のほうも。最初に会った時と、随分変わっちまった。何があったか知らんが、随分心のほうがいかれちまってる。……やれやれ。もうこうなったら、俺じゃあどうにもできねえ。
「……ボクが、お母さんだからね。アイジス」
「はあー。おい、ノア……じゃなくて、シロ。……どーすんだ、コレ?」
俺はシロの側に寄って、耳打ちをした。シロは未だに、アイジスを見下しており。黒のおかげでなんとか感情を押さえているようだった。
「……しょうがないよ。クロが決めたことだから」
「つってもよ。いいのか? コレ。……なんてーか、ずぶずぶじゃねえか」
アイジスはもはや、痙攣していた。それを黒が、なだめていた。いや本当に、どういう感情で見守ればいいんだ。コレ。
「……で、どうすんだ。黒のこと。回収すんのか?」
「するさ。……でもこの様子だと、このクズも拾ってかないと駄目そうだ。だから、お前たち二人をウチの方に引き入れる」
それはつまり、俺達に管理者側に寝返れと言ってるようなもんじゃないか。
「どっちみち、君らにはそれしか手段がないだろう。僕達に追われて、レジスタンスに追われて。そんな生活、三日と持たないぞ」
……。仕方ない。俺だってもう、腹をくくったんだ。最後の最後まで、コイツらを見届けないと気が済まない。……色々な、意味でも。
「わかったよ。……で、どこの配属だ。またあの嫌な実験場に送られるんじゃないだろうな?
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