88 / 139
第十二章
セキュリティ
しおりを挟む
俺は治療室を調べつくして回った。一見すれば、変な機械やら変な薬があること以外は問題なかったものの。だが一つだけ問題があった。それが、この壁。
この壁は、他とは違って少し凹んでいる。こういうデザインにも見えるが、凹んでいるのはここだけだ。……そしてシュバルツの性格を考えれば。こういうことになるわけで。
「よし、これだ」
隠し扉。やっぱりあいつは、少し古臭い。机の下にボタンがあった。それを押せば、隠し扉が開く。まあ開けゴマっていう音声認識じゃなかっただけマシだろう。
そこは、狭く長い通路になっていた。今までのコンクリート作りのものではなく、しっかりとした研究機関のための通路。白い壁に、白い床。
とにかく俺は、注意しつつ奥へと進んだ。レーザーなんかが出て来て、俺を八つ裂きにするかとも思ったが……。意外にセキュリティは甘いようで、すんなり進めた。
そして、一番奥。何かの扉の前に、俺は立っていた。特に指紋認証とか暗証番号とかもなく、ドアノブを捻れば、開くらしい。
俺は大きく深呼吸をして、ドアノブを握った。それでゆっくりと、回していく。
「――」
その時だった。背後から何かの音がしたので、俺はすぐに振り返って銃を構えた。何かしらの敵か、それともセキュリティか。どちらにせよ俺は殺意をこめて、後ろを見たのだ。
「……。クロ?」
すると、なぜか後ろにはクロが居た。シロではなくて、クロが。クロが一人で、俺の後ろに立っていたのだ。
「お前、どうしてここに? 何してるんだ?」
しかしクロは、俺の質問に答えることなく。ただぼうっと、俺の顔を見ていた。意識があるのか、ないのか。ハッキリしない。
だが仮にあったとしても、正常ではないのだろう。なぜならクロは、裸だったからだ。普通の神経をしてたら、こんな所で素っ裸で立っているわけがない。
「……とにかく、待ってろ。なんか持ってくるから」
俺は少し戻って、治療室の隣の部屋で適当な服を選んだ。選んだというより、最初に目についたものを手に取っただけだが。
そして俺はその服を、クロに着せた。大きなワンピースを、上からバサッと。とりあえずはこれでいいだろう。
だが、気に入らなかったらしい。クロは今着たばかりの服を、破り捨てた。せっかくの綺麗な服が、ビリビリになっていく。
「……マスター以外から貰うお洋服なんて、嫌いだ」
クロは、俺を睨みつけていた。まるで、親の仇のように。
「おい、落ちつけよ。何怒ってんだ? そんな物騒なもん持ち出してよ」
クロは、俺にナイフを向けていた。確実な、明確な殺意を抱えて。……ふと、気が付く。こいつは、クロじゃない。
「……。なるほどね。そういうことか。こいつは随分、面倒なことになってんな」
確か俺の知っているクロには、手首にリストカットの痕が残っていた。だがコイツには、無い。つまりはクロも、シロと同じように。
「お前は、誰だ? マスターを、虐めるのか?」
「虐めねえよ。アイツが虐めて来ない限りはな」
この時点で、俺の推測はもはや確信になっていた。この施設に渦巻く、奇妙な秘密。奇妙な真実。
だが、それを知った所でどうするか。別に今更、何かが変わるわけじゃない。世界が救われるわけでも、アイジスが救われるわけでも。
「で、どうする。侵入者である俺を、殺すのか?」
「……。大人しく帰るんなら、殺さない」
「へ。優しいねえ。そこはやっぱり似てんのか」
「……?」
だから俺は、そっとしておくことにした。こういうのは、個人の問題だ。俺が介入することじゃない。元々今回の件は、俺が気になってただけだ。
俺はその場を立ち去るために、そいつの横を通り過ぎた。そして通路を出て、治療室に戻る……。
「待って」
それを、そいつが引き留めた。
「……お兄ちゃんは、ここがどこか、知ってるの?」
そいつは、俺に問いかけた。恐らくそれは、この世界において。唯一俺ぐらいだけが、語る権利を持つもの。……俺以外で言えば、シュバルツくらいにしか語れない。
「ああ。知ってるぜ」
「……」
多分そいつにとって、俺は初めて出会う”他の人間”なのだろう。恐怖と好奇心が混ざったような、表情をしている。
