崩壊した世界からの脱出 -ボクたちはセックスしか知らない-

空倉霰

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第十二章

敗北?

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 最近、アイジスの様子が変だった。ふと、落ち込んだかと思えば。妙な笑顔を見せ。妙だと思ったら、途端に元気になって……。
 なんだか、アイジスが俺から離れていく気がする。いや元々、……そこまで近くは、無かったのかもしれないが。
 妙な事と言えば、それ以外にもある。クロの姿が、最近見えないのだ。一応たまに見かけはするので、元気そうではあったが。それでも、一体どこに行っているのか。
「おい、聞いているか?」
「え? ……あ、ああ。なんだっけ」
「だから言った通り、新しい本部のための場所を確保した。よって、近日中に移動を開始しようと思う。お前にはその部隊の指揮をしてもらうことになった」
「……了解。でも、珍しいな。もう少し時間がかかると思ったが」
「まあ、色々あってな。とにかく明日にでも新しい命令が下る。待機していてくれ」
 俺はアレクサンダーの部屋を出て、とりあえず今日の仕事は終わった。だから、シャワーでも浴びて部屋に戻ろうかと思ったのだが……。
「あ」
 アイジスが、曲がり角の向こうに居た。だから声をかけようとしたのだが……。……なぜか、隣には金髪の奴が居て。そいつが、アイジスにキスをしていた。
 一瞬俺は、何が起こったのかわからず。放心していた。あまりに突然かつ、自然に。……だから、俺の心の動揺は、やや遅れてやってきた。
 確かあいつは、クロの側近だったはず。やけに高飛車な性格だったが、変なヤツじゃない。……だが、なぜ。なぜあいつが、アイジスとキスをしている?
「……。言ったろ。俺とお前はそういう関係じゃねえって」
『”まだ”、を付け足すのを忘れているぞ。……どうせお前には、私が必要になる。嫌でもな』
 ……何の話をしている? 何だ?
「あっ……。す、すみません……」
「え? あ、ああ……」
 すると、俺の背中に誰かがぶつかった。それで、後ろを見てみると。キュニョーだった。あのみょうちきりんな、オタク系女子。
 キュニョーは俺に頭を下げると、アイジスの所に近寄って。何かを渡していた。多分、何か仕事関係の物だと思うが……。
「も、も、持ってきました……」
「……。ああ」
 ……何か変だ。キュニョーは、確かに暗い喋り方だが。あそこまで陰鬱とした喋り方というか、動き方はしなかったはず。なんというか、まるで怯えているような。
『さっさと消えろ。目障りだ』
「ひっ……。す、す、すみません……」
 キュニョーは、再び俺の後ろを通って立ち去っていく。……気のせいでなければ、やけに顔が強張っていたが。
「……ちょっと待てよ。だから、そういう関係じゃねえって……」
 うん?
『うるさい。お前はいいかもしれんが、私だって溜まるんだ。……相手をしろ。お前は、じっとしていればいい』
 ……。
「ゲホッ! ゴホッ!」
「っ!?」
「いやー。ここ、ホコリっぽいなあ。ちゃんと掃除してんのか?」
「れ、レオ……」
「ん、おーアイジス。どうした? こんな所で。それに金髪のも。何か秘密の相談事か?」
「……いや、ちょっと立ち話を」
「そっか。ああ、そういえばアレクの爺さんが、今度デカい作戦やるってよ。ちゃんと鍛えとけよ~?」
「ああ。……わかった」
「んじゃあ後でな~」
 そう言って、俺は手を振り。その場を後にした。……。これが、俺に出来るせめてもの抵抗だった。  俺に選ぶ権利はない。俺は、アイジスを無理矢理奪い捕っただけなんだ。……アイジス自身が、選んでくれたわけじゃない。だから、アレは当然の権利だ。
 ……。でも。いくら理性で理解しようとも。感情が抑え込めない。恨めしくて、必死で。何だったら、今すれ違った瞬間にでも。……あの金髪の奴を、殺してしまいたかった。
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