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第十四章
What is me?
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それが今見えた未来だった。ボクがお家の外に出ちゃって、襲われる未来。ボクはマスターの中で震えながら、頭痛に耐えていた。
「……本当にすまない。君にそんな、辛い思いをさせてしまって」
マスターはボクが予知で聞いた言葉と、同じことを言った。この後はマスターが、ボクを床に座らせるんだけど。ボクは抱きつくのを止めなかった。
「……行かないで。ここに居て」
ボクがそう言うと、マスターはボクを抱きしめてくれた。それでずっとそばにいてくれてたから、あの犬が現れることは無かった。
未来が変わったんだと思う。ほんの些細なことだったけど、それでボクは安心して。ようやく落ち着いてきた。
「……マスター。どうしてみんなは、酷い事をするの? どうしてみんな……。あんなことになってるの?」
マスターは答えてくれなかった。いつもなら、答えてくれるのに。きっと教えたくないんだ。何か嫌な理由があるはずだから。
「すまない。もう帰ろう。本当は、ちゃんとしたかったんだが……。まさかここまで酷いとは……」
するとマスターが、何かをボクに注射した。確かこれはラムが、気絶する直前のボクに打ったものと同じ物だと思う。
青い。アダムスとは真逆の色だ。身体の中でそれが巡るのがわかって、少し嫌だった。でもその代わりに頭痛が治まってきたから、よかったけど。
「アラネアは何を考えている……。あれほど警告しておいたのに。覚醒させるのは薬が完成してからでないと……」
「……。アラネア……」
ボクは思い出した。確かあれは、気絶してた途中の時だと思う。ボクはほんの僅かに、意識を取り戻して。アラネアの顔を見たんだ。
とても悲しそうだった。とても辛そうだった。だからボクも、苦しくなって。またすぐに眠っちゃった。
「……マスター、ボク、もう帰りたい。帰って、みんなと……」
「ああ、そうだね。帰ろう。ここは君には、まだ早かった――」
『ガチャッ』
その時、扉が開く音がした。あれは玄関の音だ。だからボクとマスターは、玄関の方を見た。
誰かが居た。とても血だらけの、人が居た。……お胸が大きい。女の人だと思う。でも、あれはもう……。
「たす……けて……」
女の人は呟いた。そして、倒れてしまった。全身から支えを失ってしまったように、バタンって。
マスターが側に寄って、首元に手を当てた。だからボクも、恐る恐る近寄ってみたんだけど。……息の音がしなかった。つまりもう、死んじゃったみたいで。
「まさかここまで来るとはな。貴様が誰に導かれたのかは知らないが、ここに来た以上は生かして返すわけにはいかない」
ボクたちは、玄関の外を見た。……そこには、とても大きな何かが居た。恐竜、それともドラゴン? よくわからないけど、人間なんて比べ物にならないくらいの、化け物。
化け物の口の中は、血でいっぱいだった。それで外を見てみると、沢山の動物たちが死んでた。……死体の山。その中には、予知でボクを襲った人間も混ざってた。
「貴様も哀れな奴隷に過ぎない。しかし貴様は、それを自覚することすら出来ない。……ならば、遠慮は無用だろう」
マスターは化け物に向かって、手を伸ばした。化け物はよくわからないように、それを見ていたんだけど。すぐに表情を変えた。
苦しそうだった。こんなに大きくて強そうな化け物が、怯えてた。……よく耳をすませてみると、どこからかが音がしてて。ボクはその音が、化け物の中から聞こえるってことに気が付いた。
「さらばだ、”星の使者”よ。……大地の一部へと還るがいい」
そうして、化け物は……。弾け飛んだ。まるでパンパンになって、割れてしまった……風船のように。
沢山の血が、飛び散った。細かい肉の破片なんかも、ベチャって壁について。大きかった化け物は、一瞬で散り散りになってしまった。
怖かった。でもその恐怖は、化け物に対してじゃなかった。なぜかはわからないけど、ボクはあの化け物のことを怖いとは感じなかったんだ。本当に怖かったのは……。ボク自身の方。
化け物の死に方には、覚えがあった。あれは確か、メアに力の使い方を教わった時。……あの人形のと、全く同じだった。
怖かった。なぜならボクは、自覚があったからだ。マスターが今やった、化け物の殺し方。……きっとボクは、同じことが出来る。
「マスター……。ボクは、ボクたちは……。一体、何なの……?」
人間じゃない。今更だけど、人間にはこんなことできない。だからメアは、ボクを必要だって言ってたんだ。
とても強い力。使い方を誤れば、誰も彼もを殺せてしまう。……今の化け物が、簡単に死んだように。
ボクはようやく理解した。ボクはもう、力を持っていたんだ。大人にも対抗できる、力を。……でも、でも。
身体が震えてた。すごく寒気がしていた。まるで自分自身が、とても気持ちの悪い化け物みたいに思えて。嫌だった。……今すぐ自分から、逃げ出したくて。
「クロ。よく聞いてくれ」
するとマスターが、ボクの両肩に手を添えた。
「例え誰が、何を言おうと。どう責めようと。クロは、人間なんだ。私達は、人間なんだ。……それだけは、忘れないでいて欲しい」
