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第十四章
To you dear
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息を吸う度に、生臭い空気が鼻に入って来た。喉が苦しくなって、思い切り咳き込んじゃった。
世界が違って見えた。前の時みたいに明るくなくて、とっても暗く見えていた。多分それの原因は、この景色のせいだと思う。
あの時は確か雲の上だったけど、今ボクは雲の下に居る。だからここからなら、地上がよく見えるんだ。……何もかもが壊れてる、世界が。
「もう何年も前のことだ。どうしようもないほどに大きな、戦争が起こったんだ。これはその時の遺産だよ」
沢山の建物があった。でもそのどれもが、砕け散ってて。瓦礫で溢れかえってた。
地面には草の一本も生えていなくて。代わりに変なドロが地面を覆ってて、脂っこそうに虹色に輝いていた。多分臭いの原因は、あれなのかもしれない。
「我々は問題ないが……。普通の人間は、ここで息を吸うことすらできない。汚染を解消するにはまだ時間が必要だからね」
きっとここは、絵本で見た”町”っていう所だと思う。沢山の人が居て、沢山の建物があって。とっても広い空の下で、沢山の人生があった。
でも誰も居ない。代わりにあるのは、服を着たドクロだけ。つまり死んでいた。人の数だけ、死体があった。
「……。大丈夫だよ。もう戦争は終わってる。君が心配することは、何も無いんだ」
ボクはマスターにしがみついていた。とっても、胸の奥が苦しくなって。悲しくなっていた。
色々な想像をしてた。ここで過ごしていた人で、生き残った人は居るのかとか。どうしてこうなったのか。それで気が付けば、皆のことを考えていた。
「……。皆は? 皆は、どこに居るの?」
「”塔”に居るよ。――ほら、あれだ」
マスターは離れた場所を指さした。するとそこには、灰色の大きな塔があって。雲の上まで続いていた。
「……あれって、もしかして。前に行った……?」
「そう。あの塔の上には、私の”庭園”がある。彼らは今その下の階層を占拠して、立てこもっているんだ」
塔の隣には、とても大きな建物があった。位置から考えて、あの建物が、今までボクが居た場所なんだと思う。
すごく大きかった。それ以外に言いようがないくらい、大きかった。……きっとあの建物に、生き残った人が逃げ込んだんだ。つまりはその、なんていうか。……しぇるたー?
「……だから、外に出られなかったんだね。世界がこんなだから、皆、あそこに閉じこもるしか無かったんだ」
「そう。だが彼らにはそれがわからないんだ。外の世界に希望など……無いというのに」
マスターは、ボクを抱っこした。マスターはボクの頭を撫でながら、どこかに向かう。
「でも君には、この世界を知っておいてほしかった。この世界にも未来があることを、理解してほしかったんだ。例えどんな形でもね」
言ってることはよくわからなかった。なんというか、矛盾してるような気がした。希望が無いのに、未来はあるの?
「だからこそ、彼らを倒さないといけない。シェルターでなら構わないが、あの塔に入り込まれては迷惑だ。あの庭園を汚されるわけにはいかないんだよ」
するとマスターは、どこかの部屋に入った。そこはとってもボロボロで、かなり時間が経ってるみたいだった。
でも不思議だった。なぜだかここは、懐かしい感じがした。来たことはないはずなのに、どうしてだろう。
「ここは、前に私が住んでいた場所なんだ。古くて狭いアパートだったけど、とっても楽しかった。……本当に」
マスターは棚の上にあった物を手に取った。ホコリを掃ってみると、一枚の写真が出て来て。ボクはそれをよく見てみた。
「これは……。マスター?」
「ああ。何年も前の私だ。……懐かしい。私が写真に写ったのは、これが最初で最後だったな」
そこには今よりずっと小さい、マスターが居た。仮面は今と同じだけど、なんというかこう、子供のようだった。
そして、隣に誰かが居た。マスターの隣には、同じような子供が居て。白い服を着てた。……誰だろう、これは。
「この人が気になるかい?」
「うん。……大切な人?」
「ああ。これは私にとっての、最も大切な思い出の一つ。……私が初めて愛を覚えた、相手だよ」
マスターはどこか嬉しそうだった。それでもやっぱり、悲しそうでもあって。
「彼女は私にとって、人生を与えてくれた存在だ。何者でもなかった私が、初めて人として生きることが出来た。……あの時の事は、今でも忘れられない」