「知りたいんなら、話してやる。……でもな、つまらねえぞ」
この壁は、他とは違って少し凹んでいる。こういうデザインにも見えるが、凹んでいるのはここだけだ。……そしてシュバルツの性格を考えれば。こういうことになるわけで。
「よし、これだ」
隠し扉。やっぱりあいつは、少し古臭い。机の下にボタンがあった。それを押せば、隠し扉が開く。まあ開けゴマっていう音声認識じゃなかっただけマシだろう。
そこは、狭く長い通路になっていた。今までのコンクリート作りのものではなく、しっかりとした研究機関のための通路。白い壁に、白い床。
とにかく俺は、注意しつつ奥へと進んだ。レーザーなんかが出て来て、俺を八つ裂きにするかとも思ったが……。意外にセキュリティは甘いようで、すんなり進めた。
そして、一番奥。何かの扉の前に、俺は立っていた。特に指紋認証とか暗証番号とかもなく、ドアノブを捻れば、開くらしい。
俺は大きく深呼吸をして、ドアノブを握った。それでゆっくりと、回していく。
「――」
その時だった。背後から何かの音がしたので、俺はすぐに振り返って銃を構えた。何かしらの敵か、それともセキュリティか。どちらにせよ俺は殺意をこめて、後ろを見たのだ。
「……。クロ?」
すると、なぜか後ろにはクロが居た。シロではなくて、クロが。クロが一人で、俺の後ろに立っていたのだ。
「お前、どうしてここに? 何してるんだ?」
しかしクロは、俺の質問に答えることなく。ただぼうっと、俺の顔を見ていた。意識があるのか、ないのか。ハッキリしない。
だが仮にあったとしても、正常ではないのだろう。なぜならクロは、裸だったからだ。普通の神経をしてたら、こんな所で素っ裸で立っているわけがない。
「……とにかく、待ってろ。なんか持ってくるから」
俺は少し戻って、治療室の隣の部屋で適当な服を選んだ。選んだというより、最初に目についたものを手に取っただけだが。
そして俺はその服を、クロに着せた。大きなワンピースを、上からバサッと。とりあえずはこれでいいだろう。
だが、気に入らなかったらしい。クロは今着たばかりの服を、破り捨てた。せっかくの綺麗な服が、ビリビリになっていく。
「……マスター以外から貰うお洋服なんて、嫌いだ」
クロは、俺を睨みつけていた。まるで、親の仇のように。
「おい、落ちつけよ。何怒ってんだ? そんな物騒なもん持ち出してよ」
クロは、俺にナイフを向けていた。確実な、明確な殺意を抱えて。……ふと、気が付く。こいつは、クロじゃない。
「……。なるほどね。そういうことか。こいつは随分、面倒なことになってんな」
確か俺の知っているクロには、手首にリストカットの痕が残っていた。だがコイツには、無い。つまりはクロも、シロと同じように。
「お前は、誰だ? マスターを、虐めるのか?」
「虐めねえよ。アイツが虐めて来ない限りはな」
この時点で、俺の推測はもはや確信になっていた。この施設に渦巻く、奇妙な秘密。奇妙な真実。
だが、それを知った所でどうするか。別に今更、何かが変わるわけじゃない。世界が救われるわけでも、アイジスが救われるわけでも。
「で、どうする。侵入者である俺を、殺すのか?」
「……。大人しく帰るんなら、殺さない」
「へ。優しいねえ。そこはやっぱり似てんのか」
「……?」
だから俺は、そっとしておくことにした。こういうのは、個人の問題だ。俺が介入することじゃない。元々今回の件は、俺が気になってただけだ。
俺はその場を立ち去るために、そいつの横を通り過ぎた。そして通路を出て、治療室に戻る……。
「待って」
それを、そいつが引き留めた。
「……お兄ちゃんは、ここがどこか、知ってるの?」
そいつは、俺に問いかけた。恐らくそれは、この世界において。唯一俺ぐらいだけが、語る権利を持つもの。……俺以外で言えば、シュバルツくらいにしか語れない。
「ああ。知ってるぜ」
「……」
多分そいつにとって、俺は初めて出会う”他の人間”なのだろう。恐怖と好奇心が混ざったような、表情をしている。
「知りたいんなら、話してやる。……でもな、つまらねえぞ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる