崩壊した世界からの脱出 -ボクたちはセックスしか知らない-

空倉霰

文字の大きさ
49 / 139
第六章

いたたまれない時間

しおりを挟む
 数時間後。俺達はシロに連れられて、上の階層へと訪れた。ここは地下二十階、あのシュバルツの野郎の大切な、実験施設だ。
 培養液の水槽に浸かる、人間。何かの薬品を調合する、ロボット共。そして廃棄処分となった実験体を捨てに行く、ベルトコンベヤー。
 いつ来てもここは、背中が痒くなる。人類の希望とのたまった、人体実験の温床。もうこんなの、やる意味なんてないだろうに。
「こっちだ。来い」
 俺が水槽を眺めていると、シロが俺を呼び寄せた。シロの隣には、黒が居て。その黒の隣には、アイジスが居る。
 シロが入った部屋は、この実験場の中でも特に重要な場所だった。ドーム型になっている部屋の中に、多くの実験体を保管したカプセルが、床いっぱいに広がっている場所。
 カプセルの中には、水色の液体が入っており。そして呼吸器をつけられた、実験体が入っている。……それもまだ、全員子供。
「……これ、全部……。超能力者なのか?」
 俺は、上を見上げた。ドームの天井部分は、ガラスになっており。一見すればそれは、吹き抜けの構造になっているようにも見えた。
 そしてその天井の向こう側には、多くのカプセルを収容するための、円柱型の機械式立体駐車場のようなものがあった。……。一体、何人居るのだろう。俺の目ではとても、数え切れない。
「それは君が気にすることじゃない。……ん?」
「……シロ。ここ、……怖い」
 すると、俺は黒が怯えていることに気が付いた。黒は怯えた様子で、シロの腕にしがみついている。
「……大丈夫だよ。ここは、病気の子供のための、病院なんだ。マスターが、皆の病気を、治してあげてる場所なんだよ」
「……マスター、が?」
「うん。ここもマスターの、大切な仕事場なんだ。だからここを、この二人に守ってもらおうと思うんだよ」
 よく言うぜ。無駄に子供の扱いばっか上手くなりやがって。
「……ボクらは、どうするの?」
「僕らは、マスターとの約束を果たしに行こう。……ほら、荷物を取ってくるって約束したじゃない」
「え? ……でもあれは、メアが……」
「いいから、ほら。行こう。ここはあの二人に、任せておけばいいから」
 シロはそう言うと、黒の手を引っ張った。それでも黒は、何か思いつめたような表情を見せ。……アイジスの元に小走りで近寄り、軽いキスをした。
「――お仕事、頑張ってね?」
「あ……。……うん」
「っ……。行くよ、クロ!」
 シロはアイジスから黒を引き離し、急ぐように奥の部屋へと姿を消した。……二人が部屋に入ると、部屋の厳重な扉は、ゆっくりと閉まり。このドームの中には、俺とアイジスだけになって。当然俺は、非常に気まずい。
「あー。……まあ、ほら。おら、仕事すっぞ」
 とりあえず俺は、アイジスに尻を蹴り上げ。仕事の準備をした。まあ仕事と言っても見張るだけなので、いつも通りなのだが。
「いや恋する乙女か。シャキッとしろっての」
 アイジスの顔は、ぽけーッとしていた。まだ先ほどの涙のせいで、目が少し赤く。明らかに集中していない。
 ……もうこうなれば、俺の出る幕はないと思うが。かといって仕事に支障をきたすのも困る。
「しっかりしろって。あの、なんだ。とりあえず、よかったじゃねーの。死なずに済んだぜ」
「……。ああ、そうだな」
「ウラヤマシーぜ。な? あの、な? アレだ。男の娘のキスだぞ。やったなお前」
「……」
 いやこれどうやってフォローしたらいいんだ? 俺だって、仕事どころじゃないってのに。……そんな顔の奴が隣に居るだけで集中が切れちまーう。
「あー。知ってるか? 大昔にはVtuberってのが居たんだぜ」
「……そうか」
「えーーーー、雑草食ってる人とか居たんだぜ」
「……へえ」
「あの、アレだ!! 女がいっぱい居たんだぜ! 胸のでけーチャンネーがよ、そこらをウロウロしてんだ! わかるか! おい!」
「……俺、そっちの趣味ないから」
「いやジェネレーションギャップゥ!!」
「……」
「……」
 いや反応しろよ!! 今のは俺の渾身のノリツッコミだったろ!! こっちだって必死に励まそうとしてんじゃ!!
「……無理しなくていい。俺は、大丈夫だから」
「どこをどう見たら大丈夫と判断出来るんだって。いやもう、俺の方が落ち着かんわ……」
 とりあえず大体コイツが悪いってのはわかるが、今それを責め立てても仕方ないだろ。それにその役割は、俺じゃなくて黒だ。コイツを裁く権利は、黒にしかない。その黒がもう決めたことなんだから、コイツはそれに従う他ないんだ。
 かといって、このままズルズル行くのもなあ。絶対コイツの恋は実らんだろ。どっかでもうキッパリ諦めた方がいいんだろうが、それも出来そうにないし。ってことは、アレか? 俺はこれからずっと、コイツの赤ちゃんプレイを見続けるのか?
「いやいやいやいやそれは嫌だ。自分がやるならともかく、他人のを見るのは嫌だ」
「……お前さっきから一人で何を言ってんだ?」
「いや男の娘の膝枕の話……」
「……は?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...