崩壊した世界からの脱出 -ボクたちはセックスしか知らない-

空倉霰

文字の大きさ
74 / 139
第十章

迎え

しおりを挟む
 ボクはふと、ゲートの向こうに目を向けた。……そこは、たくさんの煙があって。向こうが、見えなくて。
 でも誰かが居た。誰かの影が見えて、最初は、一人。子供くらいのだったけど……。もっとたくさんの影が、すぐに見えてきた。
「やっぱり、こんな所に居たのね……。こんな薄汚い所に居るなんて、考えもしなかったわ」
 ……メア、だった。それでその周りに。銃とかを持った、大人たちが居て。ボクは、この人たちと戦っていたんだと理解した。
「さあ、帰りましょう? シロも、待っているから」
「っ……」
 動けるのは、ボクくらいだった。アイジスも、レオも。……腕こそ飛んでなかったけど、明らかに重症だった。
 だから、せめて二人だけでも守ろうと思って。お洋服ごと、引っ張った。引きずりながら、安全な場所まで。
「あら、駄目よ。そいつは私達を裏切った、クズなんだからッ!!」
『ダアンッッダアンッッ!!』
「ぐあああっっ!!」
 メアが銃を撃った。とても小さい銃だけど、それはアイジスとレオの足を撃ちぬいて。穴を開けてしまった。
「や、やめてッ!!」
 ボクは必死に、二人の前に出る。……でも、止められる気がしない。あの二人を撃ちぬくものを、ボクが受け止め切れる気がしない。
「……なら、戻って来る? また一緒に、戦ってくれるの?」
「っ……」
 ……もう、あそこには戻りたくない。でも、でも。……二人を殺されるのも、嫌だ。
「…仕方ないわね。連れてきなさい」
 すると、メアが何かの合図を出した。……それで、煙の奥から誰かが出て来て……。
「ッ!! シロ!!」
 シロ、だった。……なぜか、シロがまだ捕まってて。たくさんの傷を、負ってた。
「どうして、どうして!! だって、シロは――」
「クロ」
「っ……」
「……大丈夫。僕は、大丈夫だから」
 ……傷ついてる。身体も、だけど。……何よりも、心が。
「ひどいものよね……。あいつら、まだこんな子供に何をしたと思う?」
「……」
「毎日毎日、レイプされて。輪姦まわされて。それでも必死に耐えてたのよ? クロを守るためだー、ってね……」
「……シロッ……」
「で、あまりに強情だから……。私、ちょっと意地悪しちゃった」
「……、え……?」
「覚えてる? あの、触手の化け物。……実はあれを作ったの、私なんだ」
 ……。ちょっと、待って。……そんな、まさか。
「だから、あれに……。シロを、襲わせたの」
「!!」
「すごかったのよ。あいつら、子供を残すのに必死だから。精液でまみれて、もう意識が無くなるくらい……」
「……黙れ」
「中に出して、中に出して、中に出して……。そしたら、シロはね……?」
「黙れッッ!!」
 ……シロが、叫んだ。……すごく、悔しそうで。歯を、食いしばってて……。
 ……いつから? 一体、いつから……。ボクが、ご飯を食べてた時も? ボクが、お話してた時も? ……ボクが、えっちなこと、してた……時も……? シロはずっと、苦しんでいたの……?
「クロッ! こんなヤツの話なんて聞かなくていい! 逃げて!!」
「……シロ……」
「……ねえ、助けたいと思わない? シロを、助けてあげたくない……?」
「うるさい! 黙れ! 僕は大丈夫、だから逃げて! お願い!」
 シロが、叫んでる。必死に、訴えかけてる。……自分の身を、捨てて。自分の方が、もっと傷ついてるのに。
 ……どうしたら、いいんだろう。シロも、アイジスも、レオも。みんな、守りたいのに。誰かしか、選べない……? 誰かを選んだら、誰かが……死ぬ……?
 ボクが、弱いせいで。せめてボクが。強ければ。……全員とまでは言わないけど、せめて、自分の大切な人たちくらい……。
「……させる、かよ」
「えっ……」
「んな胸糞わりい選択、させてたまるかってんだ……」
 ……アイジスが、起きていた。レオも、いつの間にか、立ってて。……ボクの前に、出ていた。
「……相棒の言う通りだぜ。そういうダンディな判断は、大人だけの特権ってやつさ」
「……まだ生きていたのか。とっとと死んでしまえば、楽なのに」
 血が出ている。それに、さっきの爆発か何かでの傷は、外側より中の方が大きいはずなんだ。……お腹とか、骨とか……。
「ふ、二人とも……。そんな傷で、動いたら……」
「……約束を守る時だよ、クロ」
「っ……」
「約束したもんな。シロを、助けるって。……もう一つの方は、無理かもしれないが……」
 ……アイジスの顔は、迷いがなかった。迷いが、伝わってこなかった。……もう、覚悟を決めてて。今ここで、死んじゃう覚悟が……。
「いけるか、レオ」
「ああ。当たり前だ。……俺だってもう、腹くくってんだぜ」
 二人は、銃を構えた。……だから、メアの方の大人も、構えて。
「馬鹿ね……。自殺覚悟の特攻? カミカゼじゃあるまいし……。……まあ、いいわ。そっちがその気なら……」
 ……戦いが、始まるんだと思った。それで、きっと……。二人は、死ぬ。こんな状況で、勝てるはずがない。
 どうして、こうなるんだろう。なんでみんな、戦うんだろう。痛い思いを、してまで。誰かを、殺してまで。
 どうして、守るんだろう。ボクなんかのために。ボクは、何も出来ないのに。みんなを、守ることも出来ないのに。
 ……強くなりたい。みんなを、守れるだけの。明日とか、明後日とかじゃなくて。今、今すぐほしい。……でも、そんな都合のいい話、あるはずがない。……ない、から……。
「うわああああっっ!!」
「あっ、クロ!!」
 ……やれることを、やろうとした。今ボクが、やれることを。そこらに落ちてた銃を握って、メアたちに向けて……。走った。
 撃ち方は、なんとなくわかる。これなら、これなら少しは、戦えるはず。……せめて、せめて。
「ま、待て!! 全員、撃ち方止めろ!!」
 ……でも、向こうが先だった。向こうが、ボクよりも先に撃って……。もうすぐ目の前まで、弾が来てた。
 ……ああ、死ぬのかな。もう、死んじゃうのかな。まだ、やりたいことあるのに。まだ知りたいこと、あるのに。……みんなを、守りたかったのに。
 ごめんね、シロ。アイジス。レオ。ラム。……マスター。ボクは、ボクは……――。





『防御プログラム、起動します』
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

処理中です...