……初めてだった。マスターの言うことを、信じられなかったのは。マスターがウソをついてるなんて、思ったことが無かった。
マスターはボクを、抱きしめてくれていた。それでも、とても冷たかった。まるで、氷の人形に抱かれてるみたいで。……すごく、怖い。
「……本当にすまない。君にそんな、辛い思いをさせてしまって」
マスターはボクが予知で聞いた言葉と、同じことを言った。この後はマスターが、ボクを床に座らせるんだけど。ボクは抱きつくのを止めなかった。
「……行かないで。ここに居て」
ボクがそう言うと、マスターはボクを抱きしめてくれた。それでずっとそばにいてくれてたから、あの犬が現れることは無かった。
未来が変わったんだと思う。ほんの些細なことだったけど、それでボクは安心して。ようやく落ち着いてきた。
「……マスター。どうしてみんなは、酷い事をするの? どうしてみんな……。あんなことになってるの?」
マスターは答えてくれなかった。いつもなら、答えてくれるのに。きっと教えたくないんだ。何か嫌な理由があるはずだから。
「すまない。もう帰ろう。本当は、ちゃんとしたかったんだが……。まさかここまで酷いとは……」
するとマスターが、何かをボクに注射した。確かこれはラムが、気絶する直前のボクに打ったものと同じ物だと思う。
青い。アダムスとは真逆の色だ。身体の中でそれが巡るのがわかって、少し嫌だった。でもその代わりに頭痛が治まってきたから、よかったけど。
「アラネアは何を考えている……。あれほど警告しておいたのに。覚醒させるのは薬が完成してからでないと……」
「……。アラネア……」
ボクは思い出した。確かあれは、気絶してた途中の時だと思う。ボクはほんの僅かに、意識を取り戻して。アラネアの顔を見たんだ。
とても悲しそうだった。とても辛そうだった。だからボクも、苦しくなって。またすぐに眠っちゃった。
「……マスター、ボク、もう帰りたい。帰って、みんなと……」
「ああ、そうだね。帰ろう。ここは君には、まだ早かった――」
『ガチャッ』
その時、扉が開く音がした。あれは玄関の音だ。だからボクとマスターは、玄関の方を見た。
誰かが居た。とても血だらけの、人が居た。……お胸が大きい。女の人だと思う。でも、あれはもう……。
「たす……けて……」
女の人は呟いた。そして、倒れてしまった。全身から支えを失ってしまったように、バタンって。
マスターが側に寄って、首元に手を当てた。だからボクも、恐る恐る近寄ってみたんだけど。……息の音がしなかった。つまりもう、死んじゃったみたいで。
「まさかここまで来るとはな。貴様が誰に導かれたのかは知らないが、ここに来た以上は生かして返すわけにはいかない」
ボクたちは、玄関の外を見た。……そこには、とても大きな何かが居た。恐竜、それともドラゴン? よくわからないけど、人間なんて比べ物にならないくらいの、化け物。
化け物の口の中は、血でいっぱいだった。それで外を見てみると、沢山の動物たちが死んでた。……死体の山。その中には、予知でボクを襲った人間も混ざってた。
「貴様も哀れな奴隷に過ぎない。しかし貴様は、それを自覚することすら出来ない。……ならば、遠慮は無用だろう」
マスターは化け物に向かって、手を伸ばした。化け物はよくわからないように、それを見ていたんだけど。すぐに表情を変えた。
苦しそうだった。こんなに大きくて強そうな化け物が、怯えてた。……よく耳をすませてみると、どこからかが音がしてて。ボクはその音が、化け物の中から聞こえるってことに気が付いた。
「さらばだ、”星の使者”よ。……大地の一部へと還るがいい」
そうして、化け物は……。弾け飛んだ。まるでパンパンになって、割れてしまった……風船のように。
沢山の血が、飛び散った。細かい肉の破片なんかも、ベチャって壁について。大きかった化け物は、一瞬で散り散りになってしまった。
怖かった。でもその恐怖は、化け物に対してじゃなかった。なぜかはわからないけど、ボクはあの化け物のことを怖いとは感じなかったんだ。本当に怖かったのは……。ボク自身の方。
化け物の死に方には、覚えがあった。あれは確か、メアに力の使い方を教わった時。……あの人形のと、全く同じだった。
怖かった。なぜならボクは、自覚があったからだ。マスターが今やった、化け物の殺し方。……きっとボクは、同じことが出来る。
「マスター……。ボクは、ボクたちは……。一体、何なの……?」
人間じゃない。今更だけど、人間にはこんなことできない。だからメアは、ボクを必要だって言ってたんだ。
とても強い力。使い方を誤れば、誰も彼もを殺せてしまう。……今の化け物が、簡単に死んだように。
ボクはようやく理解した。ボクはもう、力を持っていたんだ。大人にも対抗できる、力を。……でも、でも。
身体が震えてた。すごく寒気がしていた。まるで自分自身が、とても気持ちの悪い化け物みたいに思えて。嫌だった。……今すぐ自分から、逃げ出したくて。
「クロ。よく聞いてくれ」
するとマスターが、ボクの両肩に手を添えた。
「例え誰が、何を言おうと。どう責めようと。クロは、人間なんだ。私達は、人間なんだ。……それだけは、忘れないでいて欲しい」
……初めてだった。マスターの言うことを、信じられなかったのは。マスターがウソをついてるなんて、思ったことが無かった。
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