崩壊した世界からの脱出 -ボクたちはセックスしか知らない-

空倉霰

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第八章

奇人

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 アイジスはボクを抱っこしたまま、緑のお兄さんと一緒にどこかへと進んだ。レオは、いつの間にか居なくなっちゃって。
 その途中で何人かの大人とすれ違った。さっきは気が付かなかったけど、ロインと出会ったあの場所にも何人かの知らない大人たちが居た。
 ……ここはどこだろう。牢屋とか、牢獄とかとも違う。なんか見たことがないもので溢れてる。鉄のプレートみたいな床とか、壁とかばっかりで。コンクリートとかがあまり無い。
「ここです。ドクター、入りますよ」
 緑のお兄さんはどこかの扉をノックして、部屋の中に入った。中は医務室みたいになっていて、いろいろな薬の匂いや、包帯なんかがあって。……そして、奥の方に、白衣を着た……。
「あーーーーららららっらららっらァ??????? あら? あらら?」
「うっ……!」
「きゃー!! ちっちゃなコ! 怪我? 病気? 早く見せなさい! つか見せろ! あららら!」
 変な人が居た。身体を後ろにグインと曲げて、変な姿勢で、ボクを見てる。舌も、ぺろぺろさせてる。
「ドクター、怖がらせるのは止めてください。つかキモイです」
「キモイ? どして? むしろ素敵じゃーーね? あーーは?」
 髪が長くて。目をぎょろぎょろさせてて。お胸が、なぜか大きい。それに左手でメスを持ってて、右手で包帯を持ってる。
「さ! さ! ほら、お洋服を脱ぎましょーな! へへー! ほらー……」
「触るな下衆野郎!!」
 するとその人は、ボクに手を伸ばしてきて。それをアイジスが払いのけた。……だから、メスが吹き飛んで。壁に刺さる。
「ワッツア!? 乱暴! 希望! 絶望! インスプレーションヌァ!! 何すんのこの野郎! 犯すわよ!!」
「それはこっちのセリフだ! ……いや最後のは違うが、クロには触れさせねえ!! 失せろ!」
「きー! 可愛い娘は人類の遺産なのよ! 皆の恋人なのよ! だからアタシの恋人でもあるんだから服を脱がせて身体をまじまじと見る権利だって」
「……くっ、いい加減にしやがれ!!」
 その時だった。アイジスが片手で銃を取り出して、弾の出る所をこの人の頭に向けた。
 ……前にシロに教えてもらった。これは、人を傷つける道具だって。人を殺すための、道具だって。……この人は、悪い、大人なのかな。
「それ以上クロを侮辱すると、俺はお前を殺す!! これは警告だ!!」
「はははァ!? やるってわけ!? この人類最後の天才ドクター、マカラーヌァ先生に盾突くってわけ!? マジ笑えるぜええええーーー!!」
 するとその人は、白衣を大きくはためかせた。そして白衣の内側に、おびただしい数のメスがあるのが見えて。その人は指と指の間で、何本ものメスを握り。ジャキン、と構えた。
「殺すッ!! アンタを解剖して、実験材料にしてやるわ!! 内臓をネズミに喰わせて皮を焼いてやるぜえ!!」
「やってみろ!! お前ごときに俺は殺せねえ!!」
 二人が、熱くなっているのがわかる。同時に、アイジスがボクを抱く力が、とても強くなっていって。……ボクは、少しだけ怖かった。
「はい、そこまで」
「あ……?」
 でも、緑のお兄さんが間に入った。アイジスとお医者さんの間に立って。二人に向けて、手のひらを見せている。
「すみません隊長。この人、脳がやられてるんです。前に大きな怪我をして以来、こんなんになっちゃって」
「天才の目覚めよね!! おかげで全ての知識が湯水のように入ってくるわ!! わかる、わかるわよお!! アンタが処女じゃないってこともね!!」
「なっ!?」
「堅物そうにしてるけど、意外と甘えるのが好きでしょ!? 強引に攻められるのも好きそうね!! でもそれでいて、独占欲も強め!? ひゃーーー! オモシロッ!!」 
 その人は腹を抱えて高笑いしている。アイジスは、顔が真っ赤になっていた。
「ぐ……! お、お前! ふざけんな!!」
「まあまあ隊長。この人、ウソは言いませんから。それより隊長、卒業おめでとうございます。相手はレオさんですか?」
「お前もかよ!?」
「いやーやっとくっついたんですね。レオさん、ずっと隊長のこと見てたんですよ?」
「……え?」
「切なそうでしてね。なんか、ずっと気持ちを押し殺してたって感じかな?」
「……。そう、なのか……」
 ……よく、わからないけど。アイジスは、レオのことを好きなのかな。お顔が、真っ赤で。目線をそらしてて。……でも、どこか嬉しそう。
「きゃー! アタシそういうの好きよ! ねね、見せて! 見せて! 陰からこっそり観察させて!!」
「うわっ、近づくなお前!」
「どっちが受け?? 攻め?? ねね、アイジス×レオ? それともレオ×アイジス??? そこ重要だから! 詳しく聞かせなさい! つか聞かせろ!」
 お医者さんは、アイジスにぐいっとよって。銃を握ってる腕に、抱きついた。
「うわっ!? って、なんで胸でかくしてんだよ! 押し付けんな!」
「えーー? だってアタシ、女の子だもの! 胸があって何が悪いってのよ!!」
「……は?」
「触る!? アタシの大事なとこ、ほれ、触る!? つか触れ! オラ!! 私の股を触れ馬鹿野郎!!」
 するとお医者さんは、銃を奪ってそこら辺に投げ捨てて。アイジスの腕を握って、自分のあそこにくっつけた。
「うわっ! ちょっ……。……、あれ? ……これ……。……生えてんじゃねえか!! お前男だろ!!」
「残念生えてまーーす!! 女ですけど生えてまーすう!! これは可愛い子をめちゃくちゃにするためにつけたんでーす!! 感度千倍ってか!?」
「なんなんだお前!? もうわけわかんねえよ!!」
「あ、でも穴もあるわよ!? 両性具有なのアタシ! 人類の最適解ね!! それよりねえ少年、今晩どう!? 大人の女を教えてあげるわよ!!」
「う……」
 ……。もう、わかった。この人は、頭がおかしい人なんだ。……近寄ったら、駄目な人。
「ねえねえ、何歳!? いやどうでもいいか!! クロって言ったっけ!? いい名前ね!! ね、子供産んで! 私の子を妊娠して! お願い!」
「……へ……」
「ん!? 何!? 何なの!?」
「……こっちに、来ないで。……変態」
「ドギュウウッッァアァアンンッッ!?!?!?!?」
「出たセルフ効果音」
 ボクは、お医者さんに悪口を言った。……あまり、言ったら駄目なんだけど。その人を、傷つけちゃうから。
 でも、どうしてだろう。この人は嫌がってるっていうより、……喜んでるような。とても、笑顔で。……ヨダレまで垂らしてる。
「い……いいわっ!! ショタっていうか、男の娘の罵倒ッ!! 興奮するッ!! ねね、ねえっ! あの、『お兄ちゃんのばか』って、言ってくれない!?」
「え……?」
「お願い! お願い! 一生のうち何度も使う一生のお願い!」
 ……何なんだろう、この人。でも、こんなに必死に、お願いしてるから。何か、大切なことなのかも。
「……お……」
「はい!!」
「……お兄ちゃんの、ばか……」
「ごわッッッ!!」
「うっ……!」
「胸に刺さった」
 ……よくわからない。でも、なんでか。この場にいる三人が、一気に顔が赤くなった。……ボクは、アイジスを見上げて。目を見てみた。
「いや、ちょ……。その、クロ。……その、今上目遣いは、やばいというか……」
「……?」
「あのだから、そのキョトンって顔が……。いや、あの、その……」
「この清く無知な生き物を、汚していく背徳感……。なぜ神は、このような感情をお授けになったのか……。よくやったッッッ!! 神、ナイスッッ!!」
「心の底から同意」
 その後もしばらく、ボクは変な言葉を言わされ続けた。……別に嫌ってほどじゃないけど、何か奇妙で。
 ボクがお願いされた言葉を言う度、皆が自分の胸を押さえて。苦しそうにしてた。それでも、何か嬉しそうで。もうボクは、よくわからない。
「はあー。はあーー。……はあー。……もう死んでもいいわ」
「あ、ああ……。……悔しいが、少し、わかる気がする」
 アイジスとお医者さんは、鼻血を出していた。だからボクは、心配したんだけど。ずっと平気だって言ってる。
「お二人とも、そろそろいい加減にしときましょうよ。今はクロの治療をしないといけないんですよ?」
 ……。でも、よかった。この人たち、悪い人じゃないみたい。少し、変だけど。ボクを虐めたりは、しないのかな。
「こほっ、こほっ……」
「……おい、クロ?」
 すると、なぜかボクは突然咳き込んだ。どうしてか、急に苦しくなってきて。
「げほっ、げほっ……うう」
「おい、大丈夫か? どうしたんだ?」
「あー、最初の症状が来たみたいだねえ。はいちょっとどーいてー」
 お医者さんが、ボクを抱えて。ベッドの所で寝かせてくれた。そして袖をまくって、腕に消毒をして。……何かの点滴みたいなのをした。
「おい、クロはどうしたんだ? というか、今何をしてるんだ?」
「麻薬の中毒症状だよーと。あいつらが使ってるのは、劇薬だから。今のうちから、抵抗するための点滴をしとかないとーん」
「ゴホッ! ゴホッ!」
 心臓が、バクンバクンする。頭が、痛くなってきた。……何だろう、これ。確か前にも、こんなことが……。
「クロー。こっち見てねー。聞いちゃあ駄目だよーん」
「あ……う……?」
「あー、焦点があってないねえ。ううん、どうしようかな。そうだ! 王子様のキスで治るかな!? じゃあアタシが率先して」
 ……大きな音がした。色々なものが、倒れるような。……アイジスが、お医者さんの胸倉をつかんでいる。
「お前真面目にやれよ!! クロが苦しんでんだろうが!?」
「ちゃんとやってるさあ。でもでも、薬が足りないんだよねえ。あの劇薬を抑えるだけの薬は、ここじゃあ精製しようがないのよねえーと」
「ぐっ……!」
「まあ強いて言えば、シュバルツちゃんなら作れるかもだけど。でもでも、君たちはそこから逃げてきたんだよね? なら無理かなあーー。ううーん?」
「……チッ、ならせめて痛みだけでも和らげてやれねえのか!?」
「それなら出来なくはないけど、問題を先送りにするだけなんだいーや。完治は出来ないんだがやーね? ……苦しみを耐えれば、完治するかもだけれどのまわさ?」
「ゲホッ!! ゴホッ!!」
 声がする。……皆の、声じゃない。もっと、大きくて。……たくさんの、声が。……誰かが、ボクを呼んでる。
「おいクロ、大丈夫だ! 俺が居るからな、落ち着いてくれ!」
 ……アイジスが、手を握ってた。ボーっとするけど、それだけはわかって。……安心、する。
「ドクター、とりあえず治療をお願いします。オレはそろそろ、ボスの所に合流しますんで」
「りょーかい! 身体検査にかまけてハスハスしまくるわっ!!」
「俺がさせねえ。したら殺す」
「あ、目がマジだ!」
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