「……人として?」
「あの頃の私は、ただの奴隷だった。盲目的に指示に従うしかない、操り人形だった。……だがその糸を、彼女が断ち切ってくれたんだ」
世界が違って見えた。前の時みたいに明るくなくて、とっても暗く見えていた。多分それの原因は、この景色のせいだと思う。
あの時は確か雲の上だったけど、今ボクは雲の下に居る。だからここからなら、地上がよく見えるんだ。……何もかもが壊れてる、世界が。
「もう何年も前のことだ。どうしようもないほどに大きな、戦争が起こったんだ。これはその時の遺産だよ」
沢山の建物があった。でもそのどれもが、砕け散ってて。瓦礫で溢れかえってた。
地面には草の一本も生えていなくて。代わりに変なドロが地面を覆ってて、脂っこそうに虹色に輝いていた。多分臭いの原因は、あれなのかもしれない。
「我々は問題ないが……。普通の人間は、ここで息を吸うことすらできない。汚染を解消するにはまだ時間が必要だからね」
きっとここは、絵本で見た”町”っていう所だと思う。沢山の人が居て、沢山の建物があって。とっても広い空の下で、沢山の人生があった。
でも誰も居ない。代わりにあるのは、服を着たドクロだけ。つまり死んでいた。人の数だけ、死体があった。
「……。大丈夫だよ。もう戦争は終わってる。君が心配することは、何も無いんだ」
ボクはマスターにしがみついていた。とっても、胸の奥が苦しくなって。悲しくなっていた。
色々な想像をしてた。ここで過ごしていた人で、生き残った人は居るのかとか。どうしてこうなったのか。それで気が付けば、皆のことを考えていた。
「……。皆は? 皆は、どこに居るの?」
「”塔”に居るよ。――ほら、あれだ」
マスターは離れた場所を指さした。するとそこには、灰色の大きな塔があって。雲の上まで続いていた。
「……あれって、もしかして。前に行った……?」
「そう。あの塔の上には、私の”庭園”がある。彼らは今その下の階層を占拠して、立てこもっているんだ」
塔の隣には、とても大きな建物があった。位置から考えて、あの建物が、今までボクが居た場所なんだと思う。
すごく大きかった。それ以外に言いようがないくらい、大きかった。……きっとあの建物に、生き残った人が逃げ込んだんだ。つまりはその、なんていうか。……しぇるたー?
「……だから、外に出られなかったんだね。世界がこんなだから、皆、あそこに閉じこもるしか無かったんだ」
「そう。だが彼らにはそれがわからないんだ。外の世界に希望など……無いというのに」
マスターは、ボクを抱っこした。マスターはボクの頭を撫でながら、どこかに向かう。
「でも君には、この世界を知っておいてほしかった。この世界にも未来があることを、理解してほしかったんだ。例えどんな形でもね」
言ってることはよくわからなかった。なんというか、矛盾してるような気がした。希望が無いのに、未来はあるの?
「だからこそ、彼らを倒さないといけない。シェルターでなら構わないが、あの塔に入り込まれては迷惑だ。あの庭園を汚されるわけにはいかないんだよ」
するとマスターは、どこかの部屋に入った。そこはとってもボロボロで、かなり時間が経ってるみたいだった。
でも不思議だった。なぜだかここは、懐かしい感じがした。来たことはないはずなのに、どうしてだろう。
「ここは、前に私が住んでいた場所なんだ。古くて狭いアパートだったけど、とっても楽しかった。……本当に」
マスターは棚の上にあった物を手に取った。ホコリを掃ってみると、一枚の写真が出て来て。ボクはそれをよく見てみた。
「これは……。マスター?」
「ああ。何年も前の私だ。……懐かしい。私が写真に写ったのは、これが最初で最後だったな」
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そして、隣に誰かが居た。マスターの隣には、同じような子供が居て。白い服を着てた。……誰だろう、これは。
「この人が気になるかい?」
「うん。……大切な人?」
「ああ。これは私にとっての、最も大切な思い出の一つ。……私が初めて愛を覚えた、相手だよ」
マスターはどこか嬉しそうだった。それでもやっぱり、悲しそうでもあって。
「彼女は私にとって、人生を与えてくれた存在だ。何者でもなかった私が、初めて人として生きることが出来た。……あの時の事は、今でも忘れられない」